Shin Yamagata

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6月5日




めんどくさいから女は届いたメールをそのまま転送してそっちでなんとかしてくれよと丸投げた。女はそうやって自分の仕事を一つ減らして満足した。会社の帰り道、強風で傘の骨が折れてしまいずぶぬれになった女の顔はまだ満足した顔をしている。その顔のまま電車に乗った。あんなに風が吹いて強く雨が降っていたのに電車の中にいる人は誰も濡れていない。傘さえ持っていない。つり革を掴んだ女の右手の肘からは水が滴り落ちているし、顎の先からも左手に持った鞄からも水は落ちている。女は自分の靴を見てわたしは川の中を歩いてきたのではないかと思っていた。実際女はほとんど溺れていたのだった。