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9-25

左前に着る古代天皇たち

| 22:13 |  左前に着る古代天皇たちを含むブックマーク


 まあ、それはそうでしょうけれども。

 ところで田中氏のその後のツイートを拝見していたら面白いものを見かけまして。


 こちらで紹介されているのが(学習・研究の一助│Z_lab│ゼロ研)、歴代天皇肖像画でして、私は初めて見たのですが、大変興味深くないですか?特に懿徳・孝安・孝元・開化辺りがわかりやすいですね。

 服を左前に着ている。

 これは要するに、『続日本紀養老三年(719年)二月三日の、

初めて天下の百姓をして襟を右にして、職事の主典已上に笏を把らしむ。

新大系続日本紀 二』53頁)

をもとに、それ以前は左前が普通だったのだろうということに基づいて描かれているのではないかと推測されるわけです。(「天下百姓」というのをどう理解すべきかということですけれども)

 なお、新大系の補注によれば、

天平勝宝四年四月の大仏開眼の時着用された衣服には左襟のものがあり、左襟の風は以後も残存したらしい(田中尚房『歴世服飾考』)。

(473頁)

【追記】

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9-24

続々々・万葉集(衆)議員、橘慶一郎氏

| 09:36 |  続々々・万葉集(衆)議員、橘慶一郎氏を含むブックマーク

 新副大臣に多額の借金を抱えている議員がいるんだけど、大丈夫?/閣僚資産公開制度 - さようなら、憂鬱な木曜日

 久しぶりに橘慶一郎氏のお名前を見かけました。自営業をしていたら個人で借入をすることもあるでしょうし、よくわからないのですが、まあ、説明なさるといいかと思います。

 というわけで、前回の記事( 続々・万葉集(衆)議員、橘慶一郎氏 - Cask Strength)から間があいてしまいましたが、平成25年以降に国会審議の場で披露された万葉歌の一覧を挙げておきますね。例のように、歌の表記は議事録のママです。


  • 平成25年03月19日 巻五・829。梅の花咲きて散りなば桜花継ぎて咲くべくなりにてあらずや
  • 平成25年03月21日 巻十・1883。ももしきの大宮人は暇あれや梅をかざしてここに集へる
  • 平成25年05月21日 巻十・1940。朝霞たなびく野辺にあしひきの山ほととぎすいつか来鳴かむ
  • 平成25年05月30日 巻十七・4024。立山の雪し消らしも延槻の川の渡り瀬鐙つかすも
  • 平成25年11月07日 巻八・1584。めづらしと我が思ふ君は秋山の初黄葉に似てこそありけれ
  • 平成25年11月22日 巻十・2215。さ夜更けてしぐれな降りそ秋萩の本葉の黄葉散らまく惜しも
  • 平成26年02月21日 巻八・1434。霜雪もいまだ過ぎねば思はぬに春日の里に梅の花見
  • 平成26年06月16日 巻十六・3837。ひさかたの雨も降らぬか蓮葉に溜まれる水の玉にあらむ見む
  • 平成27年03月09日 巻十七・3903。春雨に萌えし柳か梅の花ともに後れぬ常の物かも
  • 平成28年04月07日 巻八・1440。春雨のしくしく降るに高円の山の桜はいかにかあるらむ
  • 平成28年05月24日 巻十八・4109。紅はうつろふものぞ橡のなれにし衣になほしかめやも


 平成25年05月30日の総務委員会はおもしろくて、急遽質問に立つことになったようで事前に万葉歌を準備していなかったようなのですが、

事前に通告された場合にはしっかり歌も決めて詠むんですけれども、やらせていただくんですが、先ほどちょっと耳打ちされておりましたので、慌てて、頭の中にある万葉集を一首詠ませていただきたいと思います。(中略)巻の十七になるかと思いますが、山の話がございました。立山の雪解け水で川が大変増水していて、馬でそこを渡ろうとしたらあぶみに水が付いたという歌を一つ詠ませていただきます。

と、4024歌をソラで詠んでいます。

 それはさておき、氏の使用テクストは佐佐木信綱『新訂 新訓万葉集』(岩波文庫)ではないかと前回推定しまして、今回もその推定を補強する材料が出てきました。3837歌です。

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 第五句は諸本に「玉似将有見」とあるのですが、現在では「若将有ノ二字ヲ有将ニ作ラハ、今ノ点ニテ読ヘシ」という『万葉代匠記』(精撰本)の一案を採用し、つまり「玉似有将見」に改めて「玉に似たる見む」などと訓むのが普通です。*1

