いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「エスケヱプ・スピヰド/異譚集」九岡望(電撃文庫)

エスケヱプ・スピヰド/異譚集 (電撃文庫)
エスケヱプ・スピヰド/異譚集 (電撃文庫)

『前夜』――九曜が鬼虫として目覚める前夜を柊目線で描いた物語。『幕間/昭和一〇一年の学校の怪談』――帝都への旅の途中、九曜と叶葉が廃校で体験した一夜の不思議とは? 『幕間/迷宮電気街奇譚』――廃墟の電気街・神原迷宮で九曜達が出会ったのは、機械仕掛けのメイドだった!? 『異説/私立やしま学園』――もしも九曜達が普通の高校生だったら。まさかの学園編! 『後日談/ヱピグラフ』――黒塚部隊との戦いで生き残った鬼虫達と叶葉は、世界を巡る旅をしていた。彼らにはある目的があって――?
電撃文庫MAGAZINE掲載の3編に加え、書き下ろし2編を収録した特別編!

本編の幕間、パラレルワールド、後日談。様々な短編を収録したエスケヱプ・スピヰドの最後を飾る短編集。



はっちゃけたなあ。
一話目の『前夜』が少しシリアスめなくらいで、あとはとってもコミカル。文章や口語は古風で、作品全体では硬派なイメージが強いこのシリーズでここまで遊ぶとは思ってなかった。
戦いから解放された鬼虫の面々がどの話でも楽しそうで、読んでいて楽しいと同時にちょっとの幸せも貰った気分。本編は勝っても負けてもどこか悲壮感が漂っていたことを思うと感慨も一入。
そんな訳で、どの話も九曜を筆頭に鬼虫の新たな一面が見られて驚きの連続なのだけど、その中でも一番は後日談の竜胆。
あの竜胆が逃避行を一番楽しんでるだと!? 堅物を絵に描いたようなキャラクターだったはずなのに、茶目っ気たっぷりで遊ぶ気満々な姿に、驚きの後に笑いが来た。まあ、顔と口調は相変わらず堅いままだけどもw
そんな、まとめ役が率先して遊んでいるくらい鬼虫たちがフリーダムだったおかげで叶葉は大忙し。これは近々「お母さん」呼ばれるだろなあ。幕間でもパラレルワールドの学園ラブコメでもそんなポディションだったし。
シリーズのラストは、今までの辛さを吹き飛ばし、幸せ気分で終わらせてくれる楽しい短編集だった。