パステルカラーの恋


中森明菜の「スローモーション」を初めて聴いたとき、
ふと小川知子の「初恋の人」が頭を過(よ)ぎった。



     麦わら帽子のような 匂いをさせて

     私を海辺へつれて 走ったひとよ

     光の中をもつれるように 

     はずんだ胸は熱かったわね

     懐かしがっても遠い 夢の人なの


                 『初恋の人』


有馬三恵子作詞の「初恋の人」
小川知子が「夜のヒットスタジオ」で亡き恋人を思い、号泣した歌。
心動かされた場面だった。


「麦わら帽子のような匂いをさせて」
というフレーズが印象深い。



     砂の上刻むステップ ほんのひとり遊び

     振り向くと遠く人影 渚を駆けて来る

     ふいに背筋を抜けて 恋の予感甘く走った


                  『スローモーション』



渚で、波と戯れる少女。
遠い人影に恋の予感を感じる。
来生えつこの詞は、「ステップ」「駆けて来る」「恋の予感」
そんな言葉に、これからの恋のエチュードを感じる。
来生えつこは、自然に彼女の詞の世界へと連れて行く。


「初恋の人」も「スローモーション」も海辺が舞台になり、
初恋がパステルカラーのように描かれている。