Domaine Mongeard Mugneret

出迎えてくれたのは当主ヴァンサン・モンジャール氏。「せめてもう少し早ければ、黄葉で光り輝く黄金の丘、まさに "Cote d'Or"を見ることができたのにね」と、残念そうだった。既にどこの畑の葉も全て落ちていたからだ。

2009年はとても良く出来た年だったよと満足そうに語る口調は、自信と喜びに満ちているようにも見えた。

2009年の収穫は9月9日にスタートした。温暖な気候が続いたおかげで、例年に比べると腐敗果や不良果が少なく、健全な葡萄が沢山取れたそうだ。対して2010年はアペラシオンによっては50%もダウンしてしまったところもあったそうで、それを「自然の成せる業だからね」と、素直に受け入れていた。

このドメーヌでは熟成において90%はステンレスタンクを使用しない。アリゴテとACブルゴーニュシャルドネのみ使用する。ほとんどの場合、彼らは1,2年使用したオーク樽を使う。これは赤のリーズナブルなキュヴェであるパストゥグランでもそうだ。ステンレスタンクは温度管理が細かくできるで、醗酵の過程でのみ使用する。樽も樹の段階から自らが厳選したもののみで樽を造らせる念の入れよう。ヴァンサンのこだわりが随所に垣間見れる。

綺麗に整理されたテイスティングルームで試飲を始めた。


1.Bourgogne Hautes Côtes de Nuits Blanc Prieure 2009
平均樹齢35年。所有面積30.82a。除梗100%。
ハニー、ナッツ、西洋梨、白桃、パイナップルなどの香りが印象的。オーク樽のニュアンスが見事にアクセントを加えている。酸は穏やかでやわらかく、熟度も程よくバランスが取れている。とても良く出来たワインで、フレッシュでみずみずしさが際立つ一本。通常H-C-Nは酸が強いワインだが、この年はとても良いバランスが取れている。



2.Marsannay Blanc "Clos du Roy" 2009
平均樹齢40年。除梗100%。
所有面積41.18アール (Haの100分の1/以下 a)
600Lの大樽で造られる。
前出のHauts Côtes de Nuitsよりも酸の度合いがはっきりとしたワイン。桃、柑橘系、香辛料、りんごなどの香り。ミネラリーでしっかりとした果実味も魅力のひとつ。



3.Bourgogne Pinot Noir 2009
平均樹齢28-55年。所有面積2.52ha。除梗100%。
ステンレスタンクでアッサンブラージュしているものを試飲。現時点ではややガスが残る程度。生産量は140HL。Flagey Echezeaux村とVougeot村の区画からの葡萄が使われる。黒いベリー系の熟した香りに、スパイスの要素が溶け込んでいる。とてもきっちりとしたバランスの良い造りで、角のないタンニンと果実味のバランスはとても良い。飲み飽きしないベストヴァリューACブルゴーニュ



4.Bourgogne Hautes Côtes de Nuits Rouge 2009
平均樹齢25年。所有面積2.48ha。除梗100%。
とても果実味豊かでやわらかく、酸とのバランスも良い。チャーミングで可愛らしい味わい。通常150hl生産が可能だが、、ヴァンサンは100hlをネゴスに販売したそうだ。残りの50hlのみがドメーヌとしてリリースされる。それはこの年の出来が良かった為に他のドメーヌが葡萄を売ってくれず、ネゴスが困っていたのを見かねたからだという。自社で販売した方が利益にはなるが、一時の自社の利益だけを追求しても、ブルゴーニュは発展しないと考えているのだ。



5.Bourgogne Hautes Côtes de Nuits Les Dames HUGUETTES 2009
平均樹齢35年。所有面積2.36ha。132hl生産。
新しくリリースされるキュヴェ。畑は2008年に購入したもの。 Les Dames HUGUETTESはリューディ名。Hautes Côtesで唯一リューディ名がある。黒いベースのラベルの上部に真紅の大きな一輪の薔薇が印象的なラベルで、PARISで先行販売したら飛ぶように売れてしまったそうだ。前出のHautes Côtes de Nuitsよりやわらかく、わかりやすい味わいが特長。昔、NSGだったが格下げされてHautes Côtesになりリューディ名だけが残ったそうだ。ある程度の数量を造ることが出来るので、これまで造っていた他のキュヴェとはコンセプトを変えたそうだ。従来のキュヴェはこれまで通り、個人消費向けとしているが、このキュヴェはパーティなどの様々な人が気軽に飲めるように工夫されている。

