劇場版 鋼の錬金術師 嘆きの丘(ミロス)の聖なる星



セントラルの中央刑務所から1人の囚人が脱獄をする。現場に駆けつけた”鋼の錬金術師エドワード・エルリック、そして鎧姿の弟アルフォンス・エルリック
だが、脱獄した男は未知の錬金術を使用し逃走する。

自分達の身体を元に戻す手がかりを探すエドたちは未知の錬金術に興味を持ち、男を追うことを決意する。だがその旅は乗車した列車から波乱に満ちた幕開けになるのだった。

国の西端”テーブルシティ”を舞台とした、語られなかった物語の幕が開く…




観賞日

2011年7月2日





【75点】







5000万部売り上げた怪物級コミック『鋼の錬金術師』の劇場版第二弾は、完全オリジナルストーリー、そして外伝的な扱いでの作品となった。






本筋から外れてしまう作品だということで、正直期待していなかった。
(そもそもハガレンが超好きだから)
しかし蓋を開けてみれば、しっかりとした作品に仕上がっていて納得させられた。



比較対象として適切かはわからないが狙いとして、いわゆる『ルパン3世 カリオストロの城』のように、劇場の尺に対応し、そのなかでしっかりと終わらせられる”箱”ものてきな世界観を構成したかったのではないかということ。





その証拠として、かなり設定が緻密だったことが挙げられる。
どうせ単純な二項対立で終わらせる気なのだろうと高を括っていたのだが、元々は古くからの民がいた国境の街という設定や人々の思惑を感じ取れる街の構造…


そういった要素が絡み合うことで物語に深みを与えていた。
これは設定勝ちか。





原作ファンとしては、今まで原作でノータッチだった”西側”の話に触れているというところでもワクワクする。
むしろ今までノータッチだったことが勿体無いくらいの出来。



















今作のポイントとしては、次のことも挙げられる。


序盤の列車のシークエンスはまさしく映画だから出来る尺のアクションだ。
かなり長めで、スケールも大きい。



昔ながらのアクション映画にアニメならではの無茶さを足した点は必見。
この映画の見所のひとつでもあるわけだが、とにかくジェットコースターのように怒涛の展開。
一挙に様々な勢力が出現し、頭を整理する余裕も無く物語は展開する。




もちろんしっかりと後々に説明があるので、ここは素直に目の前で展開される凄まじさに呆然としていよう。



















ただ、このシークエンスには従来からのファンにとっては難点もひとつ。


確かに元々エドは人並みはずれた運動神経と修羅場をくぐった経験からかなりの能力を持っているわけだが、明らかにこのシーンではありえなさすぎる。





列車上から吹っ飛ばされて、鉄骨を足場にしてまた戻るとかさすがに原作でも無理です。ゲーム版でさえもエドやアルの動きは制限され、大型の敵と戦う際はしっかりと間合いを取って戦わないと瞬殺されるほどだった。
敵に関してはありえない動きがあるほど面白いわけだが…エドにはそこを求めてはいない。

まあこれは劇場版。それは多めに見よう。















ただ、さらにこの作品がマイナスになってしまったのはマスタング大佐やウィンリィなどの原作キャラを出す必然性に欠けていた点。むしろ中途半端だったのでウィンリィは要らない。そのへんが明らかに力技だった。

















ハガレンの一貫したテーマでもある、”命”。この映画でも様々な扱い方がなされていて、これまでのハガレンとの関連性を想起させる。
原作の終盤と比べるといまだ精神的に成長しきっていないエルリック兄弟が垣間見える点で観ても面白いだろう。特に”命”に関する考え方は、まだ迷いが見える。


映画を観ていくと、
しかし、この物語も成長に関わっていたことが分かる。

自然と今までの旅の中でこういうこともあったんじゃないかな?と思わせる。
まさにスピンオフにふさわしい。













そうそう、劇場に行けばワンピースの映画のときみたいに書き下ろしマンガがもらえます。相変わらずサービス満点で、原作コミックス同様カバー裏までおまけがギッシリ。原作者の荒川先生のファンサービスが神すぎる。


サービスといえば、今回大佐のサービスシーンはなし。全国の腐女子は残念がるだろう。その代わり、外伝的作品でたびたび発揮されてきたアルの良い人スキルが十分に発揮されている(笑)









予告編はコチラから↓

http://www.youtube.com/watch?v=M1MECOw1H60