ゲーム概要と原作のエルリックサーガ

bqsfgame2005-10-14

マイケル・ムアコックの「エルリックサーガ」のボードゲーム。AHから出ていたものをHJが1986年に日本語版で発売した。
原作はムアコックのいわゆるエターナルチャンピオン群像の最初のシリーズ。異色のヒロイックファンタジーとして非常に名高い。実際には断続的に書かれた短編長編の集合体だが、後年、時代順に再編された。その後、さらに追加のエピソードが未だに書かれており完全に整理完結されてはいない模様。
念のため復習すると、龍の血を引くメルニボネ人たちの帝国は衰退しており種としても滅びつつある。その末裔がエルリックで、病弱なアルビノであり、従兄弟のサイモリルに恋しておりその兄のイイルクーンと確執がある。時代は新興勢力の人間の新王国へと流れつつあり、エルリックはイイルクーンとの確執から王座を失い、王座とサイモリルを取り戻すために人間たちを手引きして自分の都へと引き入れる。彼が力を得るために用いた魔剣ストームブリンガーは、その代償として彼の大事な者たちの命を奪っていく。シリーズは他のエターナルチャンピオンとも交錯し、クライマックスの「ストームブリンガー」では法と混沌の世界のバランスが崩れ、この世の滅びを迎えていく。

基本的なゲームシステム

ゲームはエリア方式のマルチプレイヤーズゲーム。シナリオ形式になっていて、1人用の「帝国の起源」、2人用の「帝国の衰退」、「帝国の後継者」、3人用の「新王国の抗争」はさらに各王国が成熟している帝国版と未熟な王国版がある、そして最後に4人用の「帝国の破滅」があり、さらに好きなようにシナリオを自作して良いということになっている。
ボードは物語に出てくる様々な国や勢力に野暮ったい原色でカラフルに色分けされている。ユニットも同様。ボードの中央にはメルニボネがあり、一部のシナリオを除きノンプレイヤーの大勢力として全員の勝利目標として威風堂々と鎮座している。
シナリオにもよるが、新王国と呼ばれる人間の一王国からプレイを開始し、他の勢力を召還したり征服したりして勢力を拡張する。そして、メルニボネを倒せるだけの力を得たら、盤上を流浪するエルリックを同行してメルニボネに手引きしてもらって攻め込むのである。一旦、メルニボネが人間の手に落ちると、今度はメルニボネの落人の誰によってでも手引きしてもらえるようになるので、相次いで挑戦者がやってくる。ゲーム終了時にメルニボネを持っていれば勝ちである。

宇宙の天秤:コスミックバランス

エルリックサーガの重要な世界観として、法と混沌の対立がある。魔法はこの2つと中立の3つの体系に分かれており、一方の魔法を用いると世界のバランスがそちらへ傾斜する。面白いのは傾斜した側の魔法は強力になるため、往々にして使い続けるとメリットがあるのだがますます世界が傾斜してしまう。一定以上に崩れると世界は崩壊してしまい、通常の勝利条件ではなく崩壊した側の勢力としての強さで勝敗が決されることになる。
崩壊までの猶予に反対側の魔法や中立魔法で対抗することで天秤を修復することも可能ではある。
[つづく]