ノット・スムーズ・オペレーター

携帯電話を新しい機種に変更したので、電話にまつわる話をひとつ。三分程度の話です。オチはありません。最初にごめんなさいと謝ります。

「ヨザット・マ!」

仕事中、私の携帯にかかってきた見覚えのない電話番号に躊躇しながら出ると、開口一番にその言葉が耳に飛び込んできた。甲高い女性の声。
見知らぬ番号からの電話に対しては人一倍警戒心の強い私たが、携帯電話のディスプレイに表示された番号の市外局番は、父方の親戚が住んでいる地域。それに加え、最近の冷え込みはちょっとしたものだ。高齢者で体調を崩す人も多い。おばちゃんたちも、最近めっきり体が弱ったと言っていたしな…もしかして誰かに不幸が…?危篤状況を知らせる電話だったら、ここでスルーしたことをかなり悔やんでしまうかもしれない。リスクを秤にかけ、勇気を持ち、強い心で出た電話の第一声がこれだった。この間3コール。マナーモードの携帯が、迷いを表現するように手の中で震えていた。

ちょっと緊張していた私は「ヨザット・マ!」という謎の言葉について考えた。そういえば親戚のおばちゃんたちに誰か、最近南米の人たちが増えてきた職場で働いてる人がいたはずだ。なんかそんな話を聞いたような気がする。何か不慮の事故に巻き込まれ、病院に搬送されている途中かもしれず、それならばなるべく早く家族に連絡してあげようという親切な女の子(たぶん日系人)がいて、あまり理解していない日本語力でおばさんのポケットに入っていた携帯電話のアドレス帳を検索、名字が同じことから、家族の一員として誤解して私にかけてきたかもしれない。それならばその間違いは悪い事じゃない。いい選択だったと褒めてあげるべき間違いだ。これから私が連絡網の素晴らしい発信元として迅速に伝えてあげるから。これはピンチがチャンスみたいなものだ。
それにしても南米系の言葉…「ヨザット・マ」は何語だろう?「ヨ」は「あなた」で「ザット」はたぶん…危ない?それで「マ」は「ママ」の意味なのだろう。違う言葉でも、けっこう似ているものはあるのだから。早く答えて(自分も相手も)落ち着かせなければならない。考えてようやく浮かんだのはインチキくさい発音の「ポファヴォ…モメント…シディゴ」*1という訳の分からない言葉。受話器の向こうでしばしヒソヒソ話す声が聞こえ、いきなり通話を切られました。耳に響く「ツーツーツー」という音。この全てが二分の間に起こったことです。

電話を切られたものの、頭の中では消防車のサイレンが鳴り響いているような状態でした。心配になった私は発信番号に電話をかけました。すると、聞き覚えのある声がして、従妹が携帯電話を新しいものに変更したので、年賀の挨拶を兼ねてかけたと説明。新年だから勢いよく「ワッツアップ・メーン!」とラップ言葉で(本人発言ママ)呼びかけたそうです。当然、私が「イエイエイエ・アンジュー?」と返答すると思ったとコメント。昔の私ならノータイムでなにか返していたはずだと衰えを指摘されました。一年ぶりぐらいにかけてきて、いきなりそれはないよ。切り返せなかった自分がちょっと負けた気がします。

よくよく整理してみると


電話かかってくる(知らない番号)
   ↓
3コールで私が出る。
   ↓
テンション高めの「ヨザット・マ!」(従妹)
   ↓
1分ほどの沈黙
   ↓
私が「ポファヴォ…モメント…シディゴ」(かなり棒読みで)
   ↓
無反応で電話が切れる

無理矢理考えると、この話の教訓は「自分の妄想力に気をつけましょう」という事と、これから電話をかける時は知り合いでも「○○です」と最初に名乗ろうということです。そもそも間違えたと思ったら「すみません」か「ソーリー」ぐらい言えよ従妹と今になってようやく思います。



お仕事で見た映画の簡単な感想なり。

  • 「ハニー」

ダンサーを目指すブラックアメリカン女の子の話。ダンスシーンがまずまず。PVの撮影シーンなどの映像がかっこよかった。流れる音楽がネプチューンズものみたいにちょっとねじれた電子音付きヒップホップ。アフロ(のちにコーンロウ)のちびっこダンサー(ゲットー出身)がとにかくかわいい。でも、ダンサーがしっかりとした収入になるっていうのが日本にいるとまったくピンと来ない。ダパンプやエグザイルとかを見ながら、私のがよっぽど将来が見えてこないのに「大丈夫かな、年を取ってから。やっぱりダンス先生(イメージはごっつエエ感じのコント)」などと全く無駄な心配をしてしまいます。だって、L.L.BROTHERSやインペリアル、DADAのメンバー、ZOOの残党はどこに行った?

  • 「ホワイト・チック」

白人のセレブを警護する羽目になった、ダメ警官二人組の話。警護していた対象のセレブ姉妹(ヒルトン姉妹などのバカセレブがモデル)が自分たちのミスで出かけるのを取りやめ、そのままでは責任問題になってしまうため、なんとかごまかそうとブラックの男がホワイトのセレブに特殊メイクでなりきる。気持ちいいぐらいチープ。特殊メイクした状態が蝋人形か死体にしか見えません。

一番期待して見た作品。学校で友達にうまくとけ込めず、隣の家に住んでいる幼なじみのでぶっちょの少年だけが友達だった女の子が、13歳の誕生日に散々な目に遭い、閉じこめられたクローゼットで「30歳になりたい」と願うと、次の瞬間に30歳になっており、夢見ていたことが叶うが…というストーリー。
J・ガーナーは確かにかわいいのだけど、同じようなストーリーで私の好きな作品「Big(トム・ハンクス主演)」に比べると、大人になってしまったことに対する戸惑いなどがうまく描けていないような気がしました。せっかくの設定なのにもったいない…話の辻褄を合わせなくてもちっとも構わないのだけれど、「もし、突然大人になってしまったらこんな所に驚愕するだろうな」という点に関しては、「小さくてティッシュを詰めていた胸が大きくなって喜ぶ」ぐらいしかなく、あまり「うんうん、そうだろうなぁ」と思えるところが見あたりませんでした。飼っている犬がフレンチブルドッグだったのは、なぜかうれしかったです。なんでかな。なんでかな。


今日は久しぶりに…スザンヌ・ヴェガのトムズ・ダイナーを聴こうと思いました。

ベスト・オブ・スザンヌ・ヴェガ

ベスト・オブ・スザンヌ・ヴェガ

*1:後から調べてみたら「ちょっと待ってな、御用事なぁに?」と訊いていた

くるりからメガネ脱退

言い回しがとても素敵だったのでリンク。
私の友人は、メガネかけて髪の毛フワッとした兄ちゃん(気持ちオシャレさん)すべてを『くるり』と呼んでいるのですが、今後の彼に注目してゆきたいと思います。外す理由が「星を眺めているうちに目が良くなったから」だったらいいのに。夢があってさ…

クリストファー脱退よりも大ニュースな勢いです。公式ページにもちゃんと「このたび岸田のめがねが脱退しはりました」ってかかなきゃいけないぐらいですよ。「音楽性の違いにより今回はめがね氏とは違う道を歩むことになりました。今後のめがねとくるりの活動をご期待ください」

これに絡めて思い出したのが『ずるり』なんかわからんけどすみません。