サブゼミC班発表/三回目

サブゼミC班、先行形態論の三回目の発表です。
今回は、先行形態論を説明するうえで重要な概念「セヴェラルネス(いくつか性)」、そしてそれに関連するキーワードを、
『セヴェラルネス+事物連鎖と都市・建築・人間』(中谷礼仁 鹿島出版会 2011)から取り上げて説明しました。

お忙しい中来てくださった古見先生、議論に参加していただきありがとうございました。
開始時間が遅くなってしまい、先生方、研究室の皆さんにご迷惑をおかけしました。申し訳ありません!

発表の内容ですが、前回まで紹介してきた先行形態論は、端的に言えば「結果としてかたちが残る」という話でしたが、
今回はかたちが残っていく過程に着目しています。


とりあげたキーワードは「かたちとコンテクスト」「資材性」「ツリー∈セミラチス」「セヴェラルネス」



発表の順番と違いますが、まず「セヴェラルネス」から。
セヴェラルネス(several-ness/いくつか性)とは、事物における「かたち的可変性の有限性(性能)」とその組み合わせの多様性を説明する概念で、
初期機能が消えた事物にに新しいコンテクストを付与しようとするとき、それに耐えられるかどうかを転用者が判断する基準になります。

キーワード「かたちとコンテクスト」はこの前提のような形で紹介したのですが、
『形の合成に関するノート』(クリストファー・アレグザンダー 1964)からその定義を説明すると、
都市をも含め、全ての事物は、そのかたちとその意味を決定するコンテクストとで構成されます。
そしてセヴェラルネスという概念が発生するためには、事物のコンテクストが一度消えなければいけません。
初期機能が消えてかたちだけが残った段階ではじめて、別の用途として使えるかどうか判断できるからです。

今のふたつのキーワードの説明が今回の発表の全体に関連してきます。



「資材性」では、アルルの円形闘技場を例に挙げました。
この闘技場は後に住宅として使われるようになるのですが、それは闘技場の形が住宅という初期設定と異なる要求に耐えられたから、
闘技場の形態に「資材性」(=転用可能性)があったからです。
そしてそれは資材側から提示されるものではなく、転用する人によって判断され、与えられるものです。
この時重要なのは、資材性はひとつではなく、また無限でもなく、「いくつか」であることです。

中谷先生は事物に資材性があるかどうかを判断する、この「都市の人間」の重要性を、
『都市の建築』(アルド・ロッシ 1966)の都市論と比較しつつ論じています。

「都市の人間」という言葉が出てきましたが、「セヴェラルネス」で説明した「転用者」と同義語です。
ここでは『野生の思考』(クロード・レヴィ=ストロース 1962)にでてくるブリコルール(器用人)の内容と絡めつつ説明しました。



最後に「ツリー∈セミラチス」
『都市はツリーではない/A city is not a tree』(クリストファー・アレグザンダー 1965)でいうツリーとセミラチスは、二項対立で語られてきました。
…が、しかし

そこに時間軸を加えれば両者は連続的な関係になる
つまりセミラチスは一義的状態としてのツリー構造が重合したものである

『都市はツリーではない/A city is not a tree』
          ↓
『都市はひとつのツリーではない/A city is not A tree』


今まで相反するものと思われてきたものが実は連続した図式であったわけです。




といった感じで説明しましたが、理解してもらえたでしょうか?
「要はかたち」→「コンテクストの消滅からの転用」だったわけです。
個人的にはまだまだ理解が足りない部分もありましたが、またひとつ、都市の見方を知ることができて勉強になりました。
最終章に先行形態論も載っているので、『セヴェラルネス』、是非読んでみてください!