小野俊介 サル的日記

いや、その、サル的なヒトだから・・・

サル年よ、さらば

業界の皆さん、薬価がますます頻回に引き下げられるようですね。 ご愁傷様。 メディアも含め大騒ぎしてるが、大騒ぎの理由が私にはまったく分かりません。

だってさ、業界の皆さんって、「お上 (他人) が薬価をつける」 という理念を受け入れているんだもん。 現在起きている動きは、どうみても起きて当然のこと。 異常なことではないし、大騒ぎすることが変だよ。 「お上 (つまり誰か他人) が薬価をつける」 ということは、つまり、

「誰か他人が、好きな時に、好きなように・好きなやり方で、好きな価格 (price-tag) をつける」

ということでしょ? 違うの?

だからこそ、あなた方の多くが崇拝しているアメリカ様の業界人たちは 「価格は企業 (つまり私) がつけるのだ」 と、理念レベルで決して譲らないのである。 あるいは、リベラル色の強い人たちは (少しでも完全市場に近い) 市場のシグナルに従うべきだ、と強く主張しているのである。 そりゃ各国の市場のいろんな事情に合わせて多少の政治的妥協はするに決まってるけど、その手の根本理念だけは譲ってはいけないことをよーく叩き込まれているからね。

「お上 (他人) が薬価をつける」 ことを最初から前提にしておきながら、「お上のやり方はけしからん」 「あの人 (他人) が考えていることは受け入れがたい」 って大騒ぎするのって、なんとも幼稚で、サル的。 たとえるとこんな感じだな。

最近の裏リスの記事にも大笑い。

今回、製薬企業に対して厳しい改定を強いた要因のひとつに、厚労省がメーカーを擁護しなかった点が挙げられる。 今、省内で重要事項の検討は、二川事務次官を含めた厚労5局長会議で進められているという。 実は会議でキャリア官僚たちは、製薬企業の 「長期収載の事業切り離し」 について 「怒っている」 そうだ。 理由は 「今までメーカーは 『長期収載品の売上原資を研究開発費に充て、新薬を開発してきた』 と説明してきたが、それは嘘だったのか」 というコトのよう。

皮肉が効いたこういう記事、好きである。 業界紙の記者さんは、本当に書きたいことは書かず、「裏を読め」 ってことなのね。 私はその辺の野生ザルだから、書きたいことをなんでも書くぞ。

一言で言って、バカらしい。 お金に使い道が書いてあるわけない じゃん。 社長の懐に入る金も、会社の金庫で眠ってる金も、投資家にばらまかれる金も、税金で財務省に引っこ抜かれるお金も、お金はお金。 一万円札に 「研究開発専用。 それも日本国内への投資に限る」 なんて earmark が付いているなんて信じているヤツが今時いるわけがない。

信じてるヤツが誰もいないのに、嘘も何もあったもんじゃない。 むろんお役人も、記者さんも、そこらあたりの構造を知らぬはずがない。 誰も信じてないタテマエを、誰も信じていない理屈で批判するお役人。 そして、信じる人が誰もいないその手の大本営発表をもっともらしく報じるメディア。 戦前の報道と瓜二つ (笑)。

怖いのは、「一万円札に 『研究開発専用。 それも日本国内への投資に限る」 と書いてある」 などと阿呆な理屈をポジショントークとして言い続けているうちに、本来は聡明で論理的だったはずのお役人・メディアがホントの阿呆になってしまうことである。 いや、もうすでになっているのかもしれん。 ほれ、あの戦争を引き起こした連中がそうだったでしょ?

あーあ。 くだらない。 こんな国だから安楽死コース一直線なのだ。 しかしまぁ、それもこれもニポン人自身が選んでいる道だからな、覚悟して受け入れるがよかろう。 ニポン人現役 (中年以上) 世代の製薬業界の仕事 (産官学・メディアの人たちのメシの食い扶持) はまだ当面安泰だしね。(注 1) ツケは若手、あるいは次世代にまわすだけのこと。

(注 1) 安泰とはいかなくなってしまった一部の会社の方々は頑張って生き延びてください。

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というわけで、今年の記事はこれでおしまい。 今、大晦日の 23時 38分。 紅白歌合戦は出てる歌手の9割くらいを知らないのでつまらないから、部屋にこもってTBSラジオの宇多丸聴きながら、「ふぅ、今年も疲れたのぉ」 と一息ついているところである。

と一息ついていると、大晦日のこんな時間に 「研究プログレスレポート」 を送ってくる研究室の学生もいる。 そうか、こんな時にもコツコツと勉強している若者もいるのだ。 えらい。 ニポンも捨てたもんではないかもしれぬ。 20年後、30年後のことは君たちに任せたよ。 僕らの世代は、もう、ダメだ。

では皆さん、よいお年をお迎えください。 来年も、サル的日記、応援よろしくね。