『ゲゲゲの鬼太郎』1−1   

正月の特別番組放送のため、今週は五期の『ゲゲゲの鬼太郎』の放送がありません。
劇場版は昨年のうちに観てしまったので、新作を今週は楽しむ事が出来ません。しかし、暇を持て余していたので、新作ではなく、過去作品を暇潰しに視聴してみました。
今回見たのは、記念すべき『ゲゲゲの鬼太郎』アニメ化第一作品。40年前の作品ながら、今見ても中々楽しめました。
数ある『鬼太郎』のアニメ作品の中で、何故この話を選んだかといえば、個人的に『鬼太郎』アニメシリーズ全体を通して、もっとも多くの突っ込み所があるからです。劇場版十作、テレビ放送に至っては五期通じて四百話以上放送されていますが、第一期の第一話以上に突っ込みがいのある話は未だに現われていません。初登場にして、ある意味至高の作品となった一本です。
そんなわけで、アニメ第一期『ゲゲゲの鬼太郎』第一話「おばけナイター」の感想です。


さて早速視聴してみました。
第一期なのですから当然モノクロ作品です。
カラーの様な華やかさはありませんが、白黒の二色のみなので、イラストの輪郭が鮮明なのはモノクロの強みだと思います。
オープニングは現在放送中のものはアレンジが加わって、大分イメージが変わってはいるものの、歌詞はいつもどおりお馴染みの『ゲゲゲの歌』です。
三期以降はアップテンポになってしまったので、一期のオリジナルの曲を聴くと、少々ゆったり過ぎるような気がしてしまいます。
ここで、登場する妖怪たちをよく見ると、第一話で活躍する牙ぐるいの姿を確認する事が出来ます。

このキャラクタは、もしかして当初はレギュラーキャラクタとして活躍させるつもりだったのでしょうか?


さて、主題歌が終わるといきなり舞台が墓場に切り替わります。
モノクロなので今ひとつ判別が付きにくいのですが、全体的に暗くなっていて、月が出ているので多分夜だとは思いますが、途中カラスが飛ぶ場面もあるので、もしかしたら夕暮れ時なのかもしれません。
すると、そんな夜の墓場にひとりの少年が登場します。

水木しげるの原作に出てきそうな感じもしますが、それ以上に昔のアニメの脇役によくいそうな感じです。藤子不二雄赤塚不二夫のアニメ作品を探せば、きっとクローンを見つける事が出来るでしょう。
それにしてもこの少年、何故夜の墓場にひとりでうろついているのか非常に疑問を感じます。この後もその辺りの説明が一切されません。物凄いへっぴり腰でおどおどとしていますが、そんなに怖いのなら墓地などに行くなといいたいところです。
墓参りとは思えませんから、帰宅路のショートカットに墓地を通っていたと考えるのが妥当でしょうか?


周りにおびえながら墓地を歩く少年。周囲を警戒するのは良いのですが、カラスや猫の声に怯えて、それに気を取られるあまり足元がお留守になってしまいます。そのため、地面に落ちているバットに躓き、転んでしまいます。

自分が踏んづけたバットに気付いた少年は、「ふふ、まだ使えそうだな」と言ってそのバットを頂こうとしています。少年は、折角手に入れたものですから、その場で試にとばかり素振りを始めます。すると、バットを振ると共に何処からともなく「まるで耳たぶを冷たーい手で引っ張られた様な」不気味な音が聞こえてきます。
普通なら、そんな不気味なバットなど使おうとは思わないのでしょうが、この少年は一味違います。その辺りに落ちている石を使って試し打ちを始めます。すると、そのバットで打つと物凄い打球が打てるようになる事に気が付きます。そのため、少年は明日の試合に拾ったバットで臨むことにしました。
それにしても、バットを振るたびに変な音が鳴って、平気なのでしょうか?私は野球未経験なので良く分かりませんが、バットを振るたびに耳元で不気味な音が鳴っては試合に集中できないような気がします。
しかも、墓場に落ちていたバットですから、呪いとか祟りに会うといった発想が出てきてもおかしくないような気がしますが、この少年にはそういった発想はありません。まあ、実際に呪いや祟りがあると信じている人など居ないでしょうけど、拾った場所が場所だけに、祟りなど迷信で存在しないものだと分かっていても、矢張りそこは落ち着かない気持ちになりそうなものです。
登場シーンは臆病なのに、不気味なバットを窃盗して平然としたり、気弱なのか豪気なのか良く分からないキャラクタです。


