時代の要請

今回のライブドアニッポン放送の買収作戦は、当初あまり話題にはならなかった。多くの人は単にニッポン放送というラジオ局が買収の対象になったという印象を受けただけだった。

その後だんだんと周辺の事情についての情報が入ってくると、当初の印象とはまったく次元の違う大きな話であることに気づく。これはもともとニッポン放送とフジテレビの資本関係のネジレが起因していて、村上ファンドは以前からそのことへの取り組みをしていた。しかしライブドアという事業会社が買収するというのは、ファンドが株を所有するのとは本質的に異なる。ライブドアは実際にフジ産経グループ全体を視野に入れて事業展開をするという構想をいだいているからだ。そしてこの構想の実現のために、資本のネジレというテコを目一杯利かせ、さらに投資銀行リーマンブラザーズの力を借りて実行に移した(リーマンブラザーズは日露戦争の戦費を引き受けた由緒ある一流の投資銀行らしい)。

さてインターネットと既存のメディアとの融合は誰が見ても自然の流れだ。そして多くの人が自分の主導権のもとでこれを成し遂げたいと思っている。フジテレビの経営陣もインターネットとの融合は避けて通れないことは百も承知しているのだが、他の人がそれを主導するのはダメなのだ。彼らは自分でそれをやりたいのだ。

では誰が主導してインターネットと既存のメディアとの融合を果たすのが最も効率的で、社会の利益になり、うまくいくだろうか?今回の買収劇では各方面の人からいろいろな意見が出ている。そんな中で残念だったのは榊原さんや堀さん、財部さんなどの発言だ。彼らは皆優秀な人で尊敬もしていたが、今回の件について言えばどうやら彼らの理解を超えているようだ。敵対的買収と呼ばれるが、これはフジ産経ブループの現在の経営陣がそう呼ぶだけであって、社会的にみれば単に業界再編のひとつの形態に過ぎない。少なくともライブドア側に敵対的な意図はない。

スーツを着てネクタイをするのが礼儀だと言う人がいるが、その人は自分がなぜチョンマゲをしていないのかを考えたほうがいい。今回の件で時代の大きな潮目が変わりつつあることを、感じている人は多い。

がんばれ、ホリエモン! 時代はあなたを待っていた。