いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「笑わない科学者と時詠みの魔法使い」内堀優一(HJ文庫)

笑わない科学者と時詠みの魔法使い (HJ文庫)
笑わない科学者と時詠みの魔法使い (HJ文庫)

「一言でいうなら魔法使いですかね」
そんな言葉と共に、物理学を修める学生・大倉耕介が教授から託されたのは、咲耶と名乗る女の子だった。謎の儀式『時詠みの追難』をめぐり、命の危機に晒されていた咲耶。耕介は論理的思考を積み重ね、彼女を守る最適解にたどりつけるのか!? 
物理と魔法が手を結ぶ化学反応ファンタジーを観測せよ!!


優しさに溢れた現代ファンタジー。主人公の優しさが作り出す作品の雰囲気がいい。
インテリイケメン大学生というライトノベルとしては珍しい主人公なのだが、こいつがやたらカッコイイ。
腕力や魔力などの強さは無くても自分の知識と思考を駆使して最大限の結果を得る戦い方、他人の機微に敏い細やかさ(恋愛方面除く)、決して驕らない姿勢、過去に裏付けされた少し切ないが上辺だけじゃない確かな優しさと、いわゆるオレツエータイプとは違う万能主人公で読んでいて気持ちが良い。
また、ヒロインの咲耶もなかなか。年齢以上に無垢な様子や、耕介に懐く様子が可愛らしい。まあその様子と年の差で作者の言うラブコメってムードじゃないけど。
魔法+物理と言うわりには魔法の存在感が薄かったり物理学じゃなく化学だったり、ストーリー的にも肉付けして欲しいところはあったりと(特に前半に)、内容が少し薄いのがもったいないが、話の展開は上手いし説明多過などもなく読みやすい。
HJ文庫の新人賞ということで全く期待していなかったのだが(コラ、これはなかなか面白かった。