翌日、墓場で拾ったバットを持った少年はホームランを連発する大活躍しているようです。
それにしても、この試合一体どういったものなのでしょうか?
ユニフォームを着て試合をしていますから、少年団や学校の部活といった公式のものなのかと思いきや、試合となっている会場を見ると河川敷や学校のグランドどころか、どう見てもその辺りの空き地にしか見えません。
ホームランボールをとりに行くシーンを見ると、グラウンドのすぐ外は不気味な植物が生い茂る、まるで樹海の如き様相を呈しています。

一体どういった立地条件なのか全く想像がつきません。
40年前は樹海の近くに住宅地があるのが一般的だったのでしょうか?


場所がどこかといった疑問も尽きないのですが、試合のルールがどうなっているのかもよくわかりません。

野球に詳しくないのでよく分からないのですが、このスコアボードを見ると、5回コールドなのでは?
公式戦だとコールドが適用されないようなルールがあったような気もしますが、こんな民家の壁にスコアを書いてる時点で、公式戦ではないのは一目瞭然です。
大会毎に適用されるルールが違って、この少年たちが行った試合の場合ではコールドゲームなく、だからこういった試合結果になったのでしょうか?


試合が終了すると、バットを拾った少年ドン平が、チームメイトから何故突然「ベーブルースの魂でも乗り移った」が如き活躍を見せたのかを問われます。
すると、調子に乗ったドン平は、昨日墓場で拾ったバットを構えてホームランを打ちたいと思うとホームランが、ゴロを打ちたいと思うとゴロが打てるようになったとあっけなく打ち明けてしまいます。
窃盗をしたという自覚などなく、それどころか盗品の自慢をするあたり、テレビ番組内で万引きの武勇伝を語って問題となった某アイドルを思い出してしまいます。この手の犯罪自慢は、昨今に限ったことではなく、昔からずっと続いているようですね。
更に、チームメイトたちもそのバットの出所を気にもせず、「このバットがある限り俺たちは天火無敵」「そのバットは俺たちの宝だ」と言い出します。類は友を呼ぶとは良く言ったものです。ドン平のチームメイトはドン平と同じく、他人のものを無断で使用することに対して、良心が咎めるといった事はないようです。


すると、猫糞を決め込んだドン平たちの元に、鬼太郎が姿を現します。
鬼太郎は、ドン平の持っているバットを見て、「もしかしてそのバット墓場で拾ったんじゃないのかい」と問いかけてきます。すると、怯えながらもドン平は、「ち、違う、元からこれは俺のバットさ」と即座に嘘をつきます。我欲に捕われたチームメイトたちも「十年も前からもっていた」と追従します。
なんともバレバレの嘘ですが、詳細を確認する事無く、納得して鬼太郎は帰ってしまいます。それでいいのか、せめて手にとって確認しろよと思うのですが、一期の鬼太郎はかなり呑気な正確なようで、ドン平たちの言い分を鵜呑みにしてしまいます。
それにしても、欲に溺れた人間の醜さが良く現われています。


一転して、時は夜、場面は墓場へと変わります。
そこでは、何かを探す声と共に釣瓶火が登場します。そして、鬼太郎がその姿を確認すると、次いで百目の子供が登場します。

ゲゲゲの鬼太郎』シリーズにおける、初登場の妖怪は釣瓶火なんですね。てっきり百目の子供かと思っていましたが、タッチの差で釣瓶火の方が早かったです。因みに、五期ではあまり活躍のない釣瓶火ですが、一期では準レギュラーといえるほどの出番と活躍の場があります。実は、登場話数だけなら一反木綿より多かったりするんですよ。
鬼太郎に妖怪バットを失くした事を打ち明ける百目坊や。鬼太郎は昼間に会った少年たちが犯人だとすぐに気が付きますが、そう簡単には返してくれないだろうと言い出します。自分達の持ち物なのですから、そんな気弱に構えていいのかと疑問に思ってしまいます。
百目坊やは、バットを紛失したことを牙ぐるいに責められているので、どうしても取り返したいと鬼太郎に泣きつきます。鬼太郎は、どうすべきかみんなで相談しようなどと言い出します。
みんなで相談するも何も、ドン平たちに強硬な態度を取ってでも、バットを返却するように言えば済むような気がするんですけどね。


