An Inconvenient Truth (「不都合な真実」)

元副大統領アル・ゴアが、地球温暖化について世界中で訴えた講演を元にしたドキュメンタリー映画。5月末に全米4館だけで公開を始めたが、今ではマンハッタンの中だけでも上映劇場は9館に拡大、ドキュメンタリー映画では「華氏911」「皇帝ペンギン」に次ぐ第3位の興行成績。

この人が大統領になっていればなあ。
この映画の中の好感度があれば、ロボットのようだと言われることもなく、選挙に勝てただろう。自分自身が前面に出ず、自分の信じることを広めようとする情熱と、控え目にはさまれた個人的なエピソードが胸を打つ。大統領になっていれば、この映画を作る時間はなかっただろうけれど。彼自身が映画の中でぼそりと語っているように、大統領選挙敗北は「大きな打撃」だったが、「それに対して何ができよう。その中から最善を引き出すしかない」のだから。

地球温暖化は目新しい話題ではなく、ある程度耳なじみのある内容ばかりだが、スライドやアニメを効果的に使ったプレゼンテーションは衝撃的だ。世界中の氷河・氷原の減少を数十年前と現在と比べたスライドの数々、北極の氷がなくなりシロクマが溺れるアニメ、二酸化炭素の排出量と気温上昇の関係についてのグラフなどは明確で力強く、科学者やエコロジストが語る温暖化と、実家の母の「変な天気ばっかりで」という天候のあいさつとのギャップを埋めている。

温暖化は政治問題ではなくモラルの問題、と口では言っているが、ハリケーンカトリーナの大きな原因が、ブッシュ政権の石油会社優遇による二酸化炭素排出量増加にあることを、スライドは明確に示唆している。政治家というよりは大学教授的なユーモアも効果的にはさまれ、絶望的な真実を示すだけでなく、私たち一人ひとりの努力によって温暖化を和らげることができる、と訴え、具体的な方法も提示している。見終わった後すぐに、家族や友人に真実を伝えたくなる映画だ。私たちが今すぐにでもできることの数々が示されている、公式サイトはhttp://www.climatecrisis.net

Sonic Youth/Yeah Yeah Yeahs@Mccarren Park Pool

  

8月12日、ブルックリンのMccarren Park PoolでのYeah Yeah YeahsSonic Youthのコンサートへ。ウィリアムスバーグの公園のプールをつぶしてできた、新しいコンサート会場。ソニックユースはもういいや、と思っても、人気上昇中のYeah Yeah Yeahsとの商売上手なカップリングにそそられた。両者とも新作をリリースしたばかり。

ヤー・ヤー・ヤーズは残念ながら期待はずれ。彼らのノーウェイブな持ち味に、数千人は入れるオープンな会場は大きすぎた。PAがかなりしょぼく、パワー不足だったのも大きな原因。キャパ1000人ぐらいまでのクラブだったら最高だったのに。カレン・Oはサン・ラのような宇宙系光りモノの衣装。「Cheated Hearts」など新作「Show Your Bones」から聞きたい曲を全部やってくれたので、それでもうれしかった。2枚目の最新アルバムの方が洗練された曲作り。でも、ライブ用にアレンジしなおすか、ツアー用にベースかキーボードを入れるべきだった。

見飽きたとは言えソニック・ユースは、出てきたとたんに格の違いを感じさせた。もう20年以上やってるんだもんね。貫禄。観客の反応も全然違い、ヤー・ヤー・ヤーズが可哀想になった。取り立てて言うことはないけど、安定した演奏。このツアーの他の都市では演奏しなかった「Teenage Riot」を演奏したのはファンにはうれしい驚き。キム・ゴードンがベースを弾かずに歌い踊る曲が数曲。あきらかにダンサーではないのを承知の上で、自己パロディーを狙っているようだけど、ベースを他の人に弾かせるほどにはおかしくない。

会場は住宅地の中で、演奏は10時ぴったりに終わった。サーストンが「グラスハウスはもうなくなったから、この続きをどこでやろうか?」とジョークを飛ばしていた。グラスハウスというのは近所にあって、最近なくなったノイズ系ロックや実験音楽のスペース。偶然、私はそこで最後の日の最後のバンドとして演奏した。その時は、模様替えとしか思わなかったけど、今にして思えば取り壊し作業だった