風の歌が聞こえますか

僕に聞こえてくる風の歌を綴ります。

「ルーブル美術館展」と「マグリット展」

暖かい春の日差しが降り注ぐ月曜日。
休暇を取って国立新美術館で開催されている「ルーブル美術館展」と「マグリット
展」を回ってきた。いや、計画的に2つを回ったというよりは、ルーブル美術館
展でちょっとがっかりして、口直しにと思って入った「マグリット展」にノック
アウトされた、というのが正しい。

ルーブル美術館展での僕のお目当てはもちろんフェルメールの「天文学者」で、
この絵で僕が見たフェルメールの絵は19点目になる。会場に入ってみるとさほどの
混雑もなく絵を見ることが出来たが、正直言って、僕がぐっとくる絵が少ない。
コローの作品2つはいいな、と思ったが、大きくフィーチャーされている「鏡の
前の女」や「両替商とその妻」などは僕に何も訴えかけてこない(むしろ紀元前
の古代の壺に描かれた絵の精巧さには結構感動した)。
さて、目的の「天文学者」であるがこの絵も残念ながら僕に何も語りかけてこな
かった。大傑作とされている絵なのに、全く何も感じないのは、僕のほうに原因
があるのか?それとも他に原因があるのか?
ともかく、僕が見たフェルメールの絵でこれほど「何も感じない」絵は他になか
ったので、僕は大層驚きもし、残念にも思った。ひとつはこの絵の筆致や色合い
がシャープでなく、クリアさが感じられなかったからかもしれない。
そんなことは、表層的なファクターだと思うのだけれど。。。

ルーブル美術館展

いささかがっかりして、そのまま帰宅する気持ちになれず、同時開催されていた
マグリット展」へ入った。ところがこれが大当たり。
大体、僕はシュールレアリスム系の画家(例えばダリやミロなど)が好きなので、
もともと相性はいいのだが、今回、100点以上のマグリットを見てあまりの素晴
らしさにため息が出た。何が素晴らしいとうまく表現できないのが悔しいが、
特にマグリットの色の使い方、フォルムの美しさは凄く素敵だと思う。
特に気に入った作品の画像を1点上げておく。

「ガラスの鍵」
この作品は典型的なマグリット作品とは言えないので、ぜひ以下サイトを
ご参照頂きたい(今回展示されていない作品も多く含まれている)。
ちなみに実物の色合いや筆致は息を呑むほどでネットではわからないだろう。

マグリットの作品をまとめているサイト

マグリット展HP

面白いのは、マグリットの作品解説で、本人はあれやこれや言っているのだが、
どう考えてもこじつけの理屈みたいなものが多く、要はともかくこういう絵を
描きたかったんだろ?と言いたくなってしまう。
現代音楽でもそうだが、作家が自分であれこれ言っていることを僕はあまり
信用しないし、重きも置かないようにしている。

帰りにショップに寄ったら、ルーブル美術館展に比べてポストカードの数も
ごくわずか(それも輸入カード)で僕としてはどうしても食い足らなく、
重くて嵩張るので最近買うのを避けていた図録を買ってしまった。
持ち帰るのは大変だったけど、これでいつでも自宅でマグリットのシュール
で奇妙な絵が楽しめる。
ああ、なかなかいい休日だった。