"Thrive"


写真クレジット:Clear Compass Media

金融街を占拠せよ」運動にアンテナを広げていたら、目からウロコがポロポロ落ちるドキュメンタリー映画に出会ってしまった。繁栄、成長という意味の『Thrive』というタイトルのドキュメンタリー映画で、眠っている意識の覚醒から社会変革へ向かって行こうという明確なメッセージが、どんよりと曇った脳ミソを晴れ晴れとさせてくれた。
一言で説明するのが難しいのだが、9/11テロ事件からイラク戦争リーマンショック、危険な原発への固執、環境破壊、劣化する医療制度、さらにはUFO、ミステリー・サークルなど、自分の中でバラバラに存在した現代社会への疑問や未知の世界への謎が、この映画を観て一つに繋がったのだ。世界の仕組みがすっきりと見えた感じで、見終わると元気モリモリ、勇気リンリンだった。

この映画を作ったフォスター・ギャンブルは若い頃に、なぜ世界には貧困や飢餓、戦争が存在するのか、人間は自滅を求めているのだろうか、という疑問を持ち、生命エネルギーの仕組みを解明しようと物理学や位相幾何学などを学び始めた。その結果人間から自然、宇宙に共通するエネルギーの仕組みトーラス(ドーナツ型のエネルギー体の中心に人間がいて円環状に生命エネルギーが循環する)に行き着いた。

命というものは本来、成長し繁栄していくものであり、現在の地球上で生きる不安や恐怖、絶望に取り込まれた人間の姿は、何かの外側の力によって歪められたものである、と確信していくようになった。そして彼と妻のキンバリーは、その外的な力の正体を追って粘り強いリサーチを始めた。この映画には彼らのリサーチ結果と主張が簡潔にまとめられている。

映画は四部構成で、第一章は「コードを解き明かす」。トーラスの存在を記した遺跡やミステリー・サークルの読み解き、そしてUFOの存在を米国政府が否定する理由と、化石燃料を必要としない「フリーエネルギー」の研究への妨害との深い関係が紹介されていく。

第二章は「金を追え」。なぜフリーエネルギーの研究が妨害され続けているのかの疑問から、化石燃料に依存することで莫大な利益を上げている石油会社を切り口に、米国社会を支配している巨大銀行とそれを所有して100年以上に渡って世界の金融を思いのままに牛耳ってきた巨大財閥による金の流れを迫っていく。

ロスチャイルド、ロックフェラー、カーネギー、J.P.モルガンなどの財閥が、銀行や証券会社だけでなく、エネルギー関連企業、医療、保険、マスメディア、通信、教育など市民生活の根幹を握るすべてを所有している現状が明かにされる。

キャプション:自然と市民生活を管理するパワー・ピラミッド。上に行くに従って富と資源が集中していく。最下段に政府、その上が石油や電気、建設、製薬などの大企業、その上が大手銀行、その上にFRB中央銀行、その上に国際通貨基金世界銀行、その上に国際決済銀行、最上段に君臨する財閥/金融エリート。
図版クレジット:Clear Compass Media
私はこの章で、米国の日本銀行に当たる連邦準備制度理事会FRB)が上記の私立銀行群によって運営され、私企業である銀行群が必要に応じて紙幣を印刷して市場にバラまくことが出来るという仕組みを知って仰天した。

最近になって「07年12月から10年6月の間に、FRBが大銀行、大企業、政府に対して、16兆ドルにのぼる救済融資を秘密裡に行なった」という報道もあったが、借金返済のために紙幣を印刷して良いのなら、木の葉で作ったお金で化かす狸同然。リーマンショックも財閥を利するために仕組まれた金融危機だったのだ。

第三章「世界支配計画を解き明かす」。ブッシュ政権や欧州の首相などが何度も提唱してきた「新世界秩序」とは何なのか。「世界平和と安全確保」を旗印に、貨幣を統一し、市民生活全般をコンピュータで管理し、マイクロチップを身体に埋め込んで、人類すべてを監視下に置くことをもくろむ財閥たちの果てない野望が解明される。

最後の第四章は一転して「クリエイティブな解決法」を紹介。大手銀行ではなく信用金庫を使う、現在唯一の自由な表現の場であるインターネットへの制限に反対しようなど多くの提案の他に、非暴力運動の意義や私たち一人一人が自分の行動に責任を持ち、自らの心の声に耳を傾け、世界を癒していく活動をしていこうと呼びかけている。

本作を観て私が一番感心したのは、命は成長し発展する本来的にポジティブなものであり、ネガティブな思考の多くは外側から注入されたものである、という当たり前だがなかなか実感出来ないことを実感できたことだった。私たちは生まれながら愚かで強欲な存在ではなく、そんな風に思い込まされてきたのだ。

年を取ることや病気になることをなぜ怖れるのか? なぜキチンとした職業を持っていないと無能者のように感じるのか? 恐怖に囚われ、罪悪感や義務感に縛られた従順な庶民であることで、私たちはどれほど巨悪を利して来たのだろう。

ちなみにフォスターは、洗剤などで知られるP&Gという巨大メーカーの子孫として生まれ、恵まれた環境の中でエリート教育を受けた人だが、企業家になる道を捨て独自の道を選び、本作のために相続した資産の480万ドルを投じ10年間を掛けて製作をしたという。

上映は自主上映方式で、現在世界各地で小さな上映会が開かれている。DVDには日本語吹き替えオプションもあるので、日本で上映したい人が手を挙げてくれることを願ってやまない。また、ネット上で日本語吹き替え版を5ドルで観ることもできる。
『Thrive』の内容をさらに深めたホームページ(英語)www.thrivemovement.com/ があるのでぜひ覗いて、目からウロコが落ちる快感を味わって欲しい。