 しかし、興味深いのは前述の4024歌ですね。佐佐木はこの第二句を「雪し来らしも」としています。『万葉集』の原文表記は「由吉之久良之毛」なので「ゆきしくらしも」とよむことは確実なのですが、佐佐木は「くらしも」を「来らしも」と理解している。しかし、最近の通説では「くらしも」を「消らしも」と解しています(語法的には特殊な例ということになります)。橘副大臣も「立山の雪解け水で」云々と言っていますし、議事録の表記では「消らしも」となっているので、佐佐木の理解を採らなかったことになる。『万葉集』を本気で勉強されているように見受けられます。

*1新大系は「原本文を「玉似将看見」と推測し、タマニニルミムと訓むことにする」と。

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9-18

徐福は孝霊天皇七十二年に来日している

| 22:42 |  徐福は孝霊天皇七十二年に来日しているを含むブックマーク

 ※今日の記事はネタです

徐福神武天皇説」は本当? 中国人がシナリオを考えてみた


・・・中国メディア・今日頭条は15日、「徐福は結局、日本人の祖先である神武天皇なのだろうか」とする文章を掲載した。文章はまず、1950年代に香港の学者・衛挺生氏が徐福神武天皇に10の類似点があることから「徐福神武天皇」説を提起して以降、多くの中国人、日本人がこの説に影響を受けてきたと紹介。そのうえで、徐福神武天皇として神格化された可能性について持論を披露した。

https://news.nifty.com/article/world/china/12190-20160918_00023/

 あ、そうですかー、それはそれは。ていうか、ふざけんな、徐福が来日したのは我が第七代孝霊天皇の時や!神武天皇よりずっと後だ!

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七十二年壬午、秦始皇帝徐福入海求仙、福遂至紀伊州居焉。

(『海東諸国紀』 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1193135/23 参照、岩波文庫本57頁)

 ※繰り返しますが、今日の記事はネタです。


 いや、でもさあ、「このストーリーはあくまで出回っている仮説から推測して組み立てたものであり、有力な根拠に裏付けられたものではない」と開き直られたものを真面目に取り上げる必要あるの・・?オレは悲しくなってきたよ。

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9-17

ヒメクグ

| 17:51 |  ヒメクグを含むブックマーク

 毎年見たことのない草を発見するので庭を見回るのが楽しい。今回はヒメクグ。

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 津軽では方言で「こんべとぐさ」と言うらしい。なるほど、金平糖にそっくりですね。

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 まるで星空のようだ。

花茎は断面が三角で、緑色でつやがある。先端に花序がつく。花序のすぐ下にそれぞれ長さが異なる3枚ほどの苞がつく。苞は葉状で、水平に広がり、長く伸びる。花序は多数の小穂が頭状に集まったもので、ほぼ球形のものが一つだけ(まれに2〜3個)である。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%92%E3%83%A1%E3%82%AF%E3%82%B0

 この、花序は「一つだけ」、そして、その下に「それぞれ長さが異なる3枚ほどの苞がつく」が決め手となってヒメクグだとわかりました。

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 こうやって見ると躍動感溢れているな!踊り子のよう。なんか愛嬌がありますね!

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 キツネたちもすぐに仲良しに。

 三郎「ゴン、おまえだったのか・・・」

 太郎「いや、たしかにイガ栗にも似ているけれども違うから!」

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9-15

「さてさてこの野州はやういかり参らせたよ」

| 02:09 |  「さてさてこの野州はやういかり参らせたよ」を含むブックマーク

 某研究所から某資料館のほうに抜ける道にシモツケが咲いていました。

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 もうシーズンは終わりかな。「草の花は・・・しもつけの花」(『枕草子』)。和歌にはほとんど出てこないですけれども。

 それにしても「和名は下野国に産したことに由来する」というのは本当ですか。『醒睡笑』の笑い話みたい。

奉公する人の問ふやうは、某がたのみたる殿を下野といふ者もあり、野州といふやからもあり、いづれがよいぞや。どちも大事なしと、大いに合点せしが、ある座敷に出てて、しもつけの花のいけたるを見つけ、きつと手をつき、さてさてこの野州はよういかり参らせたよと。

(『醒睡笑』巻三「不文字」 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1186672/59

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9-10

「陶然亭酒肴目録」

| 01:12 |  「陶然亭酒肴目録」を含むブックマーク

 京都高台寺××町の北側にあったという「陶然亭」を紹介している青木正児の文章を読んだことのある呑兵衛も多いことでしょう(「陶然亭」、『華国風味』所収)。

華国風味 (岩波文庫)

華国風味 (岩波文庫)

