訴えの変更について調べてみました。


あけましておめでとうございます。


143条(訴えの変更)
1項:原告は、請求の基礎に変更がない限り、口頭弁論の終結に至るまで、請求又は請求の原因を変更することができる。ただし、これにより著しく訴訟手続を遅滞させることとなるときは、この限りでない。
2項:請求の変更は、書面でしなければならない。
3項:前項の書面は、相手方に送達しなければならない。
4項:裁判所は、請求又は請求の原因の変更を不当であると認めるときは、申立てにより又は職権で、その変更を許さない旨の決定をしなければならない。



訴えの変更とは、同一原告が訴訟継続中に同一被告との関係で新たな請求を審判対象とすることをいいます。
その趣旨は、原告の便宜・訴訟経済・裁判の統一にあるとされています。
常に原告が別訴を提起しなければならないのでは、原告にとって酷であるし、労力・経費の無駄になるし、裁判の不統一をもたらすおそれがあるからです。



訴えの変更の要件は以下の通りです。



1 請求の起訴に変更がないこと(143条1項)


2 著しく訴訟を遅滞させないこと(143条1項但書)


3 事実審の口頭弁論終結前であること(143条1項)


4 交換的変更(原告が従来の請求に替えて新たな請求の審判を求めること。判例は、原告による新請求の追加とその訴訟係属後の旧請求の取下げ又は放棄と理解する(最高裁昭和32年2月28日)。)の場合、相手方の同意があること(261条2項)



「請求の起訴に変更がない」とはどういうことをいうかについてが第一論点です。



(最判昭39・7・10)

 相手方の提出した防禦方法を是認したうえその相手方の主張事実に立脚して新たに請求をする場合、すなわち相手方の陳述した事実をとつてもつて新請求の原因とする場合においては、かりにその新請求が請求の基礎を変更する訴の変更であつても、相手方はこれに対し異議をとなえその訴の変更の許されないことを主張することはできず、相手方が右の訴の変更に対し現実に同意したかどうかにかかわらず、右の訴の変更は許されると解するのが相当である。
 そして、右の場合において、相手方の陳述した事実は、かならずしも、狭義の抗弁、再々抗弁などの防禦方法にかぎられず、相手方において請求の原因を否認して附加陳述するところのいわゆる積極否認の内容となる重要なる間接事実も含由れると解すべきである。
 ところで、原審判決(一審判決引用、以下同じ。)および一件記録によると、被上告人は、当初、上告人先代Aに対し係争家屋が被上告人の所有に属するとしてその所有権にもとづき係争家屋の明渡ならびに延滞賃料および賃料相当損害金の支払を請求したところ、同人は、係争家屋ぼ被上告人所有のもとの家屋を取りこわしたうえあらたに建築して上告人先代Aの所有に属する旨主張して積極的に被上告人の所有権を否認した。そこで、被上生人は上告人先代Aが知に陳述したところに従い係争家屋の所有権が同人に属することを前提として、あらためて本件土地の所有権にもとづき同人に対し係争家屋の収去とその敷地の明渡の請求を、第一審において、予備的に追加したことが認められる。
 右訴訟の経過によると、本件においては、被上告人は、係争家屋の収去とその敷地の明渡の請求を、上告人先代Aの提出したいわゆる積極否認にかかる事実を是認したうえこれにもとづいて新たに右請求を予備的に追加したものと認められるから、前段説示のところから明らかなとおり、右の訴の変更は許容するのが相当である。それゆえ、被上告人のした新の追加的変更を許容した原審判決の判断は相当というべぎであり、原審には、所論のような違法はない。



この判例は、請求の起訴を同一にするか否かについて明確に判示してはいませんが、「かりにその新請求が請求の基礎を変更する訴の変更であつても」と判示しているので、請求の基礎に同一性があると積極的に解したものではないのではないかといわれています。


請求の変更前後の両請求の主要な争点が共通であって、旧請求についての訴訟資料や証拠資料を新請求の審理に利用することが期待できる関係にあり、かつ、各請求の利益主張が社会関係上同一または一連の紛争に関するものと認められる場合を指すとする、新堂・上田説が有力です。



相手方の陳述した事実に基づく訴えの変更の可否についても問題となります。
判例はさっきと同じです。



(最判昭39・7・10)

相手方の提出した防禦方法を是認したうえその相手方の主張事実に立脚して新たに請求をする場合、すなわち相手方の陳述した事実をとつてもつて新請求の原因とする場合においては、かりにその新請求が請求の基礎を変更する訴の変更であつても、相手方はこれに対し異議をとなえその訴の変更の許されないことを主張することはできず、相手方が右の訴の変更に対し現実に同意したかどうかにかかわらず、右の訴の変更は許されると解するのが相当である。そして、右の場合いおいて、相手方の陳述した事実は、かならずしも、狭義の抗弁、再々抗弁などの防禦方法にかぎられず、相手方において請求の原因を否認して附加陳述するところのいわゆる積極否認の内容となる重要なる間接事実も含由れると解すべきである。



「著しく訴訟手続を遅滞させる」の意義についても重要論点です。



(東京地裁平14・2・28)

本件訴えの変更は、平成13年9月27日午後3時の本件第2回口頭弁論期日において、いったん弁論が終結された後、原告の申立てにより弁論が再開され、さらに原告の申立てにより期日変更がなされ、変更後の同年12月18日午後1時30分の本権第3回口頭弁論期日において、当裁判所が当事者双方に対し、次回、消滅時効の抗弁及びこれに対する時効中断等の再抗弁の主張整理後、終結予定である旨告げたにもかかわらず、原告が平成14年1月17日に突如として同月24日付け訴え変更の申立書を当裁判所に送付し、同月24日午後3時の本件口頭弁論期日において同申立書を陳述してなされたものであるところ、本件訴えの変更後の請求は、請求の趣旨の変更を伴う上、その請求原因として、本件訴えの変更前の請求原因として主張した本件管理委任契約とは別個の契約等を主張するものであるから、被告の争い方如何によっては、さらなる主張整理及び証拠調べが必要となることも十分予想されことに鑑みると、相当の時間を要することが認められるから、本件訴えの変更は、民事訴訟法143条4項により許されないといわざるを得ない。



裁判が終結予定であること、新たに主張整理及び証拠調べが必要となることが十分に予想されること等がキーワードになりそうです。



特に苦手意識のある民訴法と行政法をどうにかしたい今年です。
もちろん他の分野も苦手というかできないのですが…。

早くローに行きたい、行けるといいな。