いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「乙女ゲーの攻略対象になりました…。」秋目人(電撃文庫)

乙女ゲーの攻略対象になりました…。 (電撃文庫)
乙女ゲーの攻略対象になりました…。 (電撃文庫)

なぜか乙女ゲームの世界に放り込まれた、俺。しかも攻略対象になってしまったようだ。てことは、もしや美少女たちにアタックされまくり!? ウヒョ!
と喜んでいたのもつかのま、そうそう都合のいい話はないようで。どうやら攻略されると、俺の死亡ルートに突入するかもしれず……。死の恐怖におびえる中、誰もが憧れる美少女たちが、俺を落とそうと次々やってくるのだった。
美少女か、命か。どちらを取るべきなのか? それはもちろん――!
乙女ゲームという名の、ちょっと変わったデスゲーム・ラブコメが登場!

デビュー作『騙王』が面白かったので購入。
妹がやっていた乙女ゲーの世界へ放り込まれてしまった主人公。妹から無理やり聞かされていたゲーム内容のおぼろげな記憶を頼りに、自分が死亡してしまうらしい個別ルートへの突入を回避するべく奮闘するドタバタコメディ。



ギャルゲーの主人公になる作品の変則系で、結局は多くの女の子たちと絡むラブコメなんだろうと思っていたら……驚くほど華がない。
主人公が対象の女の子(乙女ゲーのプレイヤーキャラ)以外も避けまくっているので女の子との絡みが少なく、やっていることといえば勉強と称して部屋にこもって乙女ゲー。何してんだこいつと思わなくもないが、これが意外と面白い。
その理由はその主人公。すげー変な奴で、こいつを見ているのが楽しい。
バカっぽい口調ながら考え方は理性的。特に自分の考えを整理するのが上手く読んでいてわかりやすい。で、その考えを元に行動するわけだが、的を射ていない見事な努力の方向音痴が笑える。
また、基本的にいい人なので、好感度を下げたいのに非情になりきれず、自分の優しさや道徳に負けてしまうヘタレとも誠実とも言える姿がコミカル。
時折見せる現実とゲームのお約束の格差に入れるツッコミや、ゲームのイベントをゲーマーじゃない視点で分析するところなんかも面白く、予想外のほぼラブなしコメディだったがかなり楽しめた。
理屈をこねるタイプの主人公やゲームの理不尽を逆手に取ったコメディに興味を引かれる人にはオススメ。キャッキャウフフなラブコメを読みたい人には合わないかも。


え?2巻あるの? 謎はいくつも残ってはいるけど、ゲームはエンディングを迎えたのにどうやって続けるんだろう。