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11年08月18日

[]ミハルスとは一体なんなのか ミハルスとは一体なんなのかを含むブックマーク ミハルスとは一体なんなのかのブックマークコメント

 小学校で教材としてカスタネットをもらった人は多いと思います。赤と青の色分けで、紐がゴムになっているやつです。わたしの子供の頃は「カスタネット」と呼んでいました。

 ところがですね、以下の質問によると、あの赤と青の色分けでゴムがついているアレを「ミハルス」と言うらしいんですよね。千葉みはる(男性です)さんという、音楽教育の偉い人が開発して、自分の名前にちなんで命名したそうです。

なぜ「ミハルス」が青と赤に塗色されたのかについて調べています… - 人力検索はてな

 正直言うと、ミハルスなんて呼び方は初めてききました。今までカスタネットとしか呼んでいなかったので、へぇって感じです。

 そこで、質問にもある赤と青の色分けも含めて興味をもったので、国会図書館に調べものに行きました。読んできたのは以下の本です。


>『ミハルス教本―拍ち方と踊り方 千葉みはる創案』昭和13年版と、1949年

上田友亀 著『音楽教育講座 第3巻・簡易楽器の作り方と指導法』1952年


 そして、驚くべき事がわかったのですが、ミハルスは、わたしたちが知ってるようなゴムでしばってあるカスタネットとはぜんぜん違うものですよ?

f:id:chinjuh:20110818221247j:image

 千葉みはる・上田友亀 両先生の本にでてくるのは、上の図のようなものです。木切れを二枚、マドレーヌみたいな形に切り出して、内側にくぼみをつけます。これを「蝶番で」くっつけて、ぱくぱくするようにします。どっちかの木切れの先に鋲(びょう)を打って、打ち合わせた時にカチカチ鳴るようにします。上と下の木に、ゴムとかリボンとかで、指をはめる部分を作ります。ここに指をはめて、片手でぱくぱくさせると、音がなります。

 カスタネットをもとにして考案したのは確かなんですが、蝶番部分にゴムだのバネだのは使っていないので、世間で言ってるように、「ミハルスは通常口を開いている状態であるため、ただ閉じるだけで音が鳴り、勝手にまた開く(ウィキペディア)」なんてことはまったくありません。木切れを結んでいるのはただの蝶番(ちょうつがい・ちょうばん)です。両先生の本に、ほとんど同じ絵が書いてありました。指をはめる部分の形状が少し違うくらいです。


 ミハルスは、ほんとにわたしたちが知ってる楽器ですか?

 全然違うんじゃないですか?


 上の図のようなミハルスを、千葉みはる先生が考案したことは間違いないようです。先生自身が書いた『ミハルス教本』の昭和13年(1938年)版と、1949年版を両方とも確認しましたが、どっちもミハルスの形状についてはまったく同じことが書いてあり、1949年の段階では改良されたなんてこともなさそうです。みはる先生の本には色についてはなんの記述もありません。

 上田友亀さんの本は、そういった楽器を自作するための本なので、塗装についても言及されているのですが、「墨で黒く塗ってもいいが、茶粉(ちゃこ)を塗ってもいい」という意味のことが書いてあるだけで、赤と青に塗り分けるようなアイデアはまったく書かれていませんでした。

 今のところ、わたしの考えででは、現代の子供たちが使っている赤と青に塗り分けられたカスタネット状の楽器は、ミハルスとはまったく別のものだということです。


 ここから先は想像ですが、上田友亀さんが、最初は本当に千葉みはる先生ミハルスを作っていたんじゃないでしょうか。後に今わたしたちが知っているような、ゴムで結ぶタイプのものを考案して売り出すとそっちが主流になってしまったのかもしれません。同じ人が売っているので混同されたか、ミハルスの改良版としてゴムで結ぶタイプのものを作ったか、どっちかの理由で呼び名が混乱しているのではないかと思います。

 しかも、その混乱は少なくとも1952年より後に発生したものだと考えます。上田友亀さんの『簡易楽器の作り方と指導法』には、スペイン式カスタネットや、棒の先についているカスタネットについても説明がありますが、ゴムで結んで口があいているのがデフォルトになるような工夫は、この本にはまだ載っていないからです。

 裏をとるなら上田友亀さんご本人に聞くしかないですね。赤と青に塗り分けるのを考えたのも、上田さんっぽい気がします。


[追記]この件に関してはコメント欄も読んでください

 プラス白桜社さんという楽器を作っている会社の方が、カスタネットを赤と青に塗り分けたのはうちです、と教えてくださいました。上記の上田友亀さんとは関係がないようです。# コメント欄にて「上田さんのご子息が友亀さんが発明したと証言してる」という情報をいただきました。とにかくコメント欄にも目を通してください。

