ケータイ短歌の現場より(4) ケータイ小説とケータイ短歌のエンドユーザー

近頃書店のベストセラーに、「ケータイ小説」というジャンルが進出してまいりました。
横書きの、改行の多い平易な文体。読者層は中高生と、他のジャンルの小説と比較して圧倒的に若く、なんとその著者も、読者と同年代の10代の若者であることが特徴です。
内容も、等身大の学校生活やレンアイが主題。「ふだん本を読まない層」が積極的にこれらの本を手に取るという、いわゆるケータイ小説ブームは、いったいどこから巻き起こったのでしょう。
商業サイトでお金をとって、ケータイの画面上で小説を読ませる試みは、出版社主導ですでにいくつかありました。現在のケータイ小説の流れを作ったのは「yoshi」という男性で、彼の作品『DeepLove』シリーズはミリオンセラーとなり映画にもなりました。
そのような下地はありましたが、それを経た今ブームを支えているのは、商業的な仕掛けではありません。
「勝手サイト」と呼ばれる、個人作成のホームページからクチコミで広まったものなのです。「勝手サイト(個人ホームページ)」とは「公式サイト(企業公式のホームページ)」と区別するための俗語ですが、その名の通り、個人がウェブスペースをレンタルして、勝手に立ち上げたホームページのことを差します。広告の掲載を条件に無料で機能を貸し出すところが多く、掲示板と日記程度の小さなサイトであれば全く知識のない中高生でも簡単にホームページを開設できるというのがケータイインターネットの魅力の一つとなっています。
ケータイ小説を多数排出した大手サイト、「魔法のiらんどhttp://ip.tosp.co.jp/Portal/c.asp?i=mahoitop)」では、そんな個人ホームページで書かれた小説を集めて人気投票をするなどして、アマチュアから原石を発掘して世に送り出したのです。


ケータイ小説は、読み手と書き手がイコールであることが、大きな特徴であるといえます。今を支えているケータイ小説の書き手は、プロではなく、「ごく普通の女子高生」というのが逆に売りなのですね。
大人が読むと、どこが面白いのかわからないんですよ、「ケータイ小説」って。文章は稚筆だし、横書きの小説はそもそもよみづらいと思う。
でも、売れているブームには、かならず理由があります。本質を見誤らなければ、取り入れられるプロセスはたくさんあるはずです。


ケータイのエンドユーザーは子供たちです。きっちり若い世代に目を向けて育てていかないと、文化は必ず先細りすると思います。短歌なんて、ただでさえ「そんな婆臭い趣味、楽しい?」とか言われんのにさ。
「サラダ記念日」のブームが短歌人口の増加と口語短歌の世界を確実に広げたように、ケータイ短歌をきっかけに新しい世界がひろがりますよう…。


ケータイを振れば電波は繋がると信じてる子供たちの終末(A.I)