大連国際音楽倶楽部・大連日本人学校10周年記念に寄せて:2004年4月(その2)

大連国際音楽倶楽部・大連日本人学校10周年記念に寄せて(つづき)
大連友の会 幹事/大連会 評議員/大連国際音楽倶楽部
水納 隆司


 そもそもこの大連国際音楽倶楽部(大連オケ)は94年に私と湯川氏、高岡慶四郎氏、関剛志氏、故今富晋吾氏等により大連中山区少年宮を拠点として設立された。日本人、中国人の子供、大人達を含めた組織である。以降今日まで紆余曲折が多々あったが高岡氏、関氏等の音楽に対する情熱により維持、存続され今日に至っている。
 昨年も日本から約30人が参加、11月14日に大連市少年宮で第9回演奏会を成功裏にとりおこなった。指揮は鷲見尚保先生(青森ジュニアオーケストラ名誉指揮者)が実に熱心に指導されており、本来の音楽の心を伝えるべく奮闘されている。2002年8月には鷲見先生のご努力により青森ジュニアオケと中山区青少年管弦楽団(大連オケから派生して成立)が姉妹提携し、記念演奏会が挙行された。
 この大連オケの特徴は、日本人だけでなく、中国人しかも大人も子供も含めた組織であり、青少年オケとも共に連携して活動していることである。この種のアマチュア音楽組織は中国全土でも見られない。まさに大連の風土が生んだ一つの産物といえよう。
 大連オケは現在日本の東京支部からの応援によりカバーされているが、メンバーは東京を中心として約40以上のアマチュアオーケストラに所属しており、その所属オケからも次々と大連オケへの参加希望が寄せられている。音楽の原点を模索する大連オケの姿勢は他の日本のアマチュアオケからも支持されている。
 今回この大連日本人学校の記念式典の校歌伴奏に参加すると共に、縁あって大連で学ぶ生徒達にとっても実際に生のオーケストラ音楽に触れるという又とない機会になると思われる。さらに大連でも個人的にはピアノやヴァイオリンをたしなむ生徒が増えていると聞いており、今回の演奏を契機に中山区少年宮での合奏等に参加、アンサンブルの楽しさに触れることが出来るような生徒が少しずつ出てくるようになれば望外の喜びである。
 思えば10年前、少年宮の主任ヴァイオリン教師であった考書博先生(1995年事故により逝去)と将来の日中学生の音楽を通しての交流を夢見、語り合ったことを昨日のように思い出す。さらに大連オケが発展、拡大して行くことを心から祈りたい。
 ただ、この10年何とか現地関係者の熱意により継続した大連オケも今後の存続については未だ不確定である。これからさらに新たな10年が果たして来るのか、もちろん我々の努力が必須ではあるが、ひとえに大連の現地関係者、各組織、また大連会等のご協力、ご支援なくしては考えられない。大連日本人学校との交流もこの大連オケの存続にかけての大きな契機になってほしい。
 10年前やっと30人程度だった生徒数も150人を超す規模にまで成長した。この中から将来の大連オケを支えるメンバーが出てくることは間違いないと、個人的には考えている。現に私は現在所属する大田区ハイドン室内管弦楽団で考先生を紹介してくれた方のご子息(大連育ち)と一緒に演奏活動をしてきた。
 明日を支える限りなく大きな可能性を持った子供達、10年前に開校式で見た輝いた子供達の笑顔。それは今も変わらないと思う。むしろ今の混沌とした先の見えない時代にあって、音楽の原点に立った交流を通して生み出される子供達の秘めたる可能性を私は信じたい。今回のかけがえのない機会を生かすためにも、今回の演奏会で我々の心をこめた曲が演奏され、局面を打開する象徴ならびに契機をなることを願うのは決して私一人だけではないと思う。
 今回の交流の機会到来を応援して頂いた皆様には心から感謝いたします。

以上 2004.4.17

2011年8月24日水納さん提供
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