さてその目録というのが大変なもので、ちょっと他に類がなく、珍とするに足るので、左に全目を掲げる。

(182頁)

というわけでどうぞ。速成なのでタイポ、誤変換もあろうかと思います。

陶然亭酒肴目録

 (一)御銚子

  銘酒 白鷹  一本 〇〇銭

  同  菊正宗 同  〇〇銭

  同  白鶴  同  〇〇銭

  同  沢之鶴 同  〇〇銭

  同  桜正宗 同  〇〇銭

  同  月桂冠 同  〇〇銭

  同  神聖  同  〇〇銭

  並酒 辛口  同  〇〇銭

  並酒 甘口  同  〇〇銭

 (二)御撮肴

  精進物    一皿  〇銭均一

  魚類     一皿  〇銭均一

  精進物盛合せ 一鉢 〇〇銭均一

  魚類盛合せ  一鉢 〇〇銭均一

   〇炒物類

  五色あられ(白餅、および栗、黍、黒胡麻、青海苔入り)

  山椒あられ(醤油味附)

  胡椒あられ(同)

  生姜あられ(同)

 那須の篠原  右あられ四種盛合せ

  塩炒豌豆

  醤油炒大豆

  白炒蚕豆

  油炒黒豆

  塩炒落花生

 豆棚閑話  右炒豆五種盛合せ

  生胡桃

  かち栗

  白炒榧の実

  白炒乾小丸甘藷

 山家清供  右胡桃以下四種盛合せ

 蟠桃会  一名 八仙慶寿  右豌豆以下九種盛合せ

        胡桃(西王母) 豌豆(韓湘子)

        大豆呂洞賓) 蚕豆(藍采和)

        黒豆鉄拐李) 落花生張果老

        堅栗(曹国舅) 榧実(漢鍾離)

        乾小丸甘藷(何仙姑

  黄金海老(乾海老の雲丹炒)

  胡椒炒雑魚(醤油味附)

 漁樵問答  右海老、雑魚、および榧の実、かち栗盛合せ

   〇焼物類

  焼海苔

  焼鯣

  焼柴鰈

  焼乾鰯

 漁家楽  右焼乾物四種盛合せ

  豆腐田楽

  川魚田楽

  野菜田楽

 田家楽  右田楽三種盛合せ

   〇揚物類

  揚あられ(五色塩あられ製)

  揚豆(蚕豆と落花生

  揚馬鈴薯

  揚慈姑

 南京好み  右揚物四種盛合せ

  揚雑魚

  揚鯣

  揚昆布

 大漁祝い  右揚雑魚以下三種盛合せ

   〇しぐれ煮類

  しぐれ蛤

  しぐれ貝柱

  しぐれ蕗

  しぐれ山椒昆布

 長楽寺  右しぐれ煮四種盛合せ

   〇煮豆類

  軟煮大豆(醤油味)

  軟煮黒豆(同)

  塩煮金時豆

  塩煮十六寸

  塩煮青豌豆

 老の楽  右五色煮豆盛合せ

  坐禅豆(大豆煮しめ)

  大徳寺納豆

  浜名納豆

  糸引納豆

   〇新案擬製菓子類

  味噌柚餅子

  山葵味噌一口香

  胡麻おこし

  塩唐板

 山の幸  右味噌柚餅子以下四種盛合せ

  蛯夷巻煎餅(薫鮭製)

  沈魚落雁(魚粉製)

  浜松風(雲丹入)

  磯真盛(魚粉製)

 海の幸  右蛯夷巻煎餅以下四種盛合せ

   〇海川佳味(特価

  唐墨   一皿 〇〇銭

  鮒鮓   一皿 〇〇銭

  鷺不知  一皿 〇〇銭

  薫製鮭  一皿 〇〇銭

   〇異国風味(特価

  松花(家鴨卵発酵製) 一個 〇〇銭

  糟蛋(家鴨卵糟漬)  一個 〇〇銭

  醤豆腐(豆腐味噌漬) 一個 〇〇銭

  ハム         一皿 〇〇銭

  ソーセージ      一皿 〇〇銭

  チーズ        一皿 〇〇銭

 (三)御嘗肴

   〇嘗味噌類

  五香味噌(胡麻、麻実、榧実、山椒生姜入)

  三胡味噌(胡桃、胡麻、胡椒入)

