『あるとりあ、衛宮家初代女王を宣言す』


 そもそものきっかけは遠坂の倫敦留学準備の話題である。
 英国といえば、セイバーの出身地。
 英国といえば、女王陛下。
 そう、現在のブリテンは、国王ではなく、女王のものなのだ。


 それを知った、セイバーの愕然とした表情は。そう。
 なんてゆーか。左手で殴り書きしたような?すこぶるショックを受けていた。


 そりゃそうだ。
 時代が時代とはいえ、女として生きることを許されず、男として、王として、戦い、戦い、喰っちゃ寝て、戦って戦った、アルトリア。
 男として、王として。アルトリアであることを捨て、アーサー王として駆け抜けてきたのだ。
 円卓の騎士にはランスロットという、ひどく女好きな騎士がいるのにもかかわらず、誰からも男として疑われることのなかった一生涯。
 そりゃー女であることは隠してきたけど、隠しとおしてきたけどさー。
 でもそれって、女として、どーなのよ? どーよ自分?


 セイバーの受けたショックは、そう、
 カルチャーショックではなく、なんていうか、レゾンテートルの崩壊っつーか。


 しかも現在の英国王室。なにげにスキャンダルとかに塗れてるし。


「もう……アーサー王の時代ではないのですね」


 わなわな震えるか細い呟き。自嘲なのか。
 いや。
 セイバーはすっくと立ち上がり、拳を握りしめ、自分自身に言い聞かせるように、断言した。


「これからは――アルトリア女王としての、時代の幕開けです!」


 そう、宣言した。


 国土もない。国民もいない。国旗もない。国歌もない。
 だが国家はここにあり。国賓はここにあり。
 国力は己が自身。国庫は此処に存り。
 此処。――即ち、衛宮家に。


「衝撃を受けて立ち直るのにお腹が空きました。シロウ、食事の用意を」
「えっと。…つまり、今までと何が変わるんだ?」
「何も変わらないんじゃない?」
 あ。遠坂が匙を投げやがった。


 かくして衛宮家は、今日も平和なのであった。



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【仮想冷水機*1】さんところのびびえすに書き込んだモノの、再録だったり。
つか、自分、ダイアリーの使い方がすこぶる下手っぽい。