6.Savigny Les Beaune 2009
平均樹齢36年。所有面積58.88a。
新樽比10%。除梗100%。
樽からのサンプル。香ばしく焼いたパンを連想させるイースト香など新樽を10%加えるだけでも木の香りの要素が強く感じられる。これまで試飲したワインよりも濃密さと奥行きが1ランク上がる。

2009年の熟度の高い果実味とタンニンは1999年産と、とてもよく似ている。



7.Fixin 2009
平均樹齢40年。所有面積1.58ha。
新樽比10%。除梗100%。
前出のSavigny Les Beauneよりもオークのニュアンスが出ており、甘みも若干抑え目な印象。少し乾いたタンニンはまだ液体には溶け込んでいないが、高いポテンシャルを感じさせる造り。



8.Savigny Les Beaune 1er Cru Les Narbantons 2009
平均樹齢53年。所有面積1.37ha。新樽比30-40%。
Fixinよりもやわらかい甘みを備えている。タンニンの角もなく、エキス分に十分に溶け込んできている。格が急に何段階も引き上げられたような印象を強く受ける。一部は瓶詰めを始めているそうだ。新樽比率を高めているので、果実味と樽のバランスを見極めながら行うそうだ。



9.Vosne Romanée 2009
平均樹齢35-72年。所有面積1.37ha。
新樽比30-40%。除梗100%。
質感のキメの細かさはこれまでのものより群を抜く。香り立ちが非常に華やかで、ぎっしりと詰まった色とりどりのブーケを嗅いでいるような、フローラルな香りに包まれている。タンニンの角もなく、なめらかで純度の高いエキス分は一切の青みも感じさせないほどに熟れている。


10.Nuits Saints Georges Les Plateaux 2009
平均樹齢45年。所有面積69.62a。新樽比30-40%。
前出のVosne Romanéeよりも、さらに濃密で、しなやかな印象。タンニンもとてもやわらかく溶け込んでおり、酸の度合いもしっかりとしている。果実味の凝縮感が高く、粘性も強い。言い方を変えればニューワールドを思わせるような凝縮度を感じてしまうほど熟度が高い。エレガントというよりはパワフルさが前に出ている。いつもは冷たい風が吹いている畑なので酸のしっかりとしたワインが出来ているが、2009年に関してはそれが当てはまらないそうだ。



11.Chambolle Musigny 2009
平均樹齢35年。所有面積30.98a。
新樽比25%。除梗100%。
新樽はChambolle Musignyの個性を活かす為、新樽の比率を25%に少し減らしている。残りは1年樽を使用する。とてもリッチで高い凝縮度を感じる。熟度の高い黒果実の香りと、バラ、スミレの香りに、鰊や海苔の佃煮のような磯の香りがほのかに漂う。現時点ではやや焦点は定まっていないが、アペラシオンの個性であるエレガントさは十分に楽しむことが出来る。



12.Gevrey Chambertin 2009
平均樹齢40年。所有面積38.3a。
新樽比25%。除梗100%。
果実味、タンニン、酸のバランスが良く、現段階でも飲み心地が良く完成されてきている。香りの華やかさは特筆すべきもので黒果実、ミネラル、スパイス、赤い花などの豊かな香りが複雑に絡み合っている。シルキーで継ぎ目もなくしなやかな飲み口は多くのファンを増やすことだろう。



13.Beaune 1er Cru Les Avaux 2009
平均樹齢40年。所有面積45.52a。
新樽比30-40%。除梗100%。
現段階では香りの要素はやや閉じているが、バラの花びらのような香りが感じられる。大らかな果実味がとても印象的。オスピス・ド・ボーヌの隣にある畑。



14.Pernand Vergeless 1er Les Vergeless 2009
平均樹齢40年。所有面積75.02a。
新樽比40%。除梗100%。
アタックからとても濃密で熟度の高い果実味とゴージャスな香りが一瞬で口腔を支配する。タンニンの角はないが、若干乾いている。酸味がしっかりとしているので白身魚、特に川魚などと併せるとよいマリアージュとなるだろうとヴァンサン氏は語る。



