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ウォッチメン ブルーレイ スペシャル・コレクターズ・エディション [Blu-ray]

ウォッチメン ブルーレイ スペシャル・コレクターズ・エディション [Blu-ray]



1985年、ニューヨークで一人の男が死んだ。彼は「ウォッチメン」と呼ばれる世の風紀を取り締まるコスチュームヒーロー集団の一員のコメディアンことエドワード・ブレイク(ジェフリー・ディーン・モーガン)。
1977年に彼らの行動を規制する法律が作られ、多くの者が引退してからもアメリカ政府の下で働いていたのだが、何者かが彼の住むニューヨークの高層マンションを襲い、彼を窓から突き落としたのだ。
そして元仲間のロールシャッハジャッキー・アール・ヘイリー)は、ヒーローチームのメンバーが次々と変死をとげている事実を重大な脅威と感じ、単独で調査を開始する…


観賞日

2009年3月29日  

【83点】






「異質」、そう表現するのがふさわしい映画。






映像化不可能といわれたアメコミが映画化された。

アメコミは基本的にあまりそういった方面には評価されていないにも関わらず、

実は今作のアメコミは、本国で文学作品並みの評価を受けている。

そこからもこの作品が異質であるとわかるだろう。














最も異質なのは映像。

仕掛けがありとあらゆるところに張り巡らされていて、
恐らく何回見ても発見があるだろう。
(新聞記事などとにかく細かいところにまで)



さらに監督が『300』のザック・シュナイダーなので、
映像美、カメラワークは当然素晴らしい。

というかそこだけでも見る価値がある。



特に「夜の街」の背景は興味深い。

作品全体のイメージを代表するのと同時に、
冷戦下の時代背景をも反映しているといえるような、暗さと灰色さは絶妙。













また、物語のエッセンスとしてはダークナイトに近いものがある。

冷戦下の核戦争の危機という状況に、
もしもリアリティのあるヒーロー達がいたらという設定で、

正義の意味、悪の意味、命の意味を考えさせられる作品に仕上がっている。

正義は絶対のものなのだろうか。と問われているようだ。



また、この作品に出てくるヒーロー達は全員がXメンなどの様に超能力を持っている訳ではありません…(勿論身体能力は凄いっすけど)
スゴいのは1人だけという。→そいつが大分ヤバイのは内緒

コスチュームが、他のアメコミのオマージュだったりするのもニクい演出だ。
バットマンだったり、キャプテンアメリカだったり、ジャイアントマンだったり。



まあコスの話は置いておいて、

やはり人間であるヒーローが、他のアメコミより人間的に揺れる。
心の弱さ、妄想に支配されそうになる人間臭さがより物語を複雑に、面白くさせる。

ただし、相当複雑。












特に、冒頭で述べたロールシャッハはヤバイ。

中身は、目からビームを出したり、不死身だったりしない普通の人間なわけだが、
思想だったりがヤバイ。

自警活動が禁止されているにもかかわらず、単独で犯罪者に暴力をふるったり、
誇大妄想が病的に激しかったりと、アブない。


だが、
全てを皮肉り、ブラックユーモアにしてしまうような思想が観てる側はとんでもなく面白い。
トレンチコートに、インク染みのようなものが蠢くマスクというとりあわせがとんでもなくカッコよく思わせる。

インク染みが蠢くの様子が、非常に有機的で不気味でもあるが、
彼の心情を表しているようでなんだか楽しい。


そう、楽しい。
作中でハードボイルドな探偵役を担っている彼は正しく、
この世界観を我々に楽しく伝えているのだろう。

内容そのものは、いわゆる楽観的楽しさとは程遠いわけだが。












問題は内容が盛り沢山過ぎた事…

だから長くなったんじゃないかなと思いますが。

3時間だと集中力切れちゃう人も出るだろうという感じ。
かくいう私も若干ケツが痛くなっていた。


しかし、従来のアメコミとは一線を画する映画であり、
さらには今までの色々な映画とも一線を画すため、
観ておいて損はない映画だ。

特に、浦沢直樹の「ビリーバット」のように、
歴史的事実の裏にはヒーロー達がいた(ビリーバットだと、コウモリだけど)というところもあるので、そういったモノが好きな方にも注目してもらいたい。