麒麟の翼〜劇場版・新参者〜


東京・日本橋麒麟像の下で、青柳武明(中井貴一)という中年男性が殺害された。
彼はナイフで刺された状況ながらも8分間も歩き、この像のもとまで辿り着いたのだ。

同日、八島(三浦貴大)は不審な動きをしており、逃走している最中に車に轢かれて意識不明になっていた。
彼の所持品には青柳のバックがああり、容疑者として捜査が進む。
しかし八島の恋人、中原(新垣結衣)は殺人をするような人間ではないと悩む。
そしてまた青柳の家族も、死の前に青柳が日本橋でしていた行動の意味がわからないでいた。

日本橋署の刑事・加賀恭一郎(阿部寛)と加賀の従弟の捜査一課の松宮(溝端淳平)が捜査にあたることになる…

観賞日

2012年2月2日






【75点】








今作はTVドラマ『新参者』シリーズの最新作。
原作は、いまや映像化といえばこの人と言える、東野圭吾


東野圭吾といえば、『秘密』『さまよう刃』や『白夜行』、『ガリレオ』シリーズなどが有名だが、
人間の心の内側に迫っているような緊迫した作品が多く、
”泣けるミステリー”として作品の鑑賞後に心温まるのはこの『新参者』シリーズの特徴だといえるだろう。



もちろん、今回の『麒麟の翼』も”心温まる”点がクローズアップされる。
事件が紐解かれていくうちにこの”心温まる”点が露わになっていくのがシリーズの本懐だけに、そこに期待がかかっていた。

結果として、”心温まる”安心感は十分にあった。



















ミステリーということもあり細かく話すと核心に触れてしまうので、ここではおおまかにしか書かないが、
ストーリーの一貫性はよく見えた。

ドラマの映画化で一番怖いのは、ただ単にスペシャル感を出そうと雑多な内容になること。(『踊る大捜査線3』がまさしくそれだった)
しかし、今作はストーリーラインを原作の小説一本に絞っているのでブレることはない。




メインテーマは、大切な人との絆。親子や愛する人などなど…
何重にも絡まっている謎がだんだんとほどけていくうちに、大切な人の知らなかった部分が見えてくる。

その紐解き方が絶妙で、真実にグッと近づいたかな?と思うと少し違っていたり…
2時間の上映時間ながらも中々に焦らしてくれる。
こっからまだ展開すんのかよ!?っていうくらいで、こちらをグイグイ謎へと引っ張っていく。



被害者の関係だけではなく、加賀本人の人間関係も関わっているというのも多層的で面白い。
というわけで個人的には、『新参者』シリーズの中では間違いなく最高傑作。
























ただTVドラマのような場面転換は少し違和感を感じたところ。
容疑者Xの献身』では全くその違和感を感じなかっただけに残念。


あとは、肝心の殺人動機が若干薄いかな…と。
今までの東野圭吾作品だともっと動機がわかるものだっただけに今回は少し肩すかし。

しかし今作のメインは殺人自体ではなく、あくまで絆の部分にあるからそこをとやかく言うのも少々ナンセンスかもしれない。










今までのTVシリーズのキャラ(雑誌記者役の黒木メイサ、看護師役の田中麗奈)が出てくるのは嬉しいところだが、説明が無さすぎて『新参者』シリーズをこの映画で初めて観る人にはわかりにくいのではないか?
(かくいう私も『赤い指』をしっかり観ていたわけではないので、田中麗奈が演じる看護師がよくわかってなかった)

また比較対象としてあげるが、『容疑者Xの献身』では初見では何ら問題ないほど1個体の作品として完成されていた。

一方こちらは、あくまでもTVシリーズからの地続き。今後も続いていくのは間違いないと思いますが…いやむしろ続けて欲しい。
でも映画なら映画なりに、1つのものとして完成させてほしかったかも。




















主役の加賀恭一郎はTVドラマ時から好評だった阿部寛
その演技は健在で、観ていて飽きない演技はまさにこの人だからこそできる芸当。


死んだ青柳役の中井貴一も、基本的には回想のみの出演ながらも凛とした佇まいで画面を引き締めてくれた。
というかむしろ今回の主役は中井貴一

容疑者Xの献身』も主役はガリレオ福山雅治)ではなく、堤真一だっただけに、
今作も加賀恭一郎シリーズだがその中での主役はあくまでの事件の当事者(被害者)なのだろう。



















映画のテーマとなる日本橋にある麒麟像。
何度も何度も何度も映されるわけだが、そのたびに違った意味を持ってスクリーンに現れるのが面白い。

麒麟像にまつわるこの話の結末を知った時に、
とりあえず日本橋麒麟像のところへ行ってみたくなる映画。







予告編はコチラ↓
http://www.youtube.com/watch?v=JqGYA-Zw-E8