ラストサマー2

前作(→感想)のラストでの出来事は夢だった、というフォローが冒頭に挿入されているのにまず笑った。別にそんなところで辻褄合わせなくてもいいのに。今回のストーリーは、前作の生き残りである主人公が仲間とクイズで当てた孤島旅行に出かけた先で死んだはずの鉤爪男が出没!またも死体の山が!という、前作よりさらに型にはまったもので、その分安定感が出てていいかも。一応意外なオチも用意してあるし、人が殺される際の雰囲気の盛り上げ方もそこそこ上手くいってると思う。無理矢理なお色気シーン(日焼けマシーンに入るため水着姿になった主人公、そのまま閉じ込められる!助けて!ってやつとか)も良いな。全体的に、前作より安っぽい悪趣味さが増していて好ましい。
そんな悪趣味さを裏切る意味でダメなのは、「誰が生き残るか」の問題。明らかに必然性のない生き残り方をしている人物がいるのは興醒めだ。なんか妙にその人物のアクションシーン多かったし、キャストとそのファンへの配慮なんだろうか。知らんけど。とにかく、この話で生き残るべきはあの“二人”だけなのだから、そのへんはちゃんとしてほしかった。
あ、さすがにパート3は作られていないのですね。そりゃそうだろうな。

狂っちゃいないぜ

何この邦題。ボニーとクライドみたいな話かと思った。実際は、いついかなる時も冷静な腕利き航空管制官(ってちっともイメージ沸きませんが)の主人公、冷静な仕事っぷりでもバスケットの上手さでも女房のセクシーさでも自分を上回っている新入りが入ってきてプライド大崩壊。夫婦関係も悪化し、たちまちノイローゼに!みたいな話。主人公が追い詰められる様を楽しく眺める性格の悪いコメディかな、と思ってたらラスト物凄くロマンチックなことになってて腰砕け。良くも悪くも先が読めないという点で、なかなか引き付けられるストーリー展開ではあるけど、これじゃビリー・ボブ・ソーントン演じる新入り管制官のキャラの使い方が勿体無さすぎる。いくらでも利用価値ありそうなのに、キャラ設定が終始ふらふらしてて。
そのビリー・ボブは目が合っただけで女性を妊娠させそうな嫌らしい目付きが最高。この目付きがもっと発揮できる役柄だったなら……と思ってしまった。主演のジョン・キューザックのどうでもよさが引き立つストーリーだけに、なおさら。

小林泰三『AΩ 超空想科学怪奇譚』

これはもう素ん晴らしく面白いのでこの作家のファンは絶対に読み逃してはいけないよ。あらすじはこうだ。主人公諸星隼人(この名前……)は敵対関係にある二つの種族の宇宙人の争いに巻き込まれ、命を失うが、片方の宇宙人が隼人の体をのっとって復活させた。その宇宙人は敵を発見すると隼人の体を巨大化させ戦闘形態にして、「ヘアッ」だの「ジュワッ」だの叫びながらぶっ倒す!こうして隼人とその宇宙人“ガ”の戦いは始まったのだ……。
えー、もうおわかりでしょうが某特撮シリーズのパロディです。某特撮キャラの行動や能力にハードSFっぽい理屈付けをしてみるという試み、というのはたぶん建前に過ぎなくて、理屈付けがやたら力入ってる部分と一切なされてない部分との差が激しく、このへんに作者の邪悪なテキトーさが窺えて楽しい。勿論、例によって何とも言えず気持ち悪ーい違和感漂う会話文や戦闘シーンでここぞとばかりに連発される汁気の多いグロ描写など、ファンが小林泰三に求める要素は全て入ってて満腹になれることうけ合い。一応、「滑稽さが感動に転化する泣けるパロディ」として読むことも可能だし。そういう読み方をしようと思えばだが。
一つ残念なのはこの作品、詰め込まれているネタの数が膨大すぎてとても全部把握できないってこと。ラスト数ページ前で明かされる“ガ”の本名にしたってどっひゃー!ではあるもののその名前である意味がよくわからなくって口惜しい。最後の一文に何か特別な意味があるのかどうかもわからないし……。いまいち消化不良なのだった。ああ、しかし諸星隼人君32才童話作家の卵(ダメ人間)は萌えキャラだなあ、とんでもなく。