「グラン・トリノ」

結末は予想していた通り。うわあ、C・イーストウッド、凄いわ。俳優としても、監督としても。お姉さん役のアーニー・ハーがかわいかった。
(以下、微妙に結末に触れているのでたたんでおきます)
 
 
銃を持つアメリカ、戦争をするアメリカへの痛烈な挑戦状だと思いました。暴力に暴力で対抗していては、結局はなにも解決しないんだと。「かといって、殺されたら元も子もないじゃないか」と思う人もいるかもしれないけれど、うーん、難しい問題だけどね。頑固で、家族からも煙たがられていて、トラブルがあるとすぐに銃を持ち出す主人公。若者たちの脅しにも全く動じず、一見、戦争に行った自分を誇りに思っている元軍人なのかと思いきや、朝鮮戦争で降伏寸前だった相手を殺したことを今なお心の傷として背負っているという設定が、深いですね。
テーマは重いけど堅苦しい作品ではなく、ほのぼのしたところも随所にあって。隣に住むアジア系移民の一族と徐々に交流を深めていく様は良かったなあ。やもめ暮らしでロクな食事もしてない(ビールとビーフジャーキーだけ、とか)ウォルトが隣家に招かれ、最初は遠巻きにしていたが次第に「あれも食べなさいこれも食べなさい」と彼のお皿に料理を山盛りにするモン族の人々、とか、お礼の品がどさどさ玄関に並べられ、断るつもりが料理の旨そうな匂いに思わず鼻をひくつかせるウォルト、とか。彼とタオの親子のような友人関係も、お互い人種差別的悪態をつきつつけっこう上手くやってる床屋や建築現場のボスとの関係も、なかなかでした。
ラスト、グラン・トリノが走り去った海岸沿いの道に次々現れるのは、アメ車じゃなく日本車っぽい車ばかりで、アメリカの変わりぶりを物語っていたよう。そんな中、がんと岩のようにそびえ立っていた主人公の生き様が深く心に残りました。カッコいいとは、こういうことさ。
(映画館にて鑑賞)