いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「少女は書架の海で眠る」支倉凍砂(電撃文庫)

少女は書架の海で眠る (電撃文庫)
少女は書架の海で眠る (電撃文庫)

書籍商を目指す少年フィルは、自身の所属するジーデル商会の命令で、仲間のジャドと異端審問官アブレアと共にグランドン修道院を訪れていた。
修道院の書架に収められた貴重な蔵書を買い付ける。書籍商としての初仕事と新たな本との出会いに、心を躍らせるフィル。しかし、そこで彼を待っていたのは、本を憎む美しい少女クレアだった。
フィルたちを修道院からかたくなに追い帰そうとするクレア。彼女が隠そうとする、ある秘密とは――。
『マグダラで眠れ』と同じ世界観で描かれる、本を愛するすべての人に贈る至高のビブリオ・ファンタジー!

『マグダラで眠れ』と同じ世界観とあるのに、特に同じ世界な意味がなくないか?どこがスピンオフ?と思いながら読んでいて、途中ではたと気づいた。
このアブレアがクースラたちが足跡を追っている異端審問官か! 変人だとは思っていたけど、ここまでとは思わなかった。こいつの為人を知った時のクースラたちの反応を見てみたいが、時代がちょっと離れているようだから無理そうね。


さて、肝心のストーリーは、本の売買が成り立たない時代に書籍商になりたい少年の物語。
相棒?の少年ジャドは早々に別れ、修道院で出会う少女・クレアには警戒され、彼らを連れてきた異端審問官は書架にこもりきりと、中盤までまともな会話がないため、主人公・フィルの独白を読むことになるのだが……。
夢見がちなのにすぐ沈むフィルの、時に情けない愚痴を、時に調子に乗った夢物語を読むのは痛い子を見ているようで、微妙な気分に 知識量と精神年齢って比例しないんだな。
それがフィルとクレアがまともに会話ができるようになってから、ようやく面白くなり始める。
フィルがクレアとの触れ合いで現実を突きつけられて成長するという面もあるが、単純に会話が楽しい。やっぱり支倉先生は会話劇だ。まあ少年少女が「頭痛の原因は執着」なんて会話しているのはなんか嫌だけどw
最後は綺麗に終わっているが、続きもあるんだろうか?