相談すべく、妖怪の棲家へと赴く鬼太郎、百目、釣瓶火。そこに姿を現したのは、妖怪野球チームのメンバーと地魅さんと呼ばれる岩石の塊の様な外見をした妖怪です。
しかし、この地魅さんは何処かで見た事があるような気がしますよね。

具体的には、アニメも絶賛放送中で、世界的に有名になった任天堂のゲームのポケットモンスター辺りに。
石つぶてをしたり、硬くなったりするアレに瓜二つです。
ポケモンのデザインをした人に鬼太郎ファンがいて、地魅さんをインスパイヤしたキャラクタをゲームに出したのでしょうか?
この地魅さん、前置きを抜きにして、鬼太郎の訪問の理由を霊界テレビを見たため事前に把握していると言います。既に見ている展開をくどくど説明しない辺り、テンポ良く話が進んで視聴者としてはありがたい事です。しかし、妖怪がテレビで情報収集していていいものかと疑問が沸かなくもありません。
地魅さんとの挨拶が済むや否や、人間にバットを奪われたことを知った牙ぐるいが鬼太郎に噛み付きます。力ずくでも人間からバットを取り戻してやると。一方、今まで呑気に構えていた鬼太郎がいきなり熱く語りだします。人間の前に姿を現すと、人間から追われる生活になってしまうから、牙ぐるいには任せられないと。
この辺りの鬼太郎の感情がいきなり変化し過ぎのように感じます。
そして、いきなり変身する牙ぐるいと鬼太郎の対戦が始まります。鬼太郎はちゃんちゃんこを投げて、あっという間に牙ぐるいに勝利します。一方、散々ごねていた牙ぐるいは、あっさりとこの一件を鬼太郎に任せてしまいます。
鬼太郎の激情振りもいきなりでしたが、牙ぐるいが聞き訳を良くするさまもいきなりです。なんとも変わり身の早い人たちなのでしょう。


一方、妖怪バットを使って快進撃を続けるドン平達の元にプロ野球のスカウトが次々と現われます。しかし、その全てのスカウトマンの勧誘方法が札束を積み上げるといったものはどうなのでしょうか?
確かに、プロ野球選手になって生計を立てようとするなら、給金が幾らになるのかは非常に重要な問題だと思いますが、それが全てでは無いでしょうに。みんなこぞって現金をぶちまけていくのは、幾らなんでも勧誘方法が下品すぎだと感じます。
そして、プロ野球チームに引き入れるべくやって来る人はまだ分かるのですが、ドン平たちのチームをプロ野球団にしようと提案する人がいるのは驚きを通り越してあきれてしまいます。プロ野球リーグに新規参入するには、色々な制約があるでしょうに、幾ら脅威的な活躍をするチームがあったとしても、いきなりプロ球団に昇格は如何なものかと。
それにしても、彼らは一体何処からドン平達のことを嗅ぎ付けて来たのでしょうか?見た感じ、草野球に毛が生えた程度の試合しか行っていないようでしたから、公式戦に出場してはいないのでしょう。幾ら今のように個人情報保護の観念が無い時代だからといっても、このスカウトマンたちの嗅覚は異常です。密かに、今回登場していないねずみ男が、妖怪バットを持っている点も含めて、ドン平たちの情報を売ったといった裏事情でもあったのでしょうか?
金に目が眩むドン平たちでしたが、あまりの大金を目の前にして尻込みしてしまい、考える時間が欲しいので、契約は後日にして貰います。この辺りは、ドン平たちが唯一見せた真っ当な人間の反応ですね。


