ペンギンのいる風景・プンタトンボ(パタゴニアその⑥)


パタゴニア観光もいよいよ終盤。
あ、今さらだけど、一応断っておくと、いわゆる「パタゴニア」として良く知られている地域は、今回私たちが中心的に訪れているバルデス半島というより、氷河のカラファテ近辺のかなり南(地図で言うと下)のほうのアルゼンチン・チリを指すことが多い。
だけど地理的には、ここバルデス半島パタゴニアというエリアに含まれている。
だからまぁ、パタゴニア観光と言っても間違いではないわね。
それだけパタゴニアって一口で言ってもかなり広いということ…。パタゴニアのどこに行くのか、これから目指す人は、かなり吟味しないと…とてもじゃないけど、パタゴニア全部を見て回るには、余裕で1ヶ月くらいはかかっちゃいそうですよ。


さて今日の目的地は、マゼランペンギンの世界最大ともいえる生息地がある岬、プンタ・トンボ。
ペンギンはホント可愛いからねぇ、今日の日をとても楽しみにしていた私たち。
しかし、今日もまた遠い道のりだよ…。ホテルを7時半に出発し(早いーっ)、またしても大型バスに揺られ、180キロ先を目指す。
途中、トレレウ空港に立ち寄り(お客さんを一組、ピックアップしたらしい)、ひたすらまた大平原の中を走る走る走る…。
それにしても長い長い直線道路だ。前をどこまで見てもまっすぐに続く道。
これには我が父がいたく感動していた。北海道にもまっすぐなだだっ広い道はあるけれど、その比ではない。
日本の大自然の中に生きる人が、さらに感動してしまうような、想像を絶する大自然。それがパタゴニア
バスの中間あたりに座っていたので、残念ながらまっすぐ道路の写真は撮っておりませぬ。


ひたすら長い道の途中には、ほとんど街はない。
あるとしたら、ホテルがあるプエルト・マドリンという港町か、空港のあるトレレウの町。
これらの町は今、だんだん人口が増えていて、それに伴ってゴミ問題が深刻化しているんだそうだ。
そういえば、町の近くの大平原には、まるで白い花が咲いているの?と疑いたくなるような、白いものがふわふわと…
それはなんと、スーパーの袋。あの白いプラスチック袋が、パタゴニアを吹き抜ける風に飛ばされて、町から郊外の大平原まで飛んできちゃうんだそうだ。
思わず証拠写真を撮ってみた。真っ白い花のようでしょ?
ガイドさんによると、もともとパタゴニアの住民には、ゴミを減らすとかリサイクルをするとかいう意識は薄いらしい。
そりゃそうだよなぁ、これだけ土地があれば、ゴミをいくら発生させたって平気!という気持ちになっても不思議じゃないよね。
(現に、北海道の田舎も、つい最近までゴミ問題にかーなーり疎かった面があるよね)
しかし最近は、時代の流れも手伝って、住民も自治体も、ずいぶんゴミ問題を考えるようになったんだとか。
うーん、このガイドさん、観光だけじゃなく結構いろんな興味深い話題を取り上げてくれるなぁ。


さてさて、約2時間近く走っただろうか。ようやくペンギン岬のプンタ・トンボに到着した頃は私たち結構ヘロヘロ…
正直、もうバスはたくさん!!と思い始めていた。
だけど、すぐ足元をヨチヨチ横断する生のペンギンの姿を見ると!そんな疲れも吹っ飛ぶわ〜


まぁ、いるわいるわ、こんなにいていいの?野生のペンギンさんよ?! と、思わず声をかけたくなるくらい、あちこちにいるよ。
ゆっくりと海に向かって歩む者、穴の中に鎮座している者、生みたてのたまごを温めている者…
これが野生の姿なのですね。
今はちょうど産卵を終えて、今にもヒナがかえらんとしている時期。だからそれぞれの巣(穴ぼこ)には母さんペンギンたちがどっしり座り、見えないように大切に卵を抱いているのだ。

中に一羽、黒いふわふわのヒナを2匹抱えている母さんペンギンがいた。
脅かさないように、そーっとしゃがみこんで、その親子のやりとりを眺めた。
口移しでなにやらエサをヒナに与えたりしているよ。か、かわいい…かわいすぎる…。
黒っぽいのでよく写真に写らなかったけど、こんな様子。

このペンギン岬は、かなり広い範囲にペンギンが生息しているらしい。実に何万もの数のペンギンたちが、実際に暮らしているんだ。
観察のための遊歩道も結構広い範囲にわたっている。海の近くを眺めるスポット、巣のすぐ近くを歩けるスポット、他の動物たちも出現する草原スポットなどなど、なかなか見どころは多い。


そして、ペンギンたちの姿って、見てて全然飽きないんだよね。
青い空に黄緑色の草原、そこにペンギンがたたずむ風景のなんて美しいこと!
いつまでもいつまでも、ボーっと眺めていたかった。こんな景色、他のどこで見られるだろうか。


