ツリー・オブ・ライフ

仕事に成功したジャック(ショーン・ペン)は中年期を送っていた。しかし、その心が晴れることが無かった。そんな1950年代の少年時代に思いを馳せる。
厳格な父(ブラッド・ピット)、優しい母(ジェシカ・チャスティン)、そして弟達・・・
ジャックはそのころ、絶対的な権力をふるう父親を憎んでいたのだった。


観賞日

2011年8月12日




【65点】









カンヌのパルムドール(最高の賞)を受賞した作品。




今作でメインキャストとされていたのは、
名優、ブラッドピットとショーン・ペン



その2人が父親と息子という関係性で出演するということは、
父と子に生じた確執を描き、その中でふたりが思い悩む名演をみせる・・・


はずだった。























あ、ありのままにおこったことを話すぜ・・・

オレが観ようとしていたモノは、予告編によれば父と子の確執を描いた物語だったはずだったんだ・・・


だが映画がはじまって10分くらいで、
そこにあったのはNHKとかBBCの「地球誕生の物語」ドキュメンタリー(説明なし)のような映像だったんだぜ・・・




























そう。この映画、2人目当てで観ると確実に肩透かしをくらいます。
予告編のクオリティというかノリを期待しても肩透かしを食らいます。





ブラッド・ピットはけっこう出演し、いい演技をするんですが、
ショーン・ペンなんてまるでチョイ役だよ。






ぶっちゃけショーン・ペン目当てで観にいった私は完全に「は?」みたいな状況。

しかも地球誕生・説明なしの映像。
そしてやたら長い。

今の時代、いくらでもCGでつくれるような映像をつぎはぎに組み合わせたようにひたすら流す。そして説明が無い。そして長い。(大事なことなので2回言いました)

もううんざりだ。




























そう思ったところでようやく映画は、ジャックの少年時代へと移っていく。
ここからが今作の本領発揮。

監督が毎朝、脚本を少しだけ作ったという手法や子供達が素人で兄弟と言う設定意外、ストーリーすら聞かされていないことからもわかるように、監督は限りなく"自然"を撮ろうとしたようだ。

その効果は抜群。「あーあるある」みたいな少年時代が次々と画面に現れていく。
ひたすらにリアルで、生々しい。

ときたま訳のわからない映像が入るが。(笑)







いわゆる、ありそうな厳格な父、優しき母を描くわけだが、その変哲も無い物語が大きな生命の、地球の流れの中にあるという事実をこの映画はあぶりだそうとしているのかもしれない。

なんだかハガレンチック(「一は全、全は一」)な話になってきたが。
そういうことだろう。


この映画の肝は、どうやらミクロとマクロの物語の交錯するところにあるに違いない。



























ここからネタバレになるが、多分みても大丈夫。
なぜなら全く意味が分からないから。




最後の終わり方はいただけない。


あんまり言及している人が、パンフレット内でもネット上でも少ないのでなんとも言いがたいところだが、ジャックが乗るエレベーターで鳴っている謎の音やひたすら謎のまま進む世界など正直ついていけない。

中盤まではだいたいこんな感じかな…と思えていたのに。
どうしてこうなった。


こんなになるならむしろ中盤の過去の邂逅で終わらせてほしかったくらいだ。






























生命が続いていく感覚。全てが繋がっている。
繰り返される光や火にフォーカスしたカットや滝、地球のカット。




地球の記憶の様でもあるそれは、
ハガレンで言う「真理の扉」を開けたときにみる"真理"そのものでもある。

恐らくハガレンエドたちがみたのは、この物語をとんでもない速さで繰り返されるようなものだろう。

その点においては、普遍性の感覚を描いた点で評価があったのも頷けなくは無い。
だが私には合わない。

あまりにも感覚的過ぎる。

























宗教観が強いのもわかりにくい要因なのかもしれない。


主への問いかけがあらゆる場面でなされる。それもわりと突然に。
実際、普通の台詞・会話よりも問いかけの方が意味をもってすらいるわけだ。




普通の会話とかが後々伏線になるのかと思ったが、そんなことも無かったぜ。

会話には会話以上の意味も、以下の意味も無いらしい。

そしてそれは物語にもいえて、ストーリーにすらあんまり意味は無いようだ。







さらに宗教的に思えたのは、カメラワークもそう。
下から上へ。とりわけ光へとむかうカメラワークが多い。
神への懇願のように。

さらに木々や火山などへのフォーカスは、活動する生命に対してのものなのだろう。
とりわけ木は、さすがタイトルについているだけあって、よく出てくるし、割と物語でも重要なシーンで使用される。



そういえばハガレンの真理の扉も"木"をイメージしていたような。



























かの有名な眼球のシーンがある
「アンダルシアの犬」並みの分かりにくさをともなった今作。




正直最初の20分は、30点とか40点くらいのもん。
だったらそういう映画観るし。「ライフ」観ますよ。

だが、進むにつれてなんとなくわかってくる。これはあんまり理解しすぎてはいけないと。

常に点数が変動し続ける、異色過ぎる「芸術」作。
どうやら芸術とは、私にとってわからないものらしい。









哲学肌の、芸術派のギャンブラーの方にオススメしたい作品。絶対、観れるか観れないか白黒ハッキリついてしまうからだ。

私からのアドバイスは、覚悟を持って、ただ「考えるな、感じろ」ということだけだ。