1. まえおき


speaker:


「…(言葉なく, ひびき)…」


narator:


何ノ歌ダ? 誰の声ダ?


speaker:


「目には目を, 歯には歯を, ではない. ただしかし, 忘れられない, 忘れることはありえない」


narator:


何ヲ何ヲ忘レナイノダ?


speaker:


「きみたちがしたことを. どうして忘れられようか, きみたちの父が, きみたちの伯父がしたことを」


narator:


何ヲシタノダ? 何ガ起コッテイタノダ?


speaker:


「きくがいい, チャンや, ワンや, リューの身の上に起ったことを


35年前のことだ


すでに許した. 許しはした


だが忘れてしまったと, 思ってくれては困る. こまる. 忘れることなどありえないのだ」


narator:


何ガ, イッタイ何ガ, 起ッテイタノダ?


35年前ダッテ?



[*1]

*1:平仮名の語りを日本人話者, 片仮名の語りを日本語を母語としない話者に対応させるのが普通だが…ここでは逆転している点に注目する

2. 減る一方の歌


chorus:


一銭五厘赤紙


 いのちは一度きりなのに


はたちになれば男たち


 いのちは一度きりなのに


はたち前から男たち


 いのちは一度きりなのに


「いってきまあす」と男たち


 いのちは一度きりなのに


narator:


いくさにつぐいくさで大日本帝国はひろがりにひろがっていた


小さな島から攻めに攻め信じられないほど大きい地域で大日本帝国はふんぞりかえっていた


chorus:


論語」のくにに攻めこんで


 いくさに吸い込まれて男たち


史記」のくにに攻めこんで


 ひろさに吸い込まれる男たち


諸葛孔明たちにとりまかれ


 ねばりに取り囲まれる男たち


narator:


光りかがやく雲のうえに祭られる兵隊たち


いくさで死ねばまぶしくて目がくらむカミサマにされるというしくみだった


ときどき兵隊にいった兄貴がおやじが息子がキラキラする勲章にかわってかえってきた


勲章よりも本人にかえってきてもらいたいとこっそりみんなそう思っていたんだが…


chorus:


いくさは見せるためではない


いくさは聞かせるためではない


殺しに殺し 殺される


いくさは戦争ごっこじゃない


死んでも 死んでも 死にきれない


いくさは戦争ごっこじゃない


働く人手は減る一方


働く人手は減る一方


子どもの腹は減る一方

3. 【うさぎ狩り】とその表むきの呼び名の歌


narator:


飛行機工場に女学生が動員された


石炭を掘る炭鉱に鉄鉱石を掘る鉱山に地下の仕事に人手は全く足りなかった


そこでおえらがたは「何とかしなくちゃ」と考えた


「大陸にちからのある労務者がいっぱいいるではないか」


1924年そう思いついたおえらがたは「集めてこい」と命令した



「」


あいつは言った


男声solo.:


chorus: /


男声solo.: