竹本健治『しあわせな死の桜』

竹本健治 第3短篇集『しあわせな死の桜』(2017/3月刊 講談社)読。
http://kodansha-novels.jp/1703/takemotokenji/

この折↓にサインいただき。達筆(ペンはご自身専用品携行)。
http://domperimottekoi.hatenablog.com/entry/2017/05/14/200031

↓目次もお洒落。トランプマークはカテゴリ別?

「夢の街」──江戸川乱歩展(2003池袋西武ギャラリー)目録掲載作。全く違うにも拘らずどこかしら映画『インセプション』思い出さす夢奇譚。「彼ら」──『凶鳥の黒影 中井英夫へ捧げるオマージュ』(本多正一河出書房新社)所収。こちらも悪夢モチーフ。佐伯千尋登場。〈彼ら〉とは謂わば中井/竹本流の夜鬼(ナイトゴーント)か。「依存のお茶会」──リレー小説集『9の扉』(マガジンハウス/角川文庫)収録作。狂える茶会の蜻蛉談義が愉し。「妖かしと碁を打つ話」──同人誌『幻影城終刊号』寄稿作。この作者のする囲碁の話は門外漢にも魅力的(但し理解は難しく)。「羊の王」──『異形コレクション 幻想探偵』(井上雅彦光文社文庫)初出。これも舞台は『虚無への供物』中の「凶鳥の黒影」に通ず? 「瑠璃と紅玉の女王」──SFコレクション『NOVA 4』(大森望河出文庫)参加作。ある種ボルヘス的綺想異世界ファンタジー。残酷趣味注意。「明かりの消えた部屋で」「ブラッディ・マリーの謎」──2篇ともPSゲームソフト『トリック×ロジック』(チュンソフト)のシナリオ改稿作。直球謎解き物。丸ノ内刑事可笑し過ぎ。登場する推理作家 赤坂念寿のミステリ『緋の組曲』『不在の塔』等惹かれるものあり。作者に書いてほしい。「妙子、消沈す。」──キララシリーズ紹介サイト(http://www.bunshun.co.jp/kirara/)中のスピンオフWeb小説。メインネタ常識らしいが…知らず情弱再自覚orz。なおこれに際しては未読の『キララ、探偵す。』(文春文庫)をわざわざ取り寄せ読。ドエロとの評判に秘かに期待するも…「ド」までは行かずやや惜しく。がこの際『キララ、またも探偵す。』も注文(古書)。「トリック芸者 いなか・の・じけん篇」──唯一の書き下ろし作。遺憾乍ら世に名高いウロボロスシリーズも全く未読だがそちらはおいそれとは読めないので…酉つ九姐さんを巡り聞く限りの噂を頼りに。これが「そこはそれ」の破壊力かと感嘆。作中の闊達な方言は佐賀弁とおぼしく作者夫人による監修か(あとがきによれば本作執筆を促された由)。「漂流カーペット」──『QED 鏡家の薬屋探偵』(講談社ノベルス)での佐藤友哉 鏡家サーガトリビュート作。千街晶之氏 解説で曰くの「不条理さとロジカルさが同居する」奇妙過ぎる世界設定は自家薬籠のごとくで哄笑誘う域。「しあわせな死の桜」──絵本風作品集『虹の獄、桜の獄』(河出書房新社)より再録。千街氏の「リリカルなイメージの文章化に長け」との賛を如実に感じさす理と美の混淆は本書表題作とされるに相応しく。
↓『虹の獄…』中で同篇に付された建石修司画伯による挿画。

総じて〈夢〉テーマへの傾斜とともに印象濃いのがこの作者独特のユーモア才格段横溢感。実は笑いや話芸等に強い関心を持つ人らしく(&嘗ては自らギャグ漫画も)──且つそんな〈軽み〉さえ底に宿す狂気性 虚無性と親和するのが特質か。


↓同じ講談社の『涙香迷宮』やゲーム3部作宣伝するのは当然だが…  ↓新潮文庫『かくも水深き不在』までとは太っ腹!

しあわせな死の桜

しあわせな死の桜



↓時恰も『キララ、またも探偵す。』届いたが…後日の愉しみとす(今度こそドエロ期待)。
































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