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ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「剣澄む ―TSURUGISM―」ますくど(このライトノベルがすごい!文庫)

剣澄むーTSURUGISMー (このライトノベルがすごい! 文庫)
剣澄むーTSURUGISMー (このライトノベルがすごい! 文庫)

西暦2020年、日本には特別に帯刀を許された「御三家」と呼ばれる組織があった。あるとき、「刀狩り」と呼ばれる謎の剣士が現れ、御三家の剣士の刀を次々と奪っていくという事件が発生する。父もまた「刀狩り」に襲われたと知らされた上泉綱義は、実家に戻り、蔵に捕えた「刀狩り」と対面する。それは縄でぐるぐる巻きに縛られた、自らを妖刀村正と名乗る少女だった――。第3回『このライトノベルがすごい!』大賞・優秀賞受賞作!


これは随分と趣味に走った作品で。
なにせプロローグで剣豪と辻斬りが出てきて厳かな雰囲気で始まったのに、第一章ではメイドに罵られたと思えば、男の娘な弟と幼女が兄を巡って言い争いをしてるっていうね。
そんな風に書きたい要素を詰め込んだわりに、主人公・綱義の誠実さと信念のおかげか、ちゃんと一本筋が通ったストーリーになっている。というより真面目すぎる綱義メインの堅苦しい話になるところを、それらの要素のおかげで軽く読める作品になっていると言った方が正しいかも。
見どころはアクション。出てくる人物が刀剣狂い&剣術バカばかりなので、己の信念と得物への自信がぶつかり合う試合は文句なしで熱い。あと個人的なことを言うと無駄に血が出ないのがいい。
ただ、村正の秘密を引っ張り過ぎて、沈む村正を見て真面目な綱義が自分を叱責するの堂々巡りで冗長になってしまった三章〜四章初めや、プロローグの事件がそんな方法を取る意味は特になかったという拍子抜けなど、ストーリー構成があまり上手くない。
良くも悪くも新人賞らしい作品。良い面が好みだったので結構楽しめた。