開業当初から、暖簾については四季折々の暖簾をかけようかと計画して、手始めは夏からのスタートだったから紺の麻暖簾で店を開けた。
追っかけ、足早に駆けつける秋に備えて掛け替えの「秋暖簾」を用意した。
幸いにも、親戚に機屋(はたやー織物屋)さんがあったので、秋と春用の暖簾をオーダーした。
秋は、夕焼けと真っ赤に染まる紅葉をイメージして茜色(紅色)に染めて貰った。
春用には新緑のイメージから若草色に決めた。
いくら親戚の織物屋さんだと申せど、されど機屋(はたや)さんだから、生地にしろ染めにしろ本格的な職人芸。
ちょっとばかり高価だったから、それなりの記憶が残っている。
今から思うと、暖簾にしては素材、染めの程度とも身分不相応(使った生地が暖簾には贅沢)だった感がある。
いずれにしろ、これまでの経過年数を考えれば安いもんで、今まで頑張ってお客様をお迎えしてくれたことを思うと打算は許されない。
昨日のブログでもちょっと触れたが、開業時の夏暖簾は紺麻の素材だった。信州は野沢温泉の趣味の小物店から二代目を探し求めた。
秋暖簾は、前述の親戚の機屋さんから求めた物で鮮やかな紅色に染め上げたものだった。
冬用の暖簾も野沢の趣味の店から,
柿渋で染め上げた趣たっぷりの暖色系の色(柿渋で染め上げた物)を選んだ。
春用も二代目、初代の若草色から濃緑色には変わったが、新緑をイメージしてグリーン色を維持してきた。
今回、ババが野沢温泉で求めた生地は秋用の黄色と、春用のグリーン色の二種類。
どちらも麻の素材、正直言って暖簾を作る生地の量からしては些か少なすぎると見た。
それもその筈、「お父さん、この色どう?」、買ってきて直ぐに聞いてきた。
「黄色かよ? それにに何だ?この半端なグリーンの生地は?」
なんでも、これだけの生地だけど当たり前に求めればビックリするほどの高価なんだとか。
黄色の生地と、半端なグリーンの生地をセットでまとめて買ったから安くなったとか。
なるほど、今までに経験してきた感触として安い買い物と直感したよ。
そうなんだよね〜、噸分に行って、気に入った色の生地が簡単に見つかれば、開業当初に特注でオーダーする必要なんかなかったんだよ。
随分と面倒くさい暖簾の物語。実は、もっと面倒くさいストーリーが始まりそうじゃ。
実を言うとね〜。秋用の暖簾は、これまでの15年間、開業当初から一度も替えてない一代物なんだね。
今回、初めて切り替えた。それも、茜色から黄色に変えたからビックリだ!
ところがだ! これまで使ってきた茜色の秋暖簾だが、当初作った生地が僅かながら残っていたらしい?(まあ、話は複雑となるんじゃよ)
それでね、ババは現有する生地を前に、どうしたら一番効率的でセンス良く作れるか思案したようなんじゃね。
手元に揃った生地は、黄色、グリーン、それに残っていた茜色の三色。
だが、当たり前に一枚の暖簾を作るに充分な生地の量は黄色のみ、後の二色はそれぞれが半端の量。
そこで、暖簾を作ってくれる分家のカカどんと製作協議。
出た結論は、組み合わせ戦法、実に面白い作戦だ!
2,3枚合わせの短冊を作り、なんと組み合わせてワンセットの暖簾として使う方法。
秋用の暖簾は黄色だけがワンセット、秋の落葉樹、主に銀杏の葉の紅葉、収獲の時期を迎えて黄金色に色付いてきた稲穂をイメージ。
やがて、山肌が紅葉で綺麗になると、暖簾も黄色と茜色の組み合わせでワンセット。
従って、秋暖簾には二種類の暖簾でお迎えする。
おまけ買いのグリーンの生地は、春用に使う。秋に使う黄色と組み合わせてのセットで、春の黄色はスイセンや菜の花、そこに新緑のグリーンが登場するってストーリー。
いやはや、物語は複雑になってきたよ。