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# プラス白桜社さんによると、カスタネットは青を上にして叩くのが正しいそうです(コメント欄をご覧ください)。下の広告ははてなスポンサーでも島村楽器へのリンクです。さすが島村楽器さん、ちゃんと青を上にした画像じゃないですか。

ululunululun 2011/08/19 01:32 わざわざ調べて頂いてありがとうございます。

プラス白桜社プラス白桜社 2012/03/26 14:43 はじめまして、興味深いお話ですね。
実は、このイラストのミハルスをもとにデフォルトで口が開いた状態となるよう、合わせに確度をつけ、ゴムひもを用いたものをプラス白桜社で作り始めたと聞いています。
ちなみに作り始めたのは私の祖父ですが、今はもう亡くなっているので、聞いた話の範囲を出るものではございませんが。ちなみに赤と青の塗り分けも祖父が考えたと聞いています。(私が子供のころは、輸出用は黒と黄色や黒と白などがありました。現在は中のシールのみが違います。)
勝手ながらカスタネットのことなので書き込みさせていただきました。

chinjuhchinjuh 2012/03/26 17:21 プラス白桜社さん、こんにちは!
なんと、ゴムをつけて口があくようにしたのは御社が最初なのですね!!
貴重なお話をありがとうございます。

ところで、なぜカスタネットを赤と青に塗り分けたのかご存知ないでしょうか。

2007年10月22日の朝日新聞29ページ(生活版)に
>ケンカすることなく男女どちらにも行き渡るようにする工夫
>子供たちに指導する時に分かりやすい色だから

とあるそうですが、やはりそうなのですか?



って、そうか、プラス白桜社さんははてなのアカウント漏ってないからidコールも届かないんだ。
しばらく待ってお返事がないようなら会社のアドレスにメールしちゃおうかな?

chinjuhchinjuh 2012/04/19 10:28 クウネルの2012年5月1日号にプラス白桜社さんの記事が掲載されていて、
そうだメールしなきゃって思い出したんですが、
今調べたら公式サイトがないんですね><
プラス白桜社さんのサイトだと思ったのは東京楽器製造協会のでした。
となると、問い合わせる方法が手紙か電話になってしまうのか…うーむ。
もともと赤と青の秘密を調べてるのはわたしじゃないので
質問者さんに届くように人力検索のコメント欄に書いときますわ。

chinjuhchinjuh 2012/08/01 21:28 ときおり、ミハルスとカスタネットについて調べに来る方がいらっしゃいますので、わかりやすくまとめておきます。

・カスタネット castanet はもともと西洋の打楽器で、二枚の木片を「紐」で結んだものです。デフォルトでは口があいておらず、ぶら下げた状態で指で叩くと音が出ます。
・西洋楽器のカスタネットをもとに千葉みはるさんがミハルスという楽器を考案しましたが、それは木片を蝶番でくっつけたものを、親指と人さし指にとりつけてパクパクさせることで音を出します。現在はほとんどみかけない楽器です。
・ミハルスをもとに、プラス白桜社さんが木片のあわせ部分に角度をつけ「ゴム紐」で結ぶことにより、デフォルトで口があくようにしたのが現在日本の幼稚園等で使われている打楽器です。この名前については混乱があるようで、カスタネットと呼ぶ人と、ミハルスと呼ぶ人がいます(考案者のプラス白桜社さんはカスタネットと呼んでいるようですから、カスタネットが正式じゃないのかと思うんですけど)。

西洋のカスタネットとミハルスは大分違う形をしてます
ミハルスと現在幼稚園で使われているカスタネットも大分違う形をしてます
西洋のカスタネットと、幼稚園のカスタネットはけっこう似てます。

プラス白桜社プラス白桜社 2013/01/29 16:32 うまく投稿できなかったみたいなので再度投稿いたします。
カスタネットの記事にレスがあり、びっくりとともに感激しています。

さて、赤と青の話ですが、祖父が亡くなってしまっているため定かではありませんが、私の知っている範囲では二つの説があります。

ひとつめは
はじめは女の子用に赤、男の子用に青としていたところ、教育機関より数の調整が大変なので兼用で使えるものを考えて欲しいとの要望を受け、片側を赤、片側を青としたものを作った。(私の父はこう聞いています。)

二つめ
赤は大地の色、青は空の色、なのでお空の色を上にして叩くようにと幼児に教えやすくするために赤と青とにしたというもの。(私はこう聞いた記憶があります。)

ここからは私の想像ですが、一つ目の理由からスタートして、二つ目は後付けの説明として用いられていたような感じがします。

なんだか答えになっているようで、なっていないようですみません。

でも、カスタネットのことが話題となりうれしかったです。

プラス白桜社プラス白桜社 2013/01/29 16:45 投稿ついでにもうひとつ
赤と青の色のことに加え、よく聞かれることがあります。
それは、なぜ丸いのか?ということです。

