「大地の芸術祭」 越後妻有アートトリエンナーレ2012
8月20日(月)
新潟、越後妻有地域で開催中の「大地の芸術祭」、越後妻有アートトリエンナーレに行ってきた。
越後妻有は、十日町、川西、松代、松之山、中里、津南の6エリアからなる地域で、とにかく広範囲にわたるので、この日はあらかじめ十日町と川西エリアだけを回る目的で現地を目指した。
事前に公式ガイドブックを購入し、ある程度目印になる作品の位置関係や絶対見たい作品などはチェックしたものの、計画らしい計画はせず、ほとんど成り行き任せの状態で臨んだ。
不安もあったが、逆にそれぐらいゆるく、なんとなく、こことここは見たいな〜、お昼はここで食べようかな〜、ぐらいの感じでよかったのかも知れない。
だって、公式ガイドブックにもあるように全作品を見ようと思ったら一週間前後はかかるというのだから!
会場エリアを車で走行していると、作品があることを示す黄色い看板を目にする。
これを見つけると、「あ、作品だ!」とつい立ち寄りたくなってしまうのだが、そんなことしてたら時間が足りなくなって、はじめから見たいと思っていた作品が見られず泣くことになりそうなので、ぐっと堪えてスルーするのが得策。時間が余ったら見ることにするといいと思う。
というわけで、以下、心に残った作品など。
芸術祭の拠点、十日町市の中心部にあるのが、越後妻有里山現代美術館「キナーレ」。
そして、美術館の建物の中心部に圧倒的なスケールで登場するのがこちら。
クリスチャン・ボルタンスキー≪No Man's Land≫
とにかく、まず大きさに驚く。
そして、さらに驚くべきは、会場一帯に鳴り響く心臓の音。
「ドクンッ! ドクンッ!」と体に響くほどの音を聴きながら、この作品を見ることになる。強烈だ。
古着が積み上げられた山は、クレーンでつかみ上げられ、落され、またつかみ上げられ、落され…と、延々繰り返される。
もうこれは、見た瞬間に多くの人があるイメージを想起するのでは。。。(また後ほど触れる)
ところで心臓音と言えば、瀬戸内海の豊島にあるボルタンスキーの作品「心臓音のアーカイヴ」で、以前わたしも自分の心臓音を録音して残してきた思い出がある。
今も遠く離れた瀬戸内海の小さな島で、もう一つの鼓動が「ドクン、ドクン」と鳴っているのだろうか…と、思いを馳せる。
現代美術館は今年新たにオープンしたということで、とても綺麗でモダンな印象。
展示作品は10点と決して多くはないが、ぐるぐる〜の作品とか…
カールステン・ヘラー≪Rolling Cylinder,2012≫
キラキラ〜の作品とか…
カルロス・ガライコア≪浮遊≫
体験型の作品もあって楽しめた。
キナーレをあとにして十日町駅周辺は徒歩で回ることに。
暑かった。とにかく、暑かった。。。日傘または帽子、水、手ぬぐい(タオル)は必須!!
あと、地図で見るよりも作品まで意外と距離があったりするので、歩いて行く場合は覚悟して行った方がいい。
中村未歩≪絶対交換会≫
来場者が私物を提供し、前の人が置いて行った私物と交換するというプロジェクト。
わたしが行った時、前の人が置いていったのが、軽く5キロはあるだろうと思われる大量のジャガイモだった!!
