ブレックファスト・クラブ

アメリカ学園物の古典ということで、見てみました。それぞれに何かやらかして懲罰を食らったガリ勉、体育会系、不良、お嬢様、ゴスっ娘の五人が土曜登校で図書室に集められる。始めは全く打ち解けなかった彼等も次第に心を開き、お互いの悩みを打ち明けあう、というお話。まるで世の中にはひどい親しかいないかのようだったり、立場は違っても同世代なら必ず理解し合える、みたいな部分が趣味じゃなく、かなり鼻につくものの、それでも最後まで見るとなかなかに感じ入ってしまった。これは相当出来がいいんじゃないだろうか。嫌な先生側をも一応フォローするような描写があったり、最後まで“結論”は出なかったりするあたり好バランスだと思う。まあ、最後にはお約束でカップルが成立してしまうのはどうかと思うのだけど。
出演した時点では若かったキャストの面々の今の様子を調べるとなかなか興味深かった。特にガリ勉君役のアンソニー・マイケル・ホールって人がこんな凶悪な面相になってたのはちょっとショック。でも今のほうが魅力的かな。

辻村深月『冷たい校舎の時は止まる(上)』

第31回メフィスト賞受賞作。この薄さで三分冊三ヶ月連続刊行ってのはどういうことなのか、もう何も言えん。でも内容のほうはこれが意外に悪くない!びっくり。ある雪の日学校に不思議な力で閉じ込められた仲良し高校生8人組。彼等はクラス内で起きた自殺事件の被害者が誰だったか思い出せなくなっていることに気づく。これってもしかしてその死んだ子の頭の中の世界?……というお話。謎に満ちた舞台設定のあくまで自然な提示の仕方といい、次第にゆっくりとキャラが立ってくるようなキャラ描写といい、読みやすい文章にリーダビリティの高い展開と、少なくとも上巻を読んだ限りではなかなかに小説が巧い。西澤保彦から下品さを取り除いて遅生まれにしたみたいな作風とでも言おうか。若さが無闇に作品に出てしまってるようなのにはもううんざりなので、こういう落ち着いた作風の若い作家がメフィスト賞から出るのは大歓迎ですよ僕は。
謎の置き方が面白い作品なのだけど、この謎だけじゃ弱いかなあ……と思ってたらやはりラストで新展開が。中巻以降はどうなるのかなあ。実に楽しみ。仲良しに見えても内実はドロドロ、ってな展開になることは必至なので下司な興味も湧きまくりだ。それにしても、著者近影にはもっとかわいく写ってる写真を使ってあげればいいのに。若い美人な娘さん作家の線で販売戦略を練ったんじゃないのか。