いつも月夜に本と酒

ライトノベルの感想を中心に興味のあることを日々つらつらと書き連ねるブログです。



「とある飛空士への誓約8」犬村小六(ガガガ文庫)

とある飛空士への誓約 (8) (ガガガ文庫)
とある飛空士への誓約 8 (ガガガ文庫)

ウラノスに対抗するため、第二次イスラ艦隊と共闘の道を選んだエリザベート。セントヴォルト帝国作戦司令部の中枢を担うバルタザール。ウラノス女王ニナ・ヴィエントを支えるミオは、情報収集のために潜入した後宮において最高司令官デミストリの秘密を知ってしまう。そして慧剣皇王国では、かぐらが軍事クーデターをもくろむが、それは皇王を守護する実兄との対決を意味していた……。 「愚かしさがこの状況を生んだなら、さらなる愚かしさで決着をつけよう」。 敵味方に分かたれたエリアドールの七人は残酷な時代の中心で再会を果たす――


時代の流れと一部の権力者に抗い、若者たちが休戦・終戦への努力を続ける第8巻。
前半に若干のコメディ要素はあるものの、情勢が一息つくことを許さない。そんな中でもちょっとした笑いを提供してくれるバルタザールに感謝。あんな境遇であんなに面白い人間に育ったのは奇跡だ。
本編の方は、初めて(多分)空戦なしで戦闘らしい戦闘も一度しかないというのに、誰も彼もが土壇場、正念場のオンパレード。単純な武力ではなく地味に確実に追い詰められている分、読んでいる側もじわじわ攻めらているようで、切なさ・悲しさ・苦しさが降り積もっていくような展開。しかもそれが、それが後半に行くにつれて加速度的に積っていくので読み進めるのが辛かった。これなら武力で圧倒される絶望感の方がまだ気が楽だ。
そして迎える一つの成就とその大きすぎる代償。
ああああああああーーー……
表紙と帯で大体予想がついてしまったので相当な覚悟をして読んだが、それでも叫ばずにはいられない。
責任など考えず逃げて欲しかった。最後に一度くらい我がままを言って欲しかった。どうしてこのシリーズの女性陣は、こうも自分を殺すキャラクターばかりなのか。泣きたくなる。
次巻完結。派手な空戦への駒は揃った。劇的な救出劇になる舞台も整った。全てが上手くいくことは有り得ないだろうけど、何卒笑顔のあるフィナーレを。