一瞬どうしようか迷ったが、それに見合うほどの提供できるものを持っていなかったので、辞退させていただいた(笑)
でも、判断するのは来場者。訪れたタイミングで置いてあるものが違うのも面白い。
過去に、真珠を置いて行った人もいるとか。すごい。。。
野田智之≪越後妻有リサイクル・アート美術館≫
はだかの人形が宇宙で回転している作品など(笑)、個人的には大好きな不気味可愛い作品をはじめ、不要となったおもちゃを地域の人たちから集め、手を加えて動くアート作品に再生。
作家の野田氏は、会期中ほぼ毎日ここに滞在して制作を行っているそう。
わたしが行った時も制作中で、色々とお話を聞かせていただいた。
「人形」を素材にすることにこだわりをお持ちのようで、秋に別の場所で開催される展示のために、「目がぱちぱちする人形」を集めているとのこと。
昔はたくさんあったのに、現在日本で出回っている「目がぱちぱちする人形」は、ポポちゃんしかいないのだそう(笑)
大人の男性がポポちゃん、ポポちゃんと連呼されていたのが面白かったが、非常に興味があるので秋の展示も見に行こうと思っている。横浜、だったかな。
こうやって実際に制作中の作家さんに会えて、お話が聞けたりするのも楽しい。
十日町駅周辺は汗だくになりながら1時間ほどウロウロしたものの、暑さにやられてギブアップ。
でも、商店街の中に作品があったりするから、車停められないし、やっぱり歩いて回るしかないよなぁ。
途中、バッタを見ました。
お昼ごはんは、事前にここで食べようと決めていた、うぶすなの家で。とても美味しかった。
この日はそうでもなかったけど、土日は混雑してすぐに売り切れてしまうとか。
うぶすなの家は、エリア的には十日町エリアに入るのだが、中心地からは大分離れているので要注意。
途中から携帯の電波も届かない山道に入るので、本当にこっちでいいのかな?と不安になるけれど、窓から見える景色に心奪われているうちに到着するので大丈夫!
せっかくここまで山道を登ってきたのだから、うぶすなの家に行くなら、割と近いもぐらの館とセットで行くのがいいと思う。
土の美術館、もぐらの館
廃校を利用した展示。中にはこんな作品とか。
本田裕紀≪今度生まれてくる時も、また≫
さて、続いて十日町エリアを離れ、次に目指すはジェームズ・タレルの光の館がある川西エリア。
ジェームズ・タレル≪House of Light 光の館≫
有名なので知っている人も多いかもしれないが、タレルが谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」に着想を得た建築物。
一般の人も宿泊できる施設なので、見学は16:00まで。(ギリギリだった…)
居間にみんなでゴローン。
視線の先には、色紙みたいな四角い空!周囲で歓声が上がる。
CLOSE → → → → OPEN!
宿泊者の特権で、夜には星空と、流れ星も見ることができるとか。
階下にあるお風呂も素っ晴らしかった。
あぁ、一度でいいから泊まってみたい!
川西エリアは光の館でかなり満足してしまい、他は周辺の作品を駆け足で数か所回っただけ。
あとで大学時代の講師の先生の作品がこのエリアにあったことを知る。完全に見逃してた。
光の館を見学し終え、次に目指したのがこちら。
アジア写真映像館(旧名ヶ山小学校)。こちらも廃校がギャラリーとなった施設。
実は、ここに辿り着くまでが今回いちばん不安になった。名ヶ山小学校と入れてもナビで出ないし、地図見ても、途中までは国道で行けるんだけど、一本入ってからがくねくねと細い道でよく分からない。
とりあえず行ってみようと、勘を頼りに車を走らせ、(2回ほど同じ道をぐるぐるしてしまったが…)なんとか辿り着いた。
日中で活躍する6名の写真家たちの企画展を開催していて、日本からは、森山大道と石川直樹。
閉館間際の時間帯ということもあって、わたし以外お客さんが誰もいなかった。
夕方の廃校に一人ぼっち。ちょっと、こわい。
施設の大半が17:30で閉まってしまうので、再びキナーレへ。お土産買ったりしたかったので。
そして、この日最初に見たボルタンスキーの作品を、再び目にすることに。
陽が落ちると、こんな感じ。
これは・・・
まさに、「夜と霧」だと思った。
アラン・レネの映画を見て言葉を失った時の、あの感覚を思い出してしばらくその場に立ち尽くしてしまった。ショッキングだ。
これは、できれば夜に見た方がよい作品ではないかと思う。
以上、ボルタンスキーに始まりボルタンスキーに終わった、初めての大地の芸術祭。
パスポートのスタンプは、こんな感じ。
やっぱり日帰りだとこれぐらいが限界だ。
今回回れなかったエリアにも見たい作品がいくつかあるので、会期中行けたらまた行きたいと思う。
マリーナ・アブラモヴィッチの「夢の家」はやっぱり行きたいなぁ。(ほんとは泊まりたいけど、会期中はもういっぱいだった。)
うん、やっぱりまた行く!
きのこ手ぬぐいを買いました。
おしまい。