貧困のない世界を創る / ムハマド・ユヌス

「世界があとほんの少しでもよくなればいいのに」と願う全ての人が読むべき。善意だけで人を助けることはできないけど、善意と冴えたやり方が組み合わされば世界は変わる。そう、ユヌスは身体を張って証明してくれる。
経済学博士であり、バングラデシュの大学で教鞭を取る著者は、飢饉の前に何もできない自分を恥じて机上の学問を捨て去り貧村を救おうとする。それは貧しい人に無担保でお金を貸すというものだった。
ふつうの銀行員なら貧困にあえぐ人が金をちゃんと返すわけがない、担保をとって当たり前だと考える。だから担保になる財産すらもっていない人は銀行からは相手にされないのだ。このため略奪的な高利貸しを使わざるをえず、貧者はいつまでも貧者のままになる。ユヌスのはじめたビジネスは銀行なら決して負わないリスクを負って、貧者にお金を貸し、高利貸しなら決してしないような良心的な利子だけを取る、というものだ。これは通常のビジネスよりも社会的価値に重点を置かれているため、ソーシャル・ビジネスとユヌスは呼んでいる。この新しい形態の組織は、ほかの組織とどう違うのだろうか。

営利企業】株主の利益最大化だけが目的。金だけってお前……視野狭すぎだろ。 【CSR】結局、企業の「おれって善良じゃね?」アピール。マーケティング上必要かもしれんが、効果薄い。 【NPO】寄付に依存しすぎ。あとマネジメントがなってない。 【政府】対応遅いし、非効率。偉いおっさんのいいなり。 【慈善活動】単なるチャリティーは人を乞食にする。働くよりも物乞いした方が飯にありつける状況ってどーよ?

と、いうわけで
【ソーシャル・ビジネス】企業と同じ経営をする。が、目的は株主利益最大化ではなく、社会的価値の最大化。投資家には投資された元本はちゃんと返すが利益は一切配当しない。軌道に乗れば寄付がなくても持続的に活動することができる。

僕にも利益度外視でやりたいことがある。それはテクノロジーの加速とそのための法整備だ。世界を加速させたいという厨臭い願望を、人生の目標だと意識したのはレイ・カーツワイル「ポスト・ヒューマン誕生」の影響。ただおそらくソーシャル・ビジネスでなく営利企業の形態になりそうだ。