丸亀市猪熊弦一郎現代美術館

設計:谷口吉生(1991年) 第7回(1994年)村野藤吾賞



昨日の地中美術館が「最高の安藤忠雄建築」だとするならば、この猪熊弦一郎美術館は「最高の美術館建築」だと思う。すべてが完璧。どの位置からどこを見てもすべてが画になるという恐ろしく完璧で美しい空間。私がいままで観た美術館建築でたぶん一番好きだと思う。
地中美術館は、場面場面でどかーんどかーんと安藤爆弾のような劇的空間が投下されて、その空間と展示される作品とがシンクロして、観ている者の心を打つのだろうけど、この美術館は空間が控えめで凛としている。空間自体は基本的な建築エレメントのみで構成されていて奇を衒ったことはなにもしていないのだけど、展示室同士の関係や天井高の変化など、すべてが計算されて尽くされていて、これこそが建築のお手本だと思った。うまく言えないけど、当たり前のことを当たり前に丁寧に丁寧に創られていると感じた。そのひとつひとつの丁寧が積み重なって津波のような感動が押し寄せる。とにかく一度行って体験してください。