森奈津子『西城秀樹のおかげです』(文庫版)

文庫*1出た!やった!と言うわけでみなさん速やかに購入されるといいと思います。レズビアンSFという言葉に心惹かれる方は是非。それにしても表紙デザイン案外大人しいのな。もっとヘンでいいのに。
内容についてはまあ前に書いたの*2を御覧下さいということで、新たに収録された「タタミ・マットとゲイシャ・ガール」のみこちらに感想を。
PS2ソフト『蚊』のノベライズ本に発表された短編で、人間の罠に掛かって捕らえられ蚊に姿を変えられた吸血鬼最後の一人(♀)が、黄金の国ジパングで美しいゲイシャ・ガールの血を吸おうと奮闘する話。ちゃんと百合ネタも仕込んであるわりに今まで読んだ同趣向の作の中で一番まともにノベライズしてるのが偉い*3。でも勘違いジャポニズムギャグはあまり笑えないし、オチは説明しすぎの感もあってこの本の中じゃ弱いほうかな。
▼罠に掛かった人リンク集
 ・元さん*4

TUBE

元政府工作員だけどその政府に妻や仲間を殺されテロリストと化した男が地下鉄を占拠。乗客を人質に前総理の死を要求する。男に恋人を殺された恨みを持つ刑事は地下鉄に乱入して事態に収拾をつけようとするが、そこには刑事にホの字の女スリもいたりして……というお話。
これはダッサいですね。深刻ぶるのが下手と言うか。せっかく可愛いペ・ドゥナを泣かせのヒロインに据えても、この脚本じゃ泣くに泣けないですよ。そもそも主人公の刑事が終盤まで役立たずに過ぎるので、ラストでいきなりあんなことされても全然英雄的に見えてこないというのがマズいところ。代わりに地下鉄管制室職員の方々がそれなりに頑張ってはいるのだけど、こちらもツッコミ所が無いとは言えず……。やはりもうちょっと垢抜けたのが観たいな。
ペ・ドゥナは確かに可愛い。でももっとその可愛さが発揮できる役柄があるだろう。刑事役のキム・ソックンは、まあこの人のせいじゃないからしょうがないな、という感じ。個人的に気になったのは管制室室長役のソン・ビョンホとスリのリーダー役のクォン・オジュンあたり。前者はかっこいいし、後者は愛嬌がある。

バレンタイン(背景色でのネタバレ含)

小学校以来の仲良し女友達グループのメンバーに次々に不吉な贈り物が届けられ、殺されていく。どうやら犯人は小学6年のときにみんなで虐めたヲタク男子らしいけど、もしかしたら彼は身の回りに紛れ込んでるかも……というお話。
“『スクリーム』以後”な感じのスラッシャー映画。スラッシャーの基本をしっかり押さえてるのでそういうの大好きな僕としては大満足。でも基本だけで発展要素は皆無なのでスラッシャー映画好き以外には薦められないけれど。学園モノのその後みたいな設定は結構巧く機能していて、仲間の中にも元“looser”がいるあたり面白い。あっさりオチない展開もいい感じ。
殺しのターゲットとなる女優等は概ね魅力的で、マーリー・シェルトンはアナ・ファリス似の顔が可愛い。デニス・リチャーズは例によって無意味に薄着になるあたりよくわかってる!(この人の殺され方が一番残虐なのも大正解)シェルトンの恋人を演じるデヴィッド・ボレアナズっていう俳優がちょっとゴツすぎるけどなかなかの好男子でいいな、と思ってたらこの人『バッフィ』のエンジェル役の人だったんですね。納得。でも、これってもしかして本国の人にはキャスティング犯人がわかる映画ってことか。

小林めぐみ『食卓にビールを2』

前巻(→感想)に引き続きヘンテコ日常SFな連作短編集。今回は短編一作・中編二作を収録。
2巻になっても全く何の変化もなくただ面白いので正直前巻の感想に付け加えることって特にないのだけど、前巻に比べるとSFな出来事が引っ切り無しに起こりすぎな印象があって、そのせいでいくらか“変わらなすぎる日常”っぽい感じがダウンしてるかなあ、とは思った。特に巻末の中編はラプンツェル登場以降なかなか普通の日常に戻ってくれなくてちょっと不満。
集中のベストは「知恵袋篇」。これこそSF要素をなんとなくやり過ごしちゃってて好きだ。