■【アカデメイア連載 びゅうヴェルジェ安中榛名の古民家移築再生 

■【アカデメイア連載 びゅうヴェルジェ安中榛名の古民家移築再生 第13回】

内観も徐々に仕上がりのイメージに近づいてきます。
大きな吹抜けを渡る二階の渡り廊下は、この建物の魅力のひとつです。自分の家の空間を、上から俯瞰できるというのは、空間を客観的に見る視点を持つということでもあります。実際、渡り廊下に立つと、一階のガラス戸越しに、見える庭の暖かな日差しが、またひと味違って見えるものです。

私が設計で常に心がけているポイントの大きなものとして、どんな空間にも、豊かさを感じることができる、ということがあります。
もちろんローコストの設計の場合でも、そのことが、豊かでなくてよいということには絶対になりません。むしろ、ローコストほど、研ぎすまされた豊かさ、というものが出て来る事があります。

設計というものは、設計者が考えたことしか出て来ません。希に、予想外の効果というものもなうはありませんが、往々にして、前向きの意識のときは、前向きの空間が、後ろ向きの気分の時は、設計される建物もそのようなものになってしまいます。ですから、常に設計者として、その前にひとりの人間としての豊かさを持ちたいものだと思っています。

この建物では、住居のある主屋と外玄関と車庫のある長屋門棟があり、それを、屋根付きの回廊で繋いでいます。回廊は、単に、雨の日のためにあるのではありません。そこを歩く時は、自分の建物、敷地を意識し、奥行きを感じ、自分の館の豊かさを毎回感じられるように設計してあります。

そして、回廊が面した中庭では、移築古民家から譲ってもらった、大正時代の銅製のかまどを復活させました。現在でも十分に使えるものです。自宅でプチアウトドアライフを楽しむ事ができます。