ダークナイト

f:id:bareisyo:20150310190546j:plain


おれはみんなのように笑おうとした。とぎすまされたハガネの刃をもつナイフをにぎり、唇のあわさっている部分の肉を、おれは切り裂いた。一瞬、うまくいったようだった。鏡のなか、おれの意志で傷つけたおれの口を、おれはみつめた。失敗だ!それがほんとうに人並みの笑いなのかどうか、(二つの傷口から流れ出る大量の血が)ともかくわからせてくれないのだ。しかし、しばらくよく見ていると、おれには見えた。おれの笑いが人類のそれに似ていないことが。つまり、おれは笑っていなかったのだ。(ロートレアモン伯爵「マルドロールの歌」)


この衝撃をどう言葉にしたらいいのかわからない。 とにかくジョカー役のヒース・レジャーが凄すぎる。最強にして最凶のアンチ・ヒーロー。 レクター博士に匹敵する怪物の登場により、映画史は更新された。歩き方、しゃべり方、身のこなし、そして人の神経を逆撫でする高笑い、そのすべてに血がたぎる。ヒース・レジャーの演技はのちのちまで語りぐさとなり、伝説となるだろう。しかし、もう2度とこのヒース/ジョカーが再臨することはないのかと思うと・・・
ああ、世界はなんて退屈でつまらないんだろう。