とある飛空士への追憶

とある飛空士への追憶 (ガガガ文庫)

とある飛空士への追憶 (ガガガ文庫)

読了。タイトル買い+ジャケ買い

この人にどうしても伝えたい気持ちがある。
胸が押し潰されるような切ないなにか。抑えつけようとしても、こころの奥底からこみあげてくる根源的ななにか。身体のなかを清くて激しい嵐が吹き荒れている。
その風の言葉が、ファナにはわかる。
――シャルルとずっと一緒にいたい。

大空に命を散らす覚悟の若き飛空士。ある日彼に任務が与えられる。いわく、「次期皇妃を偵察機の後席に乗せ、中央海を単機にて敵中翔破せよ」 ――美姫を守って12,000キロ、5日間の2人旅が始まる。


傑作! これは大当たりですよ。
舞台は戦時中の二大国、ピラミッドの最底辺で混血の孤児として「飛空士」(端的に表すと、しがない傭兵) をやっている主人公に、ピラミッドの頂点である令嬢を任される……という話です。
話としては、二人が徐々に惹かれあうにしても、劣等機でのドッグファイトにしても、よくあるイベントから外れない、安心して読める展開です。まあ、簡単に言葉にすると一行で済むような……。でも面白い。圧倒的にうまい。二人の間にある切ない気持ちも、空を逃げる緊張感も、すごく良く伝わってきます。
特にラスト、331頁「いつでもこの黄金の空へ戻ってこられる」 あたりはかなり秀逸。カラーイラストを見るために読むのを中断することがもどかしくて、『ここにモノクロ挿絵があっても良かった』 とさえ思ったりしました。どちらでもいいですが……。まあ最善なのは『ここにカラーイラストが (ry』 ですよ。


既刊リストを見ると、「レヴィアタンの恋人」 シリーズの作者だったんですね。以前から少し気になってはいたんですが、これは買う必要が出てきましたよ。




余談。
これはやばい。夢で話の続きが出てきました。シャルルがホテルで雇われるようにファナが計らい、しばらくすると飛空士になったファルルが飛行機で遊びに来る” みたいな話だったと思います。設定などは総無視ですし、むしろ読んでいる最中に「こうなるかなあ」 と想像、もとい、期待していた展開なんですが*1。まさか夢にまで見るとは。びっくりです。

*1:表紙イラストで飛行服を着てるから、てっきり……。