F1ファンにはたまらない、F1 ABC絵本『For the Love of NASCAR』

 『For The Love Of Nascar: An A-to-z Primer For Nascar Fans Of All Ages』のようなABC絵本を手にすると、これも米国だなあ〜と思う。取り扱われている内容がNASCARだから当然なのだが、何でもテーマ別でABC絵本に仕上げてしまう発想もそうなのだ。これを学校の授業では「taxonomy(=分類)、タクソノミー」と呼ぶ。
 たとえば昨年、幼稚園の娘の授業では子どもたちに動物のアルファベットをAからZまで挙げさせ、表を作って廊下に張り出していた。先生はしっかりtaxonomyの意味を説明し、発音を繰り返させ、「これから新しいことを勉強するたびに、taxonomyで言葉を集めましょう」と話していた。ちょうど同じ頃、息子の4・5年生のクラスではサイエンスにかかわるtaxonomyをAからZまでリストアップ。ここでは、「実験」とか「仮説」「検証」といった科学の概念にまつわる言葉が26語並べられていたような気がする。こうやって、たとえば言語(国語)とサイエンスなど科目を統合(integrate)させて学ぶ姿勢は、ほかの授業にも取り入れられていることだ。統合学習(integration)はプレスクールから大学まで、「学び」を考える上で当然の取り組みになっている。
 図書館に行けば、アフリカ、アジア、ダンス、船、食べ物……などなど、それはそれはさまざまな分野とテーマにおけるABC絵本が並んでいる。ABCを通してテーマを語る手法は、最初は単なるABC別言葉の羅列という認識に過ぎなかったのが、子どもたちの授業を目にして「言語(国語)+α」で学習を進める学びの一環であることが次第にわかってきた。
 前置きが長くなってしまったが、このF1絵本はカーレース好きの男性諸氏にはたまらない1冊だろう。イラストはビジネス誌や主要地方紙でよく見かけるマーク・アンダーソン。作者のマイケル・フレシーナはNASCARを中心に、NBAMLBNCAAをカバーする旬のスポーツライターである。ビジネス、スポーツといった熱き男の世界で活躍する2人が「絵本」を作ると、F1 taxonomyになった。出てくるのは、NASCAR史上に名をとどめる人気レーサーと、NASCARの組織、文化を物語る(たとえば、「インディー」「スポンサー」「ビクトリー・レーン」などの)用語など。AからZまで一通り読めば、いっぱしの豆知識は頭に入れられそうだ。車の好きな人へのプレゼントに最適。絵本というより、NASCARを知るグラフィック・ブックといった体裁だ。
 カーレースって、うるさいしガソリンの無駄遣い……とずっと思っていたけれど、この世界で夢を見る人がいることを思うと、これはこれでひとつの文化なのだと思えるようになった。(asukab)

For The Love Of Nascar: An A-to-z Primer For Nascar Fans Of All Ages

For The Love Of Nascar: An A-to-z Primer For Nascar Fans Of All Ages

四季の絵本手帖『おひさまパン』

おひさまパン

おひさまパン

 雪交じりの風が吹きすさぶ季節、家の中では動物たちが怒っていたり、泣いていたり、病気で寝込んでいたり……と幸せそうではありません。みんな、おひさまが再び笑顔をのぞかせてくれるのを心待ちにしていました。そこで犬のパン屋さんは、小麦粉、バター、お砂糖、卵、イーストを混ぜて、おひさまパンを焼こうと張り切ります。「おひさまあじの とくべつパンを やきましょう」――。その生地はつやつやで、さわるとすべすべしています。このあたりから子どもは、ふかふかおひさまパンのとりこになっていくでしょう。金色の生地が、おひさまの顔になり、オーブンの中でふっくらと焼き上がるページには、甘い芳ばしい香りとパンの温もりという幸せがいっしょに描かれます。おひさまパンを一口かじれば、みんな元気がいっぱいです。「食」の与える精力は、動物たちだけでなく子どもにもしっかりと伝わることでしょう。
 布や包装紙、千代紙を利用したコラージュと水彩は、おひさまパンと動物たちのみなぎる力を鮮やかに映し出します。細部に凝った動物の表情、街や森の様子には、探しものをする楽しみが生まれるでしょう。
 子どもなら、誰もが食べてみたいと思うおひさまパン――。裏表紙には焼き方の手順が掲載されているので、特に秋から冬、春にかけてのパン作りには欠かせない絵本になりそうです。(asukab)