仲秋の名月

仲秋の名月である。ビルの谷間から顔を覗かせたときは同僚たちから嘆声が上がるほど明るく大きく美しかった。
 仕事なんかしている場合じゃないよね、なんていいながら今日も残業。

 国立に着いたときにはほぼ真上に来ていた。真上に来つつも駅前はビルの谷間。しかも今夜は厚い雲がところどころにある。見え隠れする月を探しながらの帰途だった。
 
 ちょうど家に着いたとき、また隠れてしまった。坪庭に立ち、しばし月を待つ。
 ほどなくその姿を見せてくれた。母が丹精した畠の前に立つと、土が月の光をほの青く反射しているのが見られた。あのまっ黒い土が青く光るのがなんとも不思議だ。


     
       名月に光る畠の土の色


 
 月見といえば団子というイメージがあるが、お芋を供える習慣もある(おもにサトイモかな)。
 夕食の味噌汁の具はさつまいもだった。ツマがその習慣を知っていたかどうかはわからない。聞けば「知っていた」と答えるにきまっているから聞かない。

 それにしても真夏のように暑い一日だった。台風が近づいているらしい。きっと突然、秋になるのだろうな。


  中国で、中秋の名月に供える「月餅」。僕は子どものころテレビの「水戸黄門」のタイトルバックの映像を(CM入りやCM明けの映像も)、ずっと「月餅」だと思っていた。