スカウトマン達が帰った夜、ドン平の元に鬼太郎が現われます。
鬼太郎は、それは妖怪チーム専用バットだから返すようにとドン平に求めます。しかし、努力せず成果が出る都合の良い品を人間誰しも手放したりはしません。ドン平は当然鬼太郎の要求を断ります。
すると、鬼太郎はドン平に一つの要求を突きつけます。妖怪チームと試合をして、ドン平たちが勝てばバットは譲る。その代わり、妖怪チームが勝った場合は、バットの返却のみならず、ドン平達の命も貰うと。
普通に考えればそんな不公平な条件での試合など受け入れる事などありませんが、妖怪バットの恩恵で今や飛ぶ鳥を落とす勢いのドン平はその提案をのんでしまいます。
ドン平は命を天秤に乗せているのに、なんともおき楽な表情をしています。恐らく、絶対に勝つ自信があるだけでなく、本当に命までとられることはないと高を括っているのでしょう。
目玉親父の様な人外を目にして尚、この態度とは、何処まで抜けた奴なのかとあきれてしまいます。


さて、翌日の草木も眠る丑三つ時、ドン平チームの一行たちは墓場へと足を運びます。
それにしても、試合を承諾するのはまだ良いとして、墓場での行う事まで承諾するのはありえないと思います。午前三時に試合というのも大概なのに。
ドン平たちが行った墓場の立地条件がどのようなものなのか分かりませんが、そもそも墓場にスポーツをするようなスペースがあるとは思えません。
場所と時間に関しては、もう一寸交渉しても良かったのではないかと思います。

そして、遂に人間対妖怪の野球対決が始まります。
さて、ここからがこの話の最大の突っ込み所になります。
妖怪チームのスタメンは下記の通りです。
ピッチャーは鬼太郎。これについては何も問題がありません。
しかし、ここからが問題です。

左上 キャッチャー牙ぐるい
右上 一塁 野分婆さん
左下 二塁 ろくろべえ
右下 三塁 土左衛門

左上 ショート 長広舌
右上 レフト のたり坊
左下 センター むく邪羅
右下 ライト 赤ん平

なんと、知っている妖怪が一体もいない!!

原作に登場するメンバーとも違うので、恐らく水木作品から来たものでさえないと思われます。
なんとなく来歴が想像できるのは、土左衛門とろくろべえくらいなものでしょうか。
私は妖怪を専門に研究しているわけでもなく、妖怪に関わる仕事に従事している身でもありません。ただ趣味で妖怪に関する書籍や映像作品を見ているだけの人間ですから、当然未だ見聞きしたことの無い妖怪が多数いるのは分かっています。
しかし、長年に渡り水木ファンをやってきて、且つ他の妖怪作品を見てきてそれなりに妖怪を知っているつもりです。この話では、その私が知らない妖怪しか出てきません。
一体、二体位分からないのがいるのなら納得がいくのですが、八体全てが分からないことなどありえないと思います。
因みに、原作におけるおばけナイターのメンバーは、鬼太郎、ねずみ男、ミイラ男、ウーラ、磯女、土ころび、マンモスケジラ、フランケンシュタイン、人おおかみとなっています。こっちはこっちで、実在するのか妖しげなのが混じっていますが、まあ気にしないことにします。


私が知らないといって、即座に伝承の無い妖怪だと決め付けるのも良くないので、一応全ての妖怪に出典があるかどうかを確認してみる事にします。
しかし、どうもアニメスタッフが気まぐれで作った感がしますので、軽く調べてみて見つからなければ、来歴の無いオリジナル妖怪だと判断します。無いものは見つけようがありませんからね。
そこで、今回の参考文献は、水木しげる『妖鬼化』、村上健司『妖怪事典』、国際日本文化研究センターのwebサイト「怪異・妖怪伝承データベース」のみにします。これらの情報だけで、日本全国の全ての妖怪を網羅できているわけではありませんが、大半の妖怪は載っています。


さて、そんなわけで調べる事にしますが、まずは来歴のありそうなところから攻めてみます。
土左衛門
土左衛門と聞いて真っ先に思い浮かべるのは、水死体の異称の事でしょう。
水死体の膨れ上がって醜くなったさまが、江戸時代の力士、成瀬川土左衛門に酷似しているから名付けられたとされています。
そこから考えると、この妖怪は水死体、舟幽霊の類ではないかと推察できます。
調べてみると、「怪異・伝承データベース」に同名の妖怪がありました。
どうやら香川県小豆郡土庄町というところに伝承があるようです。
解説を全文を引用します。

