04, 09. 2010 グレコの家とサント・トメ教会


トレドの街並と並んで、期待していたものがあった。グレコが描いた2点のトレド風景の1点はニューヨークのメトロポリタン美術館にあり、もう1点がグレコの家に展示されていることを美術全集で見ていたので、この作品との出会いを愉しみにしていた。メトロポリタンに収蔵されている作品は、幾分色調の重い風景画なのだが、グレコが暮した家に展示されている筈の作品は白日光のもとの作品で、「トレドの地図と景観」と題された作品。右手前に人物が地図を広げている奇妙な構図。天空には天使の一団が舞っている。繊細な色調は、後の印象派の色彩の予兆を孕んでいる様にさえ思われる。

カテドラルを観た後、グレコの家へ向った。方角は間違えていない筈だが、中々見付からない。余り広くない広場に出た。突き当りにある建造物は、小さな表示でシナゴガ・デル・トランシトと知れた。ユダヤ教の教会と礼拝用の道具等を展示する博物館だった。直ぐ近くにある筈と、進むべき方向を探していると、博物館の係員と思われる制服を身に着けた女性が出て来て、煙草を吸い始めた。近寄って尋ねると、博物館前の道を右に進めば良いと教えて下さった。そして、現在は閉鎖中とも教えられた。博物館の右手に入る細い路地の奥に、グレコの家があった。確かにかなり旧い建造物。補修が必要になったのだろうか。






愉しみは消えたが、生家の佇まいは中々佳かった。イメージしていた建造物より遥かに大きかった。ファサードもかなりの幅があったが、左手に続く路地を曲がった奥行きは、驚く程長かった。路地の奥が明るく、開けていることが判った。広場の前に、サント・トメ教会の裏に当たる、展示館の入口があった。少々照度は不足気味ながら、「オルガス伯の埋葬」は迫力があった。サント・トメ教会への道標に沿って教会へ向った。






細い路地の先に、サン・ロマン教会の塔が見えた。サン・トメ教会は、バラ窓が不思議な形と色遣いの教会だった。





余り大きな空間ではないが、均整のとれた佳い空間だった。面白いことに階上へ誘導する表示が出ていた。階段を上ってみる。側廊の上やパイプオルガンの傍から見下ろすのは初めての経験で新鮮だったが、オペラ劇場を想わせた。やはり教会の空間は見上げる方が良い。






通りの角に新たな表示を見付けて、廻って見ることにした。