  鉄火味噌

  柚子味噌

  欵冬味噌

  山葵味噌

  生姜味噌

  各種焼味噌  以上各品 一皿  〇銭

  魚肉麻実味噌

  蟹肉柚子味噌

  鶏肉山椒味噌

  鶏臓胡椒味噌 以上各品 一皿 〇〇銭

   〇塩辛類

  雲丹の塩辛

  このわた

  鮎のうるか

  鮎の子うるか 以上各品 一皿 〇〇銭

  鰹の塩辛

  烏賊の塩辛

  あみの塩辛

  鮭の鈴子

  鮭のいくら  以上各品 一皿  〇銭

   〇雲丹漬類

  五味雲丹漬(海月、貝の柱、いくら、すけとの子、紫海苔漬けまぜ)

  海月雲丹漬

  数の子雲丹漬

  鮑魚雲丹漬

  小海老雲丹漬 以上各品 一皿 〇〇銭

 (四)酢の物・和え物

   〇魚介類

  魚介鮮肉酢肴

  同ゆびき酢肴   並品 一皿 〇〇銭

         以上

  同酢味噌和え   精品 一皿 〇〇銭

   〇蔬菜

  蔬菜生酢

  同 酢味噌和え

  同 胡桃和え

  同 胡麻和え

  同 芥子和え

  同 しらあえ

  同 浸し物

  同 三杯漬   以上 各品 一皿 〇銭

 (五)御鍋物

  湯豆腐    御一人前 〇〇銭

  夏向冷やっこ 同    〇〇銭

  ちり鍋    同    〇〇銭

  蓬莱鍋    同    〇〇銭

   この鍋は本場土佐の鰹塩辛を煮込んだ潮汁で、貝類・蔬菜・木の実などを煮て召上って頂くのです。

  御飯代用生餅

  同 饂飩玉

  同 蒸パン  ともに 一皿 〇銭

   餅や饂飩は各自鍋で煮て、お好きなように味を付けて召上れ。

九転煉金丹(酒仙秘法)

   各自お好みの肴を何なりと随意に取合せ、煉雑ぜて召上れ。工夫を凝らして九転の金丹を得るに至れば酒仙になれること請合いです。

 (六)御茶菓子

  補天石(五色豆)

  煮白石(白雪餻)

  浮世(栗興と落雁

  牧場(牛皮と羊羹

  須磨の浦(松風と松葉ぼうろ)

  勢田の橋(唐板と八つ橋

     牧場   一皿 〇〇銭

     その他は 一皿  〇銭

  御煎茶     一瓶  〇銭

   このほか季節の果物色々

(182〜194頁)

 これは間違いなく名店ですよ(読者のなかで酒を我慢している人がいらしたらごめんなさいw)。どなたか是非とも復興を。


 あと、鮎のうるかとか嘗味噌類とか五味雲丹漬とか蓬莱鍋を所望です><

 それにしても、「九転煉金丹」はいいですねぇ。みなさまは何と何をとりあわせますか。酒仙になりたいなぁ。

 ちなみに、これ↓もたまらない。酒を呑まない人でも実感できるでしょうか。

・・・女房もまた黙って浅草海苔を一枚炙り、揉んで小皿に入れ、花鰹を一撮みつまみ込んで醤油をかけ、擦山葵を比較的多量に副えて、燗酒と共に差出した・・・男は受取ると箸でそれをまぜて、ちょいと挟んで嘗めながら、如何にも旨そうに飲み始めたが・・・花鰹の味と海苔の香りと、山葵の鼻をつく新鮮な気と、酒の肴としての要件がちゃんと備わっている。そして胸にもたれず腹にたまらず。まるで肴の精(エッキス)といったようなものだ・・・

(195〜196頁)

9-8

「黄葉の妖精」

| 00:48 |  「黄葉の妖精」を含むブックマーク

三七〇四 もみち葉の 散らふ山辺ゆ 漕ぐ船の にほひにめでて 出でて来にけり

三七〇五 竹敷の 玉藻なびかし 漕ぎ出なむ 君がみ船を いつとか待たむ

  右の二首、対馬の娘子、名を玉槻といふ

三七〇四と、三七〇五は、宴に侍した土地の遊行女婦玉槻の歌である。一行を讃美し、歓迎する歌と別れを惜しみ再会の日を待つ歌とを、同時に詠んでいる。三七〇四の作者は、寄港した都人たちの宮風(みやぶり)に吸い寄せられるように海浜に憧れ出て来た黄葉の妖精のような趣がある。

(『萬葉集全歌講義 第8巻』181〜182頁)

萬葉集全歌講義〈8〉巻第十五・巻第十六

萬葉集全歌講義〈8〉巻第十五・巻第十六

 注釈書でこういう大胆なことはなかなか書けない。「黄葉の妖精」、どのようなものを想像されていたのでしょう。みなさまはどうでしょう。

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