漁で土左衛門を見つけた時は引き上げなくてはならない。引き上げれば大量になり、引き上げなければ不漁が続く。

水死体であるのは予想通りでした。
どうやらエビス信仰に関係しているようですね。正確なところは分かりませんが、多分、もともとエビス信仰として伝わっていたものが、寛延年間以降に土左衛門と名称が代わった、或いは土左衛門の名が付いたのでしょう。
但し、この伝承が「おばけナイター」に登場する妖怪土左衛門と同じかは甚だ疑問ですが。


・ろくろべえ
容貌と名称から察するに、轆轤首なのでしょう。
一般的に轆轤首というと、五期のろくろ首の様に女性を想像しますが、ここでは男性として登場しています。
轆轤首は、中国の飛頭蛮や東南アジアのポンティアナの様な類例が多くいます。日本でも見世物をはじめ、様々な媒体で活躍していた妖怪ですから、全国にその名を知らしめていた事でしょう。実際に目撃例や体験談は無くとも、話として全国区になっていそうな気がします。
ただ、妖怪は地域ごとに微妙に名称が変わっているので、全国をくまなく捜せば、その中でろくろべえという名称が採取できるかも知れません。
各文献を調べてみたところ、同じ名称の妖怪はありませんでした。


・むく邪羅
名称は違いますが、原作の「おばけナイター」に登場するマンモスケジラと同じ外見をしています。但し、マンモスケジラはレフトを守っていたので、むく邪羅とはポジションが違いますが。
外見を見た限りでは、日本の妖怪というよりか、ヒマラヤのイエティやロッキーのビッグフットなどの雪男の親類に属するような気がします。
シリーズによっては、マンモス男なんて名前にもなりますから、多分外来種なのでしょう。
文献に同名の妖怪はいませんでした。


牙ぐるい
今回もっとも台詞が多い妖怪です。
しかし、どう見ても日本の妖怪には見えません。まるでホラー映画に出てくるクリーチャーのようです。
来歴の想像もつきませんし、文献にも載っていませんでしたから、アニメオリジナルのキャラクタと見て間違いないでしょう。


野分婆さん
名前と外見からすると、何処かに伝承があってもおかしくない気がします。
野分とは、強い風のことを指し、時には台風の事も現します。
作中ではその名の通り、風を操る妖怪になっています。
風に纏わる妖怪は多数いますので、もしかするとどこかに言い伝えがあるかもしれませんが、今回調べた限りにおいては、同じ名称の妖怪は見当たりませんでした。
恐らく、アニメオリジナルのキャラクタでしょう。


長広舌
長広舌とは、一般的な単語の意味合いとしては、いつまでも長々と喋っていることを現します。
その言葉を受けてか、この妖怪長広舌は舌を長く伸ばした姿をしているので、恐らく長々と話すさまを擬人化した妖怪なのでしょう。
先週五期の『鬼太郎』に登場した「いそがし」と同じにおいがする妖怪ですから、探せばもしかしたらどこかに伝承があるのかも知れません。
今回調べた限りにおいては、長広舌といった妖怪は見つかりませんでした。


のたり坊
語感だけを取ってみると、日和坊に似ている気がしないでもない。そう言われながら見ると、絵も似ているような気がしてきます。
のたりとは、辞書では

のんびりしているさま。ゆるやかに動くさま。

となっています。
その言葉に似つかわしく、何処かのんびりとした容貌をした妖怪となっています。活躍の機会が殆ど無いので、実際の性格までは分かりませんでしたが。
調べても同名の妖怪は見つかりませんでしたので、多分アニメオリジナル妖怪でしょう。


赤ん平
左目が大きく垂れ下がっているのは、あかんべえの表情を表しているのでしょうか?
あかんべえをする妖怪は、先週軽く紹介したべくわ太郎などがあるので、もしかしたら子供向けの玩具や黄表紙に載っているのかもしれません。
これも文献には載っていませんでした。水木作品を原作にしている筈なのに、水木しげるの妖怪画の集大成である『妖鬼化』に収録されている妖怪が一体も無いとはどういった事でしょうか?


