Googleの脳みそ

グーグルとついているが、いわゆるグーグル本(グーグルという企業の説明や、検索エンジンの解説)では全くない。グーグルの登場回数もわずかである。要は、日本の閉塞状況を打ち破るために、どのように行動すべきかという著者の処方箋を述べたもので、グーグルはその象徴として名前を出されているだけ。要は規制を緩和し、グーグルのように法的リスクを恐れずに行動せよ、といいたいようだ。
日経の中堅記者が豊富な取材を基に書いたものなので、勉強になるところはもちろんあるが、論旨はどこかで聞いたようなものばかり。「御説ごもっとも」で終わってしまう。なぜなんだろう。著者が大手新聞社という既得権益に守られていて、評論家風にあおっているだけだからか。
Googleの脳みそ―変革者たちの思考回路

こうして原発被害は広がった

われわれ日本人は概して、チェルノブイリ原発について、詳しいことは知らない。それにはもちろん、情報を隠ぺいしたソ連・ロシア政府の責任が大きいが、こうした詳しい本が出ている以上、読まないことも罪だろう。本書は、1993年に出た「検証 チェルノブイリ刻一刻」を、福島第一事故を受け、解説を加えて再刊したもの。チェルノブイリの事故の敬意や、被害の拡大について、固有名詞を挙げて迫力ある記述をしている。特に、現場の作業員・消防士などの文字通り命をかけた貢献には、涙を禁じえない。被害者○人と、数字で表すだけでは抜け落ちてしまう、一人ひとりの人生の重みがズシリと来る。亡くなった人々は本当にかわいそうだ。事故そのものは、多数の幹部の怠慢や、いい加減さが組み合わさって起きている。幹部の何人かは告訴され、有罪判決を受けた。

チェルノブイリ事故が発生したとき、キエフにあるグロジンスキーの研究室では、放射能レベルが急激に上昇したのをとらえた。市民に警告して予防措置をとるよう呼びかけることも許されず、せっかく知った事実も秘密扱いするよう命じられ、計測機器は没収された(p.312)


さて、日本政府は、ソ連政府より賢く行動しただろうか。パニックをおそれて情報を隠ぺいするという行動は、共産圏でも資本主義圏でも共通なのだと、暗澹たる気持ちになる。
なお解説は、日本共産党衆議院議員で、京大原子力工学科卒の吉井英勝氏。文春と共産党という組み合わせもおもしろいが、まさに適任だった。
こうして原発被害は広がった 先行のチェルノブイリ