“Ernest & Celestine”(原題『アーネストとセレスティーヌ』)


『アーネストとセレスティーヌ』写真クレジット:GKIDS
地下にある孤児院で暮らす小ネズミのセレスティーヌは、ある晩地上で暮らすクマの世界に足を踏み入れる。そこで腹をすかせた大クマのアーネストに見つけられ、あわや食べられそうに。「欲しいものを教えてあげるから食べないで」と叫ぶセレスティーヌは、彼をお菓子が一杯のベーカリーの地下室に案内する。満腹になったアーネストはセレスティーヌにニコリ。ところが、その後事件を起こした二人は車を盗んで、アーネストの山の住処に逃げて行く。
絵を描くことが大好きなセレスティーヌと詩と音楽が大好きなアーネストは、共に一人ぼっち。始めはけんかばかりしていた二人だが、アートを通して気持ちを通じ合わせていくが、そんな二人をクマ警察とネズミ警察が探し当ててしまう…

小ネズミの少女がフランス語でクチャクチャと話す声を聞いているだけで、顔がほころんで仕方がなかった。ベルギー生まれの絵本作家ガブリエル・バンサン(1928年 - 2000年)の童話『くまのアーネストおじさん』シリーズを長編アニメ化した作品である。本国フランスのアカデミー賞であるセザール賞アニメ賞を受賞している。


バンサンの原画(写真上)は柔らかなタッチで描かれた水彩画で、童話シリーズは20冊に及ぶ。可愛いドレスを着た小ネズミとヌボーとした風貌のクマという主人公の愛らしさと、大雑把なのに凝ったディテールがレトロで素敵だ。本作も原画を最大限生かしており、観ているだけで胸の当たりがアワアワ。

フランスのアニメは粋で、サッと首にかける極上のスカーフのようだ。物語性が富かで、音楽もオシャレ。『パリ猫ディノの夜』や 『イリュージョニスト』など日米のアニメとは違ったアニメ世界で観る者を楽しませてくれる。

セレスティーヌが地上に行った理由は、クマの子の抜けた乳歯を手に入れるため。クマにとって小ネズミは Tooth Fairy (歯の妖精)と信じられており、乳歯を多く手にいれた小ネズミが、ネズミ世界では最高とされている歯医者になれる、という設定がおかしい。

ところがセレスティーヌは夢見がちで絵を描くのが好き、アーティストの孤独を抱えた可愛い小ネズミ、そんな彼女が詩人で音楽好きのクマとの出会って画家として生きていく…。実にフランスらしいお話だ。

オリジナル脚本を書いたのは仏の小説家ダニエル・ペナック、原作童話を娘が幼い頃に読んで聞かせたという。監督は大学卒業と同時に監督をオファーされた新人バンジャマン・レネール。

共同監督はストップモーションアニメの快作 ”Panic in the Village”を作ったベルギーのアニメ作家たちで、これも爆笑ものだった。
上映に際しては、英語字幕版と英語吹き替え版と両方の上映が予定されている。

上映時間:1時間20分。
“Ernest & Celestine”英語公式サイト:http://www.ernestandcelestine.com/
フランス語の予告篇:http://www.ernestandcelestine.com/