いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「飛べない蝶と空の鯱 〜たゆたう島の郵便箱〜」手島史詞(ガガガ文庫)

飛べない蝶と空の鯱 〜たゆたう島の郵便箱〜 (ガガガ文庫)
飛べない蝶と空の鯱 (ガガガ文庫)

霧の上を島が浮遊し、漂う世界。「霧妖」という魔物が棲む霧の海を飛び、命がけで人々の想いを封じ込めた「封書」を運ぶ「武装郵便屋」の少年・ウィルと、不思議な少女・ジェシカの物語。飛ぶのが下手で風を読めないウィルと、あることがきっかけで空が怖くなったジェシカ。お互いの欠点を補い合わないと飛べない二人は、それでも空に憧れ、死と隣り合わせの霧に挑むのだった。「空の底」に何があるのかを知るために――。二人乗りの「翼舟」で雲の上を疾走する爽快冒険ファンタジー


これが前後巻だったら、いやせめてあと100ページあれば……と思わずにはいられない作品だった。
霧妖という脅威に怯え、霧に浮かぶ島でしか生活できない人類。言葉だけでなく想いを封じ込められる「封書」の存在。何より舞台は空。というロマン溢れる世界観にまず惹かれる。
それにバカ正直な主人公と暴力ツン娘のヒロインのコンビも魅力的。お互いを補い合う関係性とヒロインの秘密が次第に紐解かれていく展開などワクワクする要素に事欠かない
それだけに全体的に駆け足であっさり風味なのが残念でならない。物事が前触れもなく起こったり、逆に引っ張っていたものをあっさり明かしてしまったり、盛り上がるべき場所もさらっと通り過ぎてしまったりと、とにかく盛り上げ下手がなのが目立つ。
読んでいて楽しくなかったわけではないのに、もったいない感が大幅に上回って面白かったという感想にならない。イラストも世界観にマッチしていたし、傑作に成りえた作品だと思う。あーもう、なんか悔しい。