15.Vosne Romanée 1er Cru Les Orveaux 2009
平均樹齢25-52年。所有面積1.08ha。
新樽比30-40%。除梗100%。
熟した黒果実の芳しい香りの中に、ヨード、磯、土、ヴァニラ、ショコラなどの香りが入り混じっている。より濃密で熟した果実の力強さを感じる。Vosne Romanéeらしい繊細さと複雑味が際立つ。サンプルは新樽から取ってきたものだが、新樽の強い個性に負けないだけの十分な果実味の豊かさがある。タンニンも溶け込んでいて、アメリカンオークを思わせるヴァニリンな甘い香りがほのかに漂う。



16.Vougeot 1er Cru Les Cras 2009
平均樹齢35年。所有面積55.82a。
新樽比30-40%。除梗100%。
甘くよく熟していて果実味の凝縮度がとても高い。Les Amoureusesにとても良く似た、石と砂の多い土壌で女性的なエレガンスさが前に出た味わいが特長。そのエレガンスにこの年特有のパワフルさが加わり、よりスケール感がある造りになっている。通常年は10樽ほど生産が可能。2009年も例年通りの収量だったが、2010年は半減してしまったそうだ。



17.Vosne Romanée 1er Cru Petit Monts 2009
平均樹齢50年。所有面積30.21a。
新樽比30-40%。除梗100%
タンニンもしっかりとあるが、少しも青みを感じさせない熟度のしっかりとした果実味と、バランスの取れた適度な酸は、とても品がある。傑出したしなやかさとVosne Romanéeらしい複雑味に富んだ味わい。



18.Vosne Romanée 1er Cru Les Suchots 2009
平均樹齢50年。所有面積22.44a。
新樽比30-40%。除梗100%
現時点ではやや透明度が弱いが、これからの本格的な冬の間にゆっくりと透き通ってくるそうだ。生産量は多くはないが、ヴァンサン・モンジャールお気に入りのキュヴェ。濃さ、酸、甘み、タンニン、そのどれもが品よく、優雅にワインを形成している。よく熟したタンニンが液体にきれいに溶け込んでいる。



19.Nuits Saints Georges 1er Cru Les Boudots 2009
平均樹齢35年。所有面積75.02a。
新樽比30-40%。除梗100%
甘みがより強い分、繊細さよりもパワフルさが際立っている。Vosne Romanéeよりも収穫を遅くするそうで、そのおかげもあってタンニンが良く熟すようだ。ヴァンサン氏曰く、正式にはLes Boudotsではなく、Aux Boudosが正しい呼び名だそうだ。



20.Echezeaux 2009
平均樹齢25-60年。所有面積1.76ha。
新樽比50-60%。除梗100%。
熟度、凝縮感、タンニン、ミネラル感がとてもしっかりとしており、ストラクチャーのしっかりとしたスタイル。酸も十分にあるが、バランスが良く適度に表現されており、シルキーでスケール感の大きいスタイル。フィネスと美しさに溢れている。



21.Clos de Vougeot 2009
平均樹齢40-68年。所有面積62.59a。
新樽比100%。除梗100%。
Echezeauxよりオークのニュアンスが強い印象。まだタンニンは溶け込んでいないが、要素が多く香り立ちが素晴らしい。



22.Echezeaux Vieille Vigne 2009
平均樹齢80年。所有面積73.55a。
新樽比90%。除梗75%。
よく熟しており、甘くジューシーな果実味。タンニンも質が高く、果実味もキメが細かい。甘みとしなやかさ、酸とのバランスは絶妙。既に抜きん出たオーラを放っている。将来がとても楽しみなワイン。



23.Grands Echezeaux 2009
平均樹齢80年。所有面積73.55a。
新樽比90%。除梗75%。
現時点では還元香が支配的。タンニンは良く熟していて、甘みも十分。酸もしっかりとあるが、少しもバランスを欠いていない。1990年の酸の度合いに非常に似通っている。将来的に大化けするであろう傑作ワイン。



24.Richebourg 2009
平均樹齢40-68年。所有面積1.3248ha。
新樽比100%。除梗75%。
果実味、熟度、旨み、ミネラル感、酸、どれもとても高いレベルに到達しているが、素晴らしいバランスの上に成り立っているところはさすがと言うべき。香りも華やかで、品のあるゴージャスさが抜きん出ている。現時点でもすでに飲み心地が良く、ひたすらシルキーでエレガント。