いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「アウター×トップ」神野淳一(メディアワークス文庫)

アウター×トップ (メディアワークス文庫 か 5-1)
アウター×トップ (メディアワークス文庫 か 5-1)

大学二年生の橋沢京助は親友の神崎悠宇と二人でプロレーサーを目指し、実業団の自転車ロードレースに打ち込んでいた。悠宇の妹、有季も競技に参加するようになり、京助と有季の距離は徐々に縮まっていく。
だが、京助は負傷して、プロへのステップである上位クラスへの昇格が絶望的になる。最終戦へ一縷の望みを掛け、京助はリハビリとトレーニングに邁進する……。
圧倒的なスピード感と臨場感で紡がれる、本格自転車ロレース小説。


ロードレースに青春をかけた少年少女+αの群像劇。ロードレーサーを夢見て三重から上京した大学生・京助を中心に、日常や練習風景、レースでの状況が淡々と綴られていく。
この淡々がこそが最大の特徴。全体の作りや使われる言葉が非常にシンプルで読みやすいく、読み手に伝わりやすいのが良いところ。
最たる例がこの作品の肝であるレースの模様。
説明が緻密で競技を知らない人でもレースの状況把握がしやすい。それでいて説明過多で読みにくいということはない丁度いいバランス。ただその分、あらすじでいう臨場感やスピード感はあまり感じない。
また、登場人物たちがみんな真面目。誰もが大なり小なりの悩みを抱えながらも、前向きで努力を惜しまない姿は読んでいて清々しい。反面、メインの京助の冷静だが淡泊な性格もあり恋愛模様などもう少し人間ドラマが濃くてもいいかなと思うところもある。
起伏は少ないが一定のリズムで進んでいくストーリーを、ずっと読んでいたくなる不思議な魅力のある作品だった。続きはでるのかな? 4人が協力し合うレースや上を目指すところを読みたい。