カスタネットを考えた当時、私の祖父はろくろを使い木工工芸品をつくって生業としていました。当然、ろくろを使ってカスタネットを作り始めましたので、貝殻のような形は作れず丸になったということです。

余談ですが、小さいころ私の家は(いまだにかもしれませんが)豆腐屋、酒屋、ペンキ屋と商売をされている家が呼ばれるように、「ろくろ」と呼ばれていました。
私も近所の人から「ろくろのせがれだろ」とよく呼ばれていました。

chinjuhchinjuh 2013/01/29 18:41 わー!!
プラス白桜社さん、ありがとうございます。感激です。
大地と空の色というのは素敵な話ですね。
わたしなどものの道理のわからない子供でしたから
かなりの確率で赤を上にして叩いていたような気がします。
大変失礼いたしました。
ろくろの話も面白いです。スペインのとは違う、丸い形にも歴史があるんですね。
もし貝殻のような形に作れていたら、角度をつけて口があくような工夫もなかったかもしれないですよね。
わたし、だんだんカスタネットが欲しくなってきました。
子供の頃に愛用していたのは思い出の彼方に置いてきてしまいましたから。
とりあえず本文中にはってあるカスタネットの広告を、プラス白桜社製のものに変更します。

そうだ、
id:ululun さんにもお知らせしときます。

ululunululun 2013/01/29 19:33 idコールありがとうございました。

小学生の父小学生の父 2013/03/28 18:44 こんにちは。
ちょっとカスタネットの使い方などをネット検索し始めて行き着きました。

記事中の図で紹介されているミハルスの実物の写真がこちらで紹介されているようです。
http://classicalandsoon.blog.so-net.ne.jp/2012-08-13#

フラメンコでしたか、海外のカスタネットが黒一色でぶら下げるようにして持ちながら
指を上手につかって音を出す楽器というのは見たことがあったのですが、
日本にもこのような面白い楽器があったのですね。

大変勉強になりました。ありがとうございました。

chinjuhchinjuh 2013/03/28 19:15 ありがとうございます。実物のミハルス、口をあけたところの写真がないのは残念ですね。今となっては貴重な品でしょうからおいそれと使ってみられないのかもしれませんが。本もずいぶん状態のいいものがあるので驚きです。わたしは国会図書館でデジタル化されたものを読みました。

教えていただいたサイトには「赤青の教育用カスタネット」 を上田友亀さんが考案したと書いてありますが、わたしが読んだ上田友亀さんの本には、今のようにデフォルトで口があく工夫のなされた教育用カスタネットのことはまったく出てこなかったですよ。上田さんが書いてるのは、あくまでフラメンコで使うスペインのカスタネットなんです。日本カスタネット協会でも何か勘違いしているんじゃないのかなあ。

現在のもののように、デフォルトで口があくように工夫され、赤と青に塗り分けられている教育用のカスタネットを考案したのは、やっぱりプラス白桜社さんなんじゃないのかな。

少なくとも今の情報で上田さんが考案者であるとは言いにくいですね。別の資料がでてきたら考えなおさなければいけませんが。

四国人四国人 2013/04/11 23:19 こんばんは。
上田友亀さんとカスタネットの事について調べておりましてこちらにたどり着きました。

実は上田さんとは遠縁の者です。

以前NHKの番組でカスタネットの色についての質問があり、その質問に上田さんのお子様(当時カスタネットの工場をされていたと思います)が男女で…と言う事をTVで答えていたと、もう20年程前かとは思いますが父から聞いた事があります。

古い話なのでなかなか資料等はもうないのかもしれませんね。

私も正確な事が知りたいと思っているのですが…

また何か分かりましたらお教えください。

どうも有り難うございました。

chinjuhchinjuh 2013/04/12 05:25 四国人さんこんにちは!
それはかなり有力情報だと思うんです。
人間は不思議なもので、ぜんぜんつながりがないところで同じようなことを思いついて、互いに「自分が創始者」と思ってることがけっこうあると思います。
上田さんのご子息からの情報であるなら、上田さんもまた教育用カスタネットの発明者なのかもしれないです。

「発明」と呼べるポイントをまとめておきましょう。

・カスタネットのあわせめに角度をつけ、ゴム紐で結ぶことで、デフォルトで口があくような工夫を考えたのは誰か?
・赤と青に塗り分けることを考えたのは誰か?
・木片をシェル型ではなく丸く切り抜くのを考えたのは誰か?

これらの三点がスペインのカスタネットとの違いだと思います。
これらの発明がなされたのは、戦後だと思われます(1952年の上田友亀さんの本に上記のような工夫をしたカスタネットが出てこない)。
それぞれの工夫を、別の人が思いついた可能性もあります。