予想していたとはいえ、八体中に一体しか実在する痕跡を見つける事が出来ませんでした。
妖怪に関する展示会に行ってみると、結構知らない妖怪を目にする事があります。今回調べた中に該当するものが無かったとしても、絶対に伝承に無いとは言い切れません。
だから、アニメスタッフが適当にでっち上げたと断言はしませんが、限りなくそれに近い疑惑があります。
私が五期で、妖怪の考証が素晴らしいと何度も言ったのは、一期のこういった妖怪の扱いが過去にあったからなのです。
一、二期で妖怪の存在が認知され、三期以降で妖怪といった存在の詳細が分かり、その研究成果の集大成が五期なのですから、逆に言えば一期は酷くても仕方の無いことなのですけどね。でも、妖怪好きとしては、あまりいい気分にはなりません。
まあ、兎に角、この回の妖怪伝承に関しては、まるでなってなっていないと言えるでしょう。


メンバー紹介も終わったところで、試合が開始します。
何でも打てる妖怪バットを持ったドン平チームが圧倒的な有利になると思いきや、妖怪チームは絶対にバットに当たらない妖怪ボールを使ってドン平チームを翻弄します。
絶対に勝てないと気付いたドン平チームは、自軍が妖怪バットを使わない代わりに、相手に妖怪ボールを使わないように求めます。
この辺り、ドン平達の読みが甘すぎですね。そもそも、妖怪バットは妖怪たちの持ち物なのですから、同じバットが相手にもあると予想してもよさそうです。更に、今回登場した妖怪ボールのほかに、妖怪グラブ、妖怪ミット、妖怪シューズなどがあってもよさそうなものです。
それが自分たちの持っているバットが唯一無二だと思って勝負に挑むとは、流石は危機管理がなっていない子供たちの浅はかさといったところでしょう。

でも、バットとボールを引っ込めるのはいいのですが、墓前に供えるのはどうかと思います。


切り札を失った人間チームは、特殊技能を持った妖怪たちにまったく歯が立ちません。

42対0ともうどうにもならない点差が開いてしまいます。
それにしても、相変わらずコールドが無いんですね。
そして、妖怪チームは更に八点追加点を上げますが、そこで鶏の鳴き声が聞こえてきます。
朝に弱い妖怪達は、あわてて帰ってしまいます。
そのため、五十点差が付いているにもかかわらず、ドローゲームになります。
バットは妖怪に、命は人間にそれぞれ渡ることになります。
それにしても、なんとも甘い采配です。九回表で五十点も点差があるのですから、事実上人間チームの負けでしょう。
鬼太郎はいつものことだから良いとして、審判の地魅さんの人の良さが気になりました。


その後、心を入れ替えてまじめになったドン平達は、何の大会かは何か良く分からないけど優勝しました。

それにしても、優勝旗を持って墓地を練り歩くなといいたいものです。
よからぬ事を企むとしっぺ返しを受ける。まじめに頑張れば報われる、といったまあ分かり易く、鬼太郎らしい話に落ち着くのでした。



全体的に見て、今の『鬼太郎』の基礎が既に確立されているように感じます。
ただ、矢張り妖怪の扱いが今ひとつなのが残念なところです。
三期、四期も「おばけナイター」はアニメ化されているので、きっと人気のある題材なのでしょう。
五期でももしやるとしたら、その辺りの妖怪の選択と、どういった動きをするかを良く考えて作ってもらいたいところです。
今回登場の牙ぐるいは出典の有無は置いておいて、キャラクタとしては決して悪くは無かったように思います。足りないのは、妖怪の能力や特徴の説明が無かったことくらいでしょう。
問題なのは、牙ぐるい以外のキャラクタが意味不明だった点です。今回の失敗は、この話を第一話にもって来ている点にあると思います。
ある程度話数がたって、それなりにたったキャラクタたちを登場されればいいのでしょうが、初登場のキャラクタが十人以上は明らかに多すぎです。
一話で掘り下げるのは30分番組では絶対に無理です。だから、意味不明なキャラクタがただ出ただけといった展開になっているのでしょう。
そこから考えると、今後五期でやるとしたら、その点は既にクリアできていますから、一期と同様の失敗はしないと思います。