正解は、CMのあと
期待していなかったので、意外に面白かった。
いろいろと登場人物の背景を書き込むことできたと思うが、あえてそれをやらず、お話の展開のみ 絞って90分にまとめたのは正解。 反面、テロリストの動機や目的まですっ飛んでしまったのはご愛嬌か。
監督のピート・トラヴィスは、テレビドラマの演出出身。
あと羅生門になぞらえられる前半の多重視点による巻き戻し演出に関しては、タイトルのとおりで、 特段有効な表現とは思えず、あの程度の人数と展開なら普通に編集したほうがいいんじゃないかと思う。そうしてまで表現したいものは最後まで出てこない。
多少のご都合主義(アメリカのシークレットサービスがグダグダとか、テロリストそこで避けるなとか。)はあっても、 しっかりとした構成の脚本と、群像劇的な描写が綺麗に展開するので、あえて奇をてらった表現を用いず、復帰間もなく自信を喪失しているシークレットサービスのバーンズ(デニス・クエイド)、または 私生活に問題を抱え、逃げるようにスペインにきている旅行者ハワード(フォレスト・ウィティカー)の再生の物語として作ってもよかったのではないか。 そのほうが、正統派アクションとして評価を得られたかも。
あと、ボーンシリーズのファンはもれなく観ることを薦めします。
映画後半、テロリストサイドに移って事件の全容が明かされるようになると、ボーン印のカーチェイス(都会の道路を一般車両が走り抜けながら、ガンガンやる) とカメラワーク(素早い横方向のパーンの直後ズームアップ)が炸裂。ロシアのタクシー並みにタフなオペルを操り、バーンズが 犯人を追跡。最後トレーラが横っ腹に激突するも、ほとんど無傷なのはボーン並みの強靭さ。(いったいいつからアメリカのエージェントは全身義体化したのか。)
また、元ブラック・ブライアーの工作員(笑)のハビエル(エドガー・ラミレス!見た目がボーンの時と同じ)が大活躍。「ボーン・アルティメイタム」でパズの活躍が少なかった とお嘆きの貴兄は、欲求不満の解消となること請け合い。バッタ、バッタとアメリカのシークレットサービスを始末していく姿が拝めます。
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まるで違和感なし
いつものことながら、簡潔で見事なエントリー。言うべきことはほとんど揃っているので、こちらをご覧ください。
それだけでは能が無いので、少し気になった点を幾つか。
おとぎ話(ファンタジー)を作り出す上での、外郭としての「世界」はどうあるべきか。社会制度・風俗ははっきりとイギリス風(階級社会やロンドンの町並み、タブロイド紙、パブ等)ながら、皆がドルと通貨として使い、役者もアメリカ英語を話す。(一部例外あり)
あえて匿名性を持たすことで、ファンタジーの世界観を強化してみせることが演出家の意図ではあろうが、そのために「物語」という嘘を下支えするものがかえって希薄となり、強度が落ちてしまったのではないだろうか。
表現としては、ジョージ・ミラーの「ベイブ/都会へ行く」と同じ。家出したペネロピが泊まるホテルの窓の外に広がる夜景は、西洋の大都市のコラージュとなっている。でもベイブの場合は、本当の意味でブタ目線なので成り立つ部分があるわけで。
お話としては、自立すべき年代の若者の葛藤と成長を寓話というよりストレートに描いているので、より現実的な世界に立脚したものにすべきではなかったのか。 できれば現代のイギリス(ロンドンとその郊外とか)ないしは、アメリカ東部を舞台として押し通すことができれば、映画特有の魔法のような瞬間を得ることができたかもしれない。
衣装・ヘアメイク・美術設定が秀逸。特にペネロピが生活する部屋がすばらしい。
ジェームス・マカヴォイが、「ラストキング・オブ・スコットランド」の傲慢で否な白人とうって変わって、繊細でナイーブな平民の青年を好演。
クリスティーナ・リッチはまさにはまり役。ただし、ブタ鼻がハマりすぎていて、呪い解けた後の彼女の顔に物足りなさを感じてしまうのはちょっとした副作用。
キャサリン・オハラが母親だと、呪いじゃなくてもブタに似た子が生まれるんじゃないかと考えてしまう瞬間が何度か。
甘いハッピーエンドのおとぎ話という風評があるようだけど、これ以外のオチは考えられない。無駄なひねりは不要の佳作。
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