ちなみにここに生息するマゼランペンギンという種類は、氷の上を歩いたことはないし、雪を見たこともない種類だそう。
9月下旬にこの岬にやってきて産卵し、子ペンギンが生まれて海へ旅立つのが3月ごろだそう。
したがって3月以降はペンギンたち、海の中で過ごすわけで(ブラジルのほうまで行くらしい)、3月〜9月にここに来てもペンギンにはほとんど会えないんだそう。
先日見たクジラも、年中いるわけではないので、やはりシーズンを確認してから旅行計画を立てることが大事ですな。
なお地球の歩き方152ページの「バルデス半島動物観察カレンダー」によると(いきなり細かい説明だな)、クジラ・シャチ・ペンギン・ゾウアザラシ・オタリアのすべてを見られるのが10月・11月・12月なんだそう。
だけど私たちはシャチは見なかったなぁ。


すっかり愛らしいペンギンに癒され、子ども達もペンギン歩きの真似をして歩くなど、それぞれ思い思いに岬を満喫した。
そしてまたお昼ごろバスに戻り、また長い長い道のりを移動した。
ランチはまたバスの中でサンドイッチと水である…。
次の目的地は、イギリス(ウェールズ)からの移民が作った町、ガイマンである。

英国の香り漂う街、ガイマン…悲しき現金不足!!(パタゴニアその⑦)

かれこれ1時間ちょっと走って到着したガイマンの町は、これまでの町とは全く趣の違う、とっても綺麗な町だった。
きちんと手入れされた、花でいっぱいの庭。バラがみずみずしく輝き、新緑がまぶしい。
家のつくりも、白いレンガでとってもおしゃれ。今もこの町の人たちは、ウェールズの文化を大切に守ろうとしているんだそうだ。

イギリス式のティータイムを体験できるティーハウスも散策の範囲内にいくつも見つけることができる。
これがまた素敵で、ここがアルゼンチンの片田舎とは思えない雰囲気なのだ。
ぜひここでおしゃれに紅茶を…と、思い切ってとあるティーハウスに入ったら、なんと支払いは現金のみだと!!
実はこの時点で、私たちの所持金は1000円程度。ブラジルと同様、どこでもクレジットカードが使えるだろうと思って、アルゼンチンの通貨をほとんど持っていなかったのだ。
だましだまし使ってきて何とかなったけど、ここではさすがに足りなくなってしまっていた。ショック…。
父が持ってきたUSドルももはや底をつき、ブラジル通貨しか持ってないよ〜。
泣く泣くティーハウスを後にした。あああ、お金がないってみじめだねぇ。(思わず、卒業旅行のイタリアで同様に現金不足でひもじい思いをしたことが頭をよぎったよ)



その後すぐ、銀行のATMみたいなのを見つけ、そういえばVISAカードでお金を引き出せるんじゃ??とふと思い出す。
そしてスペイン語の表記と格闘しつつ、なんとかアルゼンチン通貨を引き出すことに成功!!
なんだ…もっと早く気付いていれば…。
時すでに遅し、自由時間が間もなく終わり、バスへの集合時間が迫っていたのだった。あーあ。
(VISAで現地通貨を引き出せるATMは、緑の丸にLinkの文字が目印)


バスに戻り、今度はいよいよホテルに帰れるのね?と思ったら、もう一箇所行くと言う。
トレレウ空港で、またお客さんをピックアップする必要があるんだと。
まぁ、これだけ広いところだから、バスが通るタイミングを狙って、乗せられる客は乗せていかないとねぇ。
で、バスが空港を往復する間、私たちはトレレウの街にある恐竜博物館を見学した。
地球の歩き方によると、古生物博物館、というらしい。
ここは全くマークしてなかったところなので、事前研究はゼロだったんだけど、なかなか素晴らしい施設だった。
巨大な恐竜の化石(レプリカらしい)が、のっしのっしと何体も展示されている。結構、圧巻である。


そもそもパタゴニアはその昔、恐竜がたくさん住んでいたそうだ。パタゴニアというか、大陸がずっとつながっていた時代ね。
100万年以上も前の話。
それにしても、こんなに大きい生物が存在していたなんて。このパタゴニアの地を歩いていたなんて。そこに今、自分がいるなんて。
かなり想像を絶する世界だ。アルゼンチンって、何て奥が深いところなんだ。
ところで男の子は恐竜が好きだよね、コイも喜んで見ていたよ。

こんなふうに、今日も一日盛りだくさんのバスツアー。さすがに疲れるなぁ。
でも、ホテルに着いても夜は長い…。この町も遅くまで明るい。
プエルト・マドリンの町を少し歩いて、狭い繁華街でおみやげ物や洋服などを買い、パタゴニア最後のディナーを近くのレストランでとった。
ここはホテルのフロントに聞いたお店。庶民的で味もなかなかだった。
それにしても賑わってるなぁ、どこもかしこも。さすが、観光シーズンである。(って、何度も使ったこのフレーズ…)
みんな、短い夏のパタゴニアを狙って、世界